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もくじ

ー FF+MTと4WD+DCTが2台ずつ
ー 注目の的は最新のタイプR
ー サーキットで見えなかったシビックの欠点
ー ホットハッチが忘れていた「一体感」
ー ターボラグは許容範囲内
ー 操舵フィールはシビックの圧勝
ー 最新は最良だった

FF+MTと4WD+DCTが2台ずつ

さあ、いよいよ4台のホットハッチが激突する決勝ラウンドの開始だ。FFもあれば4WDもあり、先進のDCTもあれば定番のMTもある。名門ともいえる定番と、野心的な後発が2台ずつ。最強のホットハッチを決めるのにふさわしい顔ぶれだ。

ホンダ・シビック・タイプR、メルセデス-AMG A45、プジョー308GTi、そしてフォルクスワーゲン・ゴルフR。これは、単に今年のセグメントベストを決めるだけの戦いではない。もっとも直接的なライバル同士のバトルロイヤルだ。

そして、もしこれが、単にハイレベルなドライバーズカーを選んできただけならば、それぞれどこがどう違うのかという興味を満たすだけで済むのだが、ここまでの予選ラウンドにお付き合いいただいた後で再びいちいち解説するのは蛇足のような気がする。

というわけで、いきなりだがここまでの公道とサーキットでの予選を勝ち抜いた4台で南ウェールズへ向かう。いつもの山坂路で、今年の手頃なドライバーズカーの王者を決めよう。

どのクルマにもチャンスは十分にある。普通に考えれば、270psで£29,000(439万円)のプジョーと381psで£42,000(635万円)のメルセデス-AMGでは勝負にならないと思うところだが、これは通り一遍の比較テストではない。われわれが知ろうとしているのは、現実的な領域でドライバーにアピールする魅力であり、それぞれの価格を考慮したうえでの満足度だ。お手頃、と言っても、それは価格が安ければいいというものではない。高価なクルマでも満足度が高ければ、安くてつまらないクルマより「コスパ」がいい、ということになる。

注目の的は最新のタイプR

各車の詳細は予選ラウンドをご参照いただきたいが、一応は決勝進出者のプロフィールを簡単に紹介しておこう。

まず308GTiは、2016年に登場。ベースモデルに合わせて今年マイナーチェンジしたが、フロント周りやインテリアに多少手が入っただけで、メカニズムに変更はない。

次にゴルフR。欧州仕様は2013年の登場時から300psを発揮していたが、2017年モデルは10ps/2.0kg-mのアップを果たし、6段だったDSGが7段にバージョンアップした。

A45は、2016年終盤にアウディTT RSやフォード・フォーカスRSと比較試乗した際と同じスペックだが、今回はAMGエアロダイナミック・パッケージを装着し、よりアグレッシブなルックスに。

最後は、待望の復活となったシビック・タイプR。これはご存じのように、登場間もないブランニューモデルだ。

このホンダの新型車のルックスがお好みでも、見るに堪えないとお思いでも、しばらく乗れば、見た目はこのクルマをどう感じるかという上では大した意味を持たないことに気付くだろう。

スランドウ・サーキットでのタイムアタックの際、アウディRS3スポーツバックで最速ラップを出したのち、意気揚々とピットで待つ同僚たちのもとへ向かったが、だれもたいして気に留めてはくれなかった。160km/hからのブレーキングで、全車中で唯一、10秒を切った時もそうだ。そんなことは予想済みだったからである。彼らの興味はそんなことより、敢えて期待せずにいたはずのタイプRに注がれていた。そんなわけで、この決勝ラウンドは、テスター陣の興味を独占したシビックを中心として話を進めていく。

サーキットで見えなかったシビックの欠点

これは、グリップとバランスに優れ、コミュニケーションに長け、期待以上にサーキットで夢中になれるクルマだった。公道上でもそれは基本的に同じだが、同時にそれまで見えなかった欠点や限界も浮き彫りになったのも確かだ。

この新しいシビックR、とにかくデカい。グリップやハンドリングのレスポンス、ボディコントロールはコンパクトなクルマのようで、サーキットでは実際のサイズを巧みにごまかしている。

しかし、ロンザ渓谷を縫う狭く曲がりくねった道では、まるで岩の壁が突然狭まったかのように思えるほどだ。左に舵を切ると、コーナー外側に当たる右の前輪が、センターラインに埋め込まれたキャッツアイをしばしば踏みつけさえする。もし、あなたも本能的に小さなホットハッチを好み、クルマの小ささを、より速いエキゾティックカーに対するアドバンテージと考えるタイプなら、これにはちょっと戸惑うだろう。

結局のところ、多かれ少なかれ悩まされずには済まない。まずはじめに、ホンダのエンジニアたちがいかにして操作系の精確さやタッチを、極めて昔ながらのテイストに仕立てたのか理解するために、かなりの努力を要する。

また、人工排気音発生装置のような代物が全盛の時代に、彼らが現代風のターボエンジンをどれほどドラマティックで伝統的な仕立てにしたか、そして、この全面刷新された世代に限れば、ホットなシビックがどのようなものになっているかも知りたいところだ。

ホットハッチが忘れていた「一体感」

カービングナイフのようにクールな金属製のシフトレバーを押し込むと、それは実に心地いタッチを返してくる。ストロークは短く、ガッチリとして、完璧な重さで、積極的にシフトチェンジできる。このクオリティに比べると、単体で乗った時には不満を感じなかった308GTiのそれが、ダルく、ユルく、魅力に欠けるものに思えてくる。最新モデルの水準に照らしても、これは上々の部類だ。

これほど素晴らしいMTだけでも、このカテゴリーに何が足りなかったを知ることができる。このドライバーがコントロールする領域の広さや、メカとの一体感は、パドルシフトのホットハッチでは決して味わえないものだ。

そうしてローギアに入れ、前方が開けたところで、スロットルペダルを床まで踏み込んでみる。このホンダの4気筒、今回の4台の中でパワーは上から2番目で、トップのメルセデス-AMGとの差はこのクラスとしては小さくなく、また3番目のフォルクスワーゲンには肉薄されている。

ところが、走り出した途端にふたつの事実に驚かされる。まず、スペック表の数値から想像するよりはるかに速く感じられること。つぎに、その速度域が公道で日ごろ使うのに、もしくは公道上で長く楽しむのに必要なレベルを超えていることだ。

もっとも、メルセデス-AMGはこれよりさらに上で、同じことをすればスリルを通り越して心配を覚える羽目になる。対して、プジョーでは全然物足りない。ホットハッチのパフォーマンスという観点では、ゴルフRとシビックRがドンピシャど真ん中といった具合になる。どちらも扱いやすく速いクルマで、ただしエンジンにより純粋なカリスマ性が感じられるのはシビックの方だ。

ターボラグは許容範囲内

このホンダユニットには、確かにターボラグがある。ドライバーズカーにとってはうんざりする悪癖だと思われるかもしれないが、個人的にはそうでもない。ターボラグが感じられるからといって、このシビックが1980年代のターボカーみたいなものであるわけではないからだ。

たしかに、最新のドライバーズカーには、スロットルペダルの踏み加減にもっと心地よく反応してくれるものがあるだろう。しかしながら、その他の部分のコントロールでは、完璧に計算されたアキュラシーが際立っている。ほんのわずかな過給遅れが気にならなくなれば、このクルマは地平線まで突っ走り、ほかの4気筒ターボが到達しえない回転スピードでクランクは回り続ける。

3500〜5000rpm辺りでエンジンが生み出す力の奔流は、病みつきになりそうなものがあり、ウェットコンディションやひどいバンピーな路面でなければ、245幅とワイドな20インチの前輪が強力なトラクションをみせる。ときおり、小刻みなキックバックがあるものの、それはフルパワーでの走行時に路面状況が変化するような状況での話。それはトルクステアの類ではなく、適切な減衰行程の一環を体感できているということだから、むしろ望ましい。

操舵フィールはシビックの圧勝

タイプRらしい、ほかの3台より重くダイレクトな手ごたえのステアリングホイールは、両手でしっかり保持すべきもの。そして、ほかより多くのフィードバックももたらしてくれる。対照的なのがゴルフRのそれで、指を添えただけで回せそうに軽い。A45のステアリングホイールはゴルフより多少重く満足感も高いが、取り皿を思わせるほど小さいプジョーのそれはアシスト過剰で、前々から不満の種だった。

ホットハッチのステアリングは、路面の感触や前輪サイドウォールのしなりまでも指先に伝えてくれるものが望ましい。成績を付けるなら、タイプRは優、A45とゴルフRは良といったところ。308GTiは、想像以上にバランスのいいシャシーを持ちながら、手元に伝わるフィールはほぼ皆無で、不可を付けざるを得ない。

ホットハッチの評価においては、乗り心地の洗練性もまた重要な要素だと思う。というのも、気持ちよくワインディングを楽しめるカントリーロードには、同時に対処すべき轍やバンプも多いからだ。その点、タイプRの評価は最高ではなく、B級道路でゴルフRのアダプティブダンパーが見せる巧みな脚さばきとは比べ物にならない。ゴルフRは、路面の隆起や不整をみごとに呑み込んで、スムースな乗り心地を提供してくれる。

とはいえ、ボディコントロールやハンドリングの精密さ、クルマとの一体感などにおいて、フォルクスワーゲンはホンダが打ち立てた基準に遠く及ばないクルマを造っている。その差は、ホンダが乗り心地でフォルクスワーゲンに付けられた差より大きい。コンフォートモードを選んだシビックRは、先代までのタイプRを名乗るモデルでは到底望めなかったしなやかさを発揮する。

ただ、かなり過酷な舗装では、ホンダがまだパーフェクトなサスペンションのチューニングを見いだせていないように感じる。おそらくそれは、コンフォートではわずかばかりやわらかすぎ、スポーツではこれまたいささか動きがぎこちないのだろう。

最新は最良だった

しかし、シビックRの視界がかすむようなスピードや強力なグリップ、勢いとエキサイティングさをもってすれば、ほとんどの道を制することができる。コーナーはほぼすべて、攻めたライン取りや挙動のアジャストを楽しむチャンスに思えるだろう。その時、満面の笑顔浮かべさせる愉快さは、ほかの3台に日々乗っていても得られることのないものだ。

公道とサーキットを含め、3日間に及んだテストの全日程を終えて、参加したテスター陣は満場一致で結論を下した。ゴルフRは広い意味でベター、A45はより速く、308GTiは他車に見劣りする。ドライバーズカーの王者にふさわしいのはシビックだ。ライバルたちが小規模なマイナーチェンジを施す中、新たに登場し、先代から飛躍的な進化を遂げたそれが、2017年のベストだったのである。

ちなみに、サーキット最速はアウディ

南ウェールズのスランドウ・サーキットでは、GPSを用いた厳密なタイム計測を実施した。その結果として見えた今年の傾向は、4WD優位という予想通りのものだった。

0-97km/h加速タイムが二駆で唯一5秒を切ったのは、BMW M140iだ。FFでは、ホンダ・シビック・タイプRがギリギリ5秒台に入っている。

奇妙なのは、ローンチコントロールが4WDのクルマにしか装備されていないこと。むしろ二駆の方が、その恩恵を必要としているように思うのだが。なお、0-100mph(0-161km/h)タイムのないクルマもあるが、計測したストレートの範囲内で160km/hを超えることができなかったためであることをお断りしておこう。

ラップタイムで、もっとも目を引くのはシビックだ。パワーに劣るFFが、より強力な4WDと同着なのである。逆に残念だったのはレオンで、こちらはテスト開始早々にクラッチが滑ってしまった。もしも万全な個体で臨んでいれば、少なくとも加速タイムではプジョーを上回っただろう。