ヤンヒー病院正面。バンコク中心からチャオプラヤ河を渡るのでやや遠いが、現在はMRT路線建設中で、開通すれば電車でも行けるようになる

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 観光大国のタイは実は美容大国でもある。女性には特によく知られていて、タイ古式マッサージを始め、西洋医学に基づいた療法にタイ伝統医学を織り交ぜたスパやエステ、美容効果のある減量処方薬やグッズ諸々が安いのだという。

 バンコクならタイ人女性向けの美容専門クリニックも多数ある。街中やデパートの中に店舗を構え、美肌や痩身の効果を謳って女性を引き込む。特にタイ人は「美白」に信仰に近いレベルのあこがれを持っているので、中華系の色白タイ人以外の女性にはそういったクリニックに足を運ぶ人が多い。

 そんなタイの美容系医療に目をつけ、利用しようという男性が現れた。30代の山田さんだ。彼は日系企業の駐在員として数年ほどバンコクに滞在し、タイの美容事情を目の当たりにしていた。帰任命令が出て日本に帰国後、体重が3桁台に突入しようとしていた自分の身体を改造するべく、一念発起してダイエットに励んでいた。

 そんな中、駐在員時代に魅せられた東南アジア旅行を再び楽しもうと、タイを再訪する機会を作った。そこでタイの痩身医療を利用することを思いつく。効果があれば継続するし、ダメなら止めればいいだけの話だ。2017年4月のことだった。

◆ダイエットホスピタルと知られた病院に

 山田さんが訪れたのはバンコクにあるヤンヒー病院だった。一時期は日本の性同一性障害の人々にSRS(性別適合手術)で有名になった総合病院だ。一般的な総合病院でありながら美容関連の部門が人気で、日本の芸能人も利用するとネットでは評判だ。英語や中国語、日本語はもちろんのこと、欧州各国、中東、タイの隣国カンボジアなどの通訳まで常駐しているほど、世界中から患者が集まる。

 初診の2017年4月の時点で山田さんの体型は身長175cmで、体重97kg、体脂肪率は26%だった。ヤンヒー病院では医師の問診のあとに減量処方薬を出してくれる。山田さんは「クスリの成分は不明なんですが……」とやや不安はあるとしながらも、実際に試してみて効果はあると感じる。

「タイ伝統医学のハーブよりは効果はあると思いました。実際に体重も落ちています。ただ、この減量処方薬だけでは月に2〜3kgの減量が限界かもしれません。目標は年内に80kg、体脂肪率は20%以下ですので、そこまで行くには運動やダイエット食の併用が必須です」

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 ただ、山田さんはヤンヒーの減量処方薬は誰にでも効果があるわけではないと警告する。

「私のほかにふたり、ヤンヒーの減量処方薬を試した人がいました。ひとりは最初は問題がなかったのですが耐性ができてしまったようで、効果が現れなくなったようです。もうひとりは身体に合わなかったみたいです」

 効果がなかった後者の女性はタイへの渡航経験はなく、ウェブサイトの代行輸入を利用したようだ。ヤンヒー病院はネット検索では「ホスピタルダイエット」と呼ばれる痩身薬にひたすら依存するダイエット方法の代表格として登場する。輸入代行業者も多く、中にはニセモノもあるようだ。厚生労働省のサイトでも「ホスピタルダイエット」などと称されるタイ製の向精神薬等を含有する無承認無許可医薬品による健康被害事例について」(参照:厚労省)というページまである。このページによると、ヤンヒーの減量処方薬およびそのニセモノには下記のような成分が含有されているとされる。

ジアゼパム(第3種向精神薬)、フェノバルビタール(第3種向精神薬)、フェンテルミン(第3種向精神薬、日本未承認)、マジンドール(第3種向精神薬)、アスコルビン酸(ビタミンC欠乏予防)、アセトアミノフェン(症候性神経痛など)、シブトラミン(肥満、日本未承認)、ビサコジル(便秘症)、ヒドロクロロチアジド(高血圧)、マレイン酸クロルフェニラミン(皮膚疾患など)、甲状腺ホルモン(甲状腺末)、フルオキセチン(鬱病)、ジオクチルスルホサクシネート(便秘症)、プロプラノロール(高血圧など)、フロセミド(高血圧など)、クロルフェニラミン(皮膚疾患など)など