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 東芝のメモリー事業売却を廻る話題が随分少なくなった。6月から8月にかけて各方面の専門家が、「どの陣営にする」とか「条件がどうだ」とか、切迫した時間をにらみながら落し所を探っていた。9月10日頃まではその流れを引き継いで、「もう時間がない」という論調のメッセージが駆け巡っていた。それがこのところパッタリと途絶えている。

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 日本経済の有力な一角を形成し、倒産させられない企業であった筈の東芝が、さしもの東芝ウオッチャーからも呆れ果て見捨てられてしまったのか、はたまた繰り返される観測報道が交渉進展の足枷になっているとの判断からか、強固な情報漏洩防止システムが構築され、実は隠密裏に深く静かに交渉が詰められているのか?後者の可能性が高いと考えている人は現在ほとんどいないであろう。多くの人があきれ果てている。

 4月から繰り返されてきた報道を見ていると、当事者に当事者の自覚がないのではないかと感じさせられる事例が多くあった。当事者が誰であるか悩む必要はない。メモリー事業の協業事業者であり、メモリー事業の売却を巡って米カリフォルニア州の上級裁判所に売却差し止めの申立書を提出したウエスタンデジタル(WD)と、WDに「半導体メモリー事業を売却するのは契約違反」であると訴えられた東芝の2社が当事者である。この2社が当事者として行動するしかないのである。

 上級裁の審問は「メモリー事業の売却完了の2週間前に、東芝がWDに通告するよう」命じて終わったため、舞台は国際仲裁裁判所に移ることになった。WDが歩み寄って和解するか、仲裁裁の最終判断を待つしかない。WDとの和解が成立しない限り、買い手は最終判断が出るまで1年半から2年間待たされることになるうえに、どんな結果になるかもわからない。リスクとして検討する以前の話だろう。選択肢はWDとの和解成立しかないのである。WDにとっても、虎の子のメモリー事業を残すかどうかの重大な岐路である筈だ。

 東芝が売却交渉を行うグループの一角にWDがいなければ、WDが和解に応じる余地はない。KKR連合・日米韓連合・鴻海精密工業の中でWDが参加しているのはKKR連合である。未だに交渉先を絞り込むことすらできない理由が、交渉を有利に運ぶための戦術であるなら、そもそもそんな戦術は破綻している。WDが参加するKKR連合との交渉を積み重ねて、WDの譲歩を引き出すしかないのである。

 東芝とWDの双方に、当事者としての責任の自覚があれば展開はずいぶん変わっていたと思う。損得計算を忘れろとは言わないが、当事者が利害関係者のような姿勢を続けている限り、最後に泣きを見るのは社員や株主、取引先などの当事者の関係者になることを忘れずに、切羽詰まった交渉をまとめ上げて欲しいものである。