バイエルンはジューレ、トリソ、ハメス、ルディ(左から)の4人を獲得。いずれもすでに期待通りの活躍を披露している【写真:Getty Images】

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名手2人が引退。穴を埋めるのは多彩な実力者たち

 現地時間8月31日、欧州主要リーグの移籍市場が締切を迎えた。この夏も各チームで様々な移籍があったが、それぞれ主要クラブの動きはどうだったのだろうか。今回はバイエルン・ミュンヘンの補強を読み解く。(文:本田千尋)

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 フィリップ・ラームとシャビ・アロンソの両選手が昨季限りで引退したバイエルン・ミュンヘン。カルロ・アンチェロッティ監督は、2人の偉大な名手が抜けた穴を埋め、チームを再構築し、国内外のタイトルを獲りにいかなくてはならない。

 ペップ・グアルディオラ前監督の遺産を活用した昨季、新戦力の獲得は2名に留まったが、今季は4名と2倍に増えた。就任2季目となるアンチェロッティ。“脱ペップ”を図り、自分の色を出していくようだ。

 まず今年1月に、ホッフェンハイムから二クラス・ジューレとセバスティアン・ルディを加入合意を発表した。2人は揃って6月にドイツ代表のコンフェデレーションズ杯優勝に貢献し、7月からバイエルンに合流している。

 21歳のCBジューレは先行投資の意味合いもあったが、ジェローム・ボアテングとハビ・マルティネスが負傷で出遅れた序盤戦は、ベテランの穴を埋めるのに十分な活躍を披露。27歳で選手として完成されているルディも、ボランチで高いビルドアップ能力を発揮して開幕戦からチームに順応している。

 続いて6月、リヨンからコランタン・トリソが加入した。22歳のフランス代表MFの獲得は、アンチェロッティの希望だったという。バイエルン史上最高額の4150万ユーロ(約53億円)で加入したMFは、早速ボランチでレギュラーを確保。展開力と運動量を持ち味に、X・アロンソとアルトゥーロ・ビダルを足して2で割ったようなプレーを披露中だ。

 そして7月には、ハメス・ロドリゲスが2年間のレンタルで電撃移籍してきた。レアル・マドリーで出場機会を失っていたコロンビア代表の獲得も、アンチェロッティたっての願いだったようだ。2人は2014/15シーズンにエル・ブランコで共闘。再起をかけるハメスにとっても、今回の移籍はうってつけと言えるだろう。

 プレシーズンのアウディカップでの負傷により出遅れたが、ブンデスリーガ第3節ホッフェンハイム戦でバイエルンでの公式戦デビューを果たした。まだまだ未知数だが、アンチェロッティ政権の行方は、この“愛弟子”の活躍次第なのかもしれない。

 なお、ブレーメンから獲得したセルジュ・ニャブリは、そのままホッフェンハイムへレンタル移籍。リオ五輪得点王のポテンシャルに疑いはない。武者修業を経て、スケールアップして帰ってくるはずだ。

 ブンデスでは開幕2連勝と好スタートを切ったバイエルンだが、ホッフェンハイム戦は0-2で落とし、早くも黒星がついている。スローインからの速攻で失点し、守備では集中を欠いた。また、トーマス・ミュラーやロベルト・レバンドフスキが、起用法やチームに対する批判を述べるなど、少しまとまりを欠いているところがある。

 アンチェロッティにとっては、トリソやハメスといった“申し子”を既存メンバーと融合させ、どのようにチームを再統一するのかが、問われるシーズンになりそうだ。

補強・総合力診断

IN
GK クリスティアン・フリュヒトル(バイエルンU-19/昇格)
DF ニクラス・ジューレ(ホッフェンハイム)
DF フェリックス・ゲッツェ(バイエルンU-19/昇格)
DF マルコ・フリードル(バイエルンU-19/昇格)
MF セバスティアン・ルディ(ホッフェンハイム)
MF コランタン・トリソ(リヨン)
MF ハメス・ロドリゲス(レアル・マドリー/期限付き移籍)

OUT
GK トム・シュタルケ(現役引退)
DF フィリップ・ラーム(現役引退)
DF ホルガー・バドシュトゥバー(シャルケ/期限付き移籍期間満了→シュトゥットガルト)
MF シャビ・アロンソ(現役引退)
MF ジャンルカ・ガウディーノ(ザンクド・ガレン/期限付き移籍期間満了→キエーボ)
MF ドグラス・コスタ(ユベントス/期限付き移籍)
MF レナト・サンチェス(スウォンジー/期限付き移籍)

補強評価:A

 トリソとルディの2人は、X・アロンソとラームの抜けた穴を十分に埋めてくれそうだ。22歳のトリソは、X・アロンソのような老獪さを持ち合わせてはいない。だが、ピッチを激しく上下動する豊富な運動量は、チームにこれまでと違った色をつけてくれるに違いない。

 ルディはボランチでラームさながらのプレーを見せ、SBでの起用も可能。現在はヨシュア・キミッヒが務める右SBでも、重要なバックアッパーとなるだろう。

 CBを主戦場とするジューレは、マッツ・フンメルス、ハビ・マルティネス、ジェローム・ボアテングらとのポジション争いに挑む。レギュラーの確保は難しいかもしれないが、これから過密日程をこなす上で貴重な戦力となるはずだ。

 そしてハメス・ロドリゲスは、アンチェロッティが独自色を打ち出す上で重要な役割を果たすのかもしれない。ペップ時代にはなかったような強みを、トップ下で発揮するのではないか。いずれにせよブンデスリーガ6連覇を目指す上で、盤石の補強を行っている。

総合評価:A

 戦力値ではブンデスで頭一つ抜けており、間違いなく優勝候補。純粋に戦力だけを眺めてみれば、全体的に穴らしい穴は見当たらない。

 GKは新主将のマヌエル・ノイアー、右SBにキミッヒ、CBにボアテングとフンメルスと、守備陣にはドイツ代表がズラリ。中盤にはチアゴやビダルなど、相変わらずいぶし銀の選手が揃っている。複数のポジションをこなすダヒド・アラバの存在は心強い。

 “ロベリー”の高齢化は進んでいるが、20歳のキングスレイ・コマンを完全移籍で獲得するなど、世代交代も着々と進んでいる。

 上手くハマればチャンピオンズリーグ制覇も狙えるだけに、アンチェロッティの手腕こそがラストピースか。ハメスやトリソといった新戦力を融合させつつ、ポジションが安泰ではなくなったミュラーや、アクの強いリベリなどの不満を上手く消化していくことができるか。

 単なる放任主義に陥らずに、選手が個々の能力を十二分に発揮できるよう、イタリア人の老将は調和を整えたいところだ。

(文:本田千尋)

text by 本田千尋