冤罪の4分の1は科学捜査にまつわる問題で発生 科学を盲信する人々

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【ボストン・AP通信】 被害者のものと思われた2本の毛髪、犯行現場から採取されたようなトラックに付着した汚れ、犠牲者が履いていた人気ブランドジーンズのデザインに酷似しているバンパーに残った痕跡。16歳の少女に対する性的暴行と殺人事件について起訴されたスティーブン・バーンズに対する訴訟は、どう見ても状況証拠のみで構成されているような状況だった。

 それゆえ、彼は下された有罪評決に対して動揺した。

「『こんなことが起きるはずがない。おそらく、いや、たぶん、似ているからといって違う誰かに有罪判決を下せないはずでしょう』とずっと言い続けた」とバーンズは言った。

 DNA検査が彼の潔白を証明するまでの20年間、彼は刑務所で過ごすこととなった。すなわち、過去10年間に非難を浴びた犯罪捜査科学によって、全面的に、もしくは部分的に有罪判決を受けた数百人のうちの一人となったのだ。

 咬んだ跡、潜在指紋、銃器の特定、放火調査における燃え方、履物の痕跡、タイヤ痕などの解析といった科学的証拠は、かつては堅牢で揺るぎのないものだとされていたが、その信頼性を証明できるほどには十分に研究され尽くしてはおらず、ときに間違った有罪判決につながっている、として非難する弁護士や科学者たちがいる。

 それでもなお、裁判官は全国でそのような証拠をたびたび採用し続けている。

「科学者たちとは違い、裁判所は過去の判例に過度に依存しており、科学の進歩に十分追随しているとは言えません」イノセンス・プロジェクトの戦略的訴訟担当ディレクター、クリストファー・ファブリカント氏は言う。「私たちは、どこかの時点で、科学的な真実によって過去の判例は却下されるべきであることを認めなければならないのです」

 科学的な犯罪捜査方法が有罪判決を勝ち取るのに過去何十年にもわたって役立った、という経緯があるため、この科学的捜査方法に欠陥があることを検察と裁判官はなかなか認めようとしない、と被告側の弁護士や市民権の擁護者は言う。そしてこういった証拠は、「ロー・アンド・オーダー」や「CSI:科学捜査班」などのテレビ番組において鮮やかなまでに採用された例をこれまで数多く見てきた陪審員に対して説得力を持つものである。

 過去1年間に下された判決を見ても、その信頼性に関する深刻な疑義が提起された場合ですら裁判官は長年受け入れてきたものを不適切な証拠であるとすることには消極的だ:

2000年以降、信頼性に乏しい噛み跡が証拠となって29件もの不正な逮捕や有罪判決が発生しているにもかかわらず、検察官が専門家を呼び、殺害された被害者の身体に残された噛み跡について証言させることになったペンシルバニアでの判例特定の靴によって足跡が付いたという関連づけには「意味のある証拠はなく、正確性を期することができない」とした2016年の大統領科学技術諮問委員会の決定にもかかわらず、検察官が殺人罪で起訴された男の所有物である靴によって作られたとする証拠の提示を裁判官が受け入れたコネチカットでの判例ホーボーズに所属するギャングメンバーの裁判において、犯行現場で採集された弾丸と銃火器の発射痕を政府機関の専門家が実施した比較調査に関する証言の排除要求を連邦裁判官が却下したシカゴでの判例。さらに詳細な事実調査のため、被告側の弁護士は政府の専門家に反対尋問する自由がある、と裁判官は判断の理由を述べた。

 科学諮問委員会が提出した2つのレポートは、そのような科学的な犯罪捜査で得た証拠の使用を厳しく批判した。捜査方法を指導する大学はただ見るだけの視覚的な解析からより正確な生体測定ツールへ移行しようとしている。

 しかし、科学的な犯罪捜査の強化に関するいかなる進展もドナルド・トランプ大統領のもとで妨げられる恐れがある、と懸念している被告側の弁護士たちがいる。

 科学的犯罪捜査国家委員会は科学者、研究者、裁判官および弁護士などの有識者で構成された独立機関だが、アメリカ合衆国ジェフ・セッションズ司法長官は、司法省がこの委員会を解散する、と4月に発表した。

 カリフォルニア大学アーバイン校の全米冤罪登録プロジェクトには、1989年以降、2,000件を超える冤罪が記録されている。その記録の4分の1近くが、「科学的な犯罪捜査が正しくなかったこと、もしくは誤解を招いたこと」を冤罪の原因として挙げている。

 昨秋、大統領諮問委員会が行った報告は、いくつかの「機能比較」方法を批判した。諮問委員会は、靴底の痕跡、タイヤ痕、潜在指紋、銃火器と使用済み弾痕の解析を含むこれらの方法について、その信頼性と誤差の割合を決定するためより多くの研究が必要である、と述べた。

 科学的な犯罪捜査で得た証拠の信頼性がDNA検査または他の新しい証拠の欠落で疑問視される場合、他に強力な証拠がある場合でさえ、しばしば再審が認められる結果となる。

 ボストンにあるノースイースタン大学法学部のダニエル・メドウェッド教授はこう言った「こうした場合はたいてい、評決の信頼性が揺るぎ、再審理となるのに十分な状況となっている場合が多いのです」

 多くの検察官は、長年使用された科学的犯罪捜査で得られた証拠は、科学的に見て実は有効なものではないという考えを一蹴した上、その科学的証拠の有用性を批判するグループは、被告側の弁護人の影響を強く受けているのだ、と主張する。

 科学的犯罪捜査国家委員会は「システムを根本から変更し、誰かを有罪にすることが事実上不可能であるように」したいのだ、とニューヨーク州シラキュースの検察官、ウイリアム・フィッツパトリック氏は言った。

 ワシントンD.C.では、女性が銃を突き付けられレイプされる事件が起きた。この事件では18歳のカーク・オドムが告発された。FBIの代理人は、この女性のナイトガウンに付着した毛髪がオドムの毛髪と「違いが判らないほど酷似している」と証言した。

 オドムは刑務所で22年を過ごしたが、毛髪のDNA検査と他の証拠が、彼はレイプ犯人ではない、として冤罪を晴らした後に無罪となった。

「俺はただひたすら『あいつらは嘘をついている』と言い続けた」オドムは遠い目をして回想した。「あれは俺の髪の毛じゃない」。

By DENISE LAVOIE
Translated by ka28310 via Conyac