「中国崩壊の序章」「中国経済、破たんへ」…。日本の書籍、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などは、中国経済の先行きについて「破たん」「崩壊」といった一方的な見通しを強調し、否定的な面だけをクローズアップしたりする傾向が鮮明である。写真は中国人観光客(東京・銀座)。

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「中国崩壊の序章」「中国経済、破たんへ」…。日本の書籍や週刊誌、月刊誌、夕刊紙などの多くは、中国経済の先行きについて「破たん」「崩壊」といった一方的な見通しを強調し、否定的な面だけをクローズアップする傾向が鮮明である。

ところが中国のGDPは2014年に、実態に近い購買力平価(PPP)で米国を追い抜き、世界一位になった。15年以降も2位米国との差を拡げている。

世界銀行と中国国家発展改革委員会の共同研究報告書『中国2030―近代的で調和のある生き生きした高所得社会の構築』(2012年)は、「最も重要な地球的メガトレンドは中国の台頭であり、今後の20年間、中国以外の他のいかなる国も世界経済に大きな影響力を与える準備はできていない。世界最大の経済力を誇る国として米国を追い抜くだろう」と記した。

◆IMF本部、ワシントンから北京に移転も

国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は7月下旬に、IMF本部をワシントンから、中国が名目GDPでも米国を追い抜く10年後に、北京に移す可能性に言及、波紋を投げかけた。「中国の成長が今後も続くのなら、それはIMF加盟各国の議決権にも反映されることになる。われわれが10年後にこうした会話をする際には、ワシントンでなく北京がIMF本部になっているかもしれない。IMFの規則では、本部は経済規模が最大のメンバー国に設置する仕組みになっている」と明言した。

濱本良一国際教養大教授は「中国は名目GDPでも2029年に米国抜き、名実ともに世界一の経済大国になる」との論考を月刊誌『東亜』9月号(霞山会)に寄稿。16年の中国の名目GDP総額である11兆2182億ドルをもとにして、17年以降の年間平均成長率が「6.5%」、「6.0%」、「5.5%」、「5.0%」の4つの場合を想定して、2030年前後まで中国の毎年の名目GDPを試算。中国政府の発表で16 年の成長率は6 .7 %であり、将来、徐々に低下して行くと予想した。

一方米国については、16年まで過去10年間のGDP成長率の平均値「1.3%」を基準に試算。「『中国2030』が想定した中国成長率の最も低い場合の年率5.5%としても、2029年に中国の名目GDPが米国のそれを上回る」と試算している。

中国は世界最大の消費市場に発展、自動車販売台数は年間2800万台と米国の1600万台、日本の500万台を大きく凌駕している。パソコン、スマホをはじめ大半の品目で世界最大の貿易国でもある。

今、多数の中国人観光客が来日し、各地を旅行。化粧品、日用品などの日本製品を買い求めている。日本のメーカーや流通・観光・運輸業者は売り上げを伸ばし、日本政府も数少ない成長分野の一つとして期待。隣国のパワーによって日本経済が救われている現実を直視すると、「嫌中」本が、いかに一方的で浅薄か分かる。

ある月刊誌編集者は「読者の多くは中国の急成長ぶりに脅威を抱き、中国のマイナス情報を求めているので、勢いアラ探し的な記事が多くなる」と釈明した。ある週刊誌の編集幹部も「中国の悪い話を大げさに書くと、確実に部数がはける」と打ち明ける。出版・新聞不況の中で「嫌中」論は「貴重な金鉱脈」として期待されているらしい。

新聞情報でも実態は正確には伝えられていない。「日中対立を超える『発信力』―中国報道最前線総局長・特派員たちの声」(段躍中・編、日本僑報社刊)によると、「反日デモや大気汚染など注目されるテーマでは衝撃的な場面や深刻な内容について詳しく報じている。だが、ストレートなニュースにならない等身大の中国、そして中国人の姿を伝える機会は非常に限られている」(大手新聞社元特派員)という。

全国紙記者は「中国崩壊論」がこの20年近く日本のメディアに浮上し続けている現実を紹介した上で、こう著述する。「こうした中国崩壊論はどうしてたびたび浮上してくるのか。恐らく『中国が崩壊したら嬉しい』という日本国民のニーズがあるからではないか。そんな記事や本を読みたいという欲求が日本人の潜在意識の中にあるのかもしれない」。