藤井聡太四段(写真=Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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 わずか14歳2カ月にして史上最年少のプロ棋士となり、29連勝という将棋の公式戦連勝単独1位の記録を樹立した藤井聡太四段。5歳から将棋を始め、当時からその才覚が表れていたというから驚きだ。

 このような天才少年の育て方が気になるところだが、藤井四段は幼少期に「モンテッソーリ教育」を受けていたといわれている。この教育法はイタリアの医学博士、マリア・モンテッソーリによって作られた。

「子どもは、自らを成長・発達させる力を持って生まれてくる。大人(親や教師)は、その要求を汲み取り、自由を保障し、子どもたちの自発的な活動を援助する存在に徹しなければならない」という考えが基本とのことだが、具体的にはどのようなものなのか。日本モンテッソーリ教育綜合研究所に話を聞いた。

「モンテッソーリ教育は、自主性を高め、子どもが持つ自己教育力を発揮させるものです。その子に合った環境をつくり、一つひとつのことに集中して取り組むことで、さまざまな能力を開花できると考えています。

 広い保育室の中で、本当はもっと興味があるかもしれないこと、得意かもしれないことに、まだ出合えていないこともあります。そこで指導者は、観察を通して子どもの興味や発達段階を見極めながら次にどのようなことを紹介しようか考えます。子どもが主体的に環境に関わり、活動を通して自らの力で成長を遂げていくことができるようにサポートするのが教師の役割です」(日本モンテッソーリ教育綜合研究所)

 数ある教育法の多くは、たとえば情操教育を主眼としていたり、計算能力を高めたりと、ある特定の能力を育てることがメインとなる。しかしモンテッソーリ教育では、子ども一人ひとりの持つ興味を大切にして能力を引き出す効果があるという。そのため、さまざまなジャンルのスペシャリストを育てあげる可能性があるというわけだ。

 日本ではカトリック系の幼稚園を中心に取り入れられていた歴史があり、現在は未就学児に対する幼児教育が中心という。正確な数は定かではないが、500〜1000の園が取り入れているとの説もある。

「日本の幼児教育以降の小・中学校の義務教育段階は学習指導要領があり、国が定めたカリキュラムがあるため、モンテッソーリ教育のような独自の教育法を実践していくのが難しいのが現状です」(同)

●日本でも藤井四段フィーバーで広まる?

 欧米では、小中学生はもちろん、大学まで一貫してモンテッソーリ教育が行われていることもある。特にアメリカでは認知度が高く、この教育を受けて成功した人を「モンテッソーリ・マフィア」と呼ぶこともあるほどだ。グーグル、アマゾン、フェイスブックの創始者たちや、バラク・オバマ前米大統領、俳優のジョージ・クルーニーなども、モンテッソーリ・マフィアといわれている。

 モンテッソーリ教育では独自の教具を採用し、生活力や言語・算数教育などを行っている。たとえば、感覚を洗練させてものを考える方法を身につけることを目的とする「感覚教育」においては、10個のキューブからなる「ピンクタワー」を使用する。1辺の高さが1〜10cmのキューブを使って数の大小や立体物の変化、バランス感覚や記憶練習などのトレーニングができるという。

「現在、日本ではモンテッソーリ教育を受けた子どもとほかの教育を受けた子どもとを、科学的には比較できていません。ただ、小・中学校でも実践が進めば、乳幼児期から学童期を核とした期間での、教育法の違いによる差異が検証できるようになるかもしれません」(同)

 とはいえ、幼少期にモンテッソーリ教育を受けることで基盤ができることは確かだ。その環境を引き続きつくり学んでいけば、子どもの能力を引き出し、高めることは不可能ではない。

 藤井四段は、モンテッソーリ教育を取り入れた幼稚園に通っていた。園で将棋を指していたわけではないが、「あくまで想像ですが、集中力が身についたこと、そして子どもの意志を尊重する環境を親御さんが大事にされたことで、将棋の能力の向上に役立ったのではないか」と指摘する。

 日本ではまだ認知度が低いモンテッソーリ教育だが、藤井四段フィーバーを受けて、その存在が広く知られるようになった。日本モンテッソーリ教育綜合研究所にも、連勝記録が話題になり始めた前後から取材依頼が増えたという。興味関心を持つ人が増えていることがうかがえ、今後は導入する教育機関がさらに増えそうだ。
(文=OFFICE-SANGA)