主将の青山はチームの変化に胸を張った。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 前半戦のC大阪とのアウェーゲームは2-5と完膚なきまでに打ちのめされた。あの屈辱の日から4か月が経ち、広島は7月中旬にヤン・ヨンソン体制が始動してから2か月が経過してC大阪とのホームゲームを迎えた。今節は広島の現在の力を計る恰好の一戦となったが、新しいチームは足並みを揃えて力強く歩み始めている。
 
 試合後、青山敏弘は「もうチームが変わっている。今日はそういうところを見せられた」と胸を張り、ヤン・ヨンソン監督は「自分たちがいい方向に向かっているという自信につながっていく」と今後を見据えた。
 
 なによりチームを支える守備が安定してきたことが大きい。今節はC大阪のアタッカーに何度もボックス内への侵入を許したが、ディフェンスラインは統率が乱れることなく適切な対応を続け、個々が気迫を前面に出してC大阪の攻撃を跳ね返していった。
 
「ラインの上げ下げを小まめにして味方との距離間をいい距離に保とうと意識していました」(水本裕貴)
「距離間を良くして守ることを意識していたし、相手は細かいところでも中に入ってきたり2トップの関係性もいいので、そこは僕とミズでしっかりと見るようにってことは監督からも言われていました」(千葉和彦)
 
 試合後にCBのふたりは距離間を常に頭に入れて対応を続けたことを話してくれたが、新体制になってから不動の4バックを形成している4人は試合を重ねるごとに連係を高めている。ボールホルダーへアタックがルーズになることなく、みんなでカバーし合ってシュートシーンには身体を投げ出す我慢強い守備を体現できるようになってきている。
 
「修正点もありますけど、結果としてゼロで終えられたことをプラスに捉えたいですし、ピンチも全員で身体を張って守れた。我慢強さが少しずつ出てきたと思います」と水本は充実した表情で語り、「勝ちが自信を深めてくれると思うし、次の試合にポジティブな気持ちで臨めることが非常にうれしい」と千葉は笑みをこぼした。
 
 ここ4試合で喫した失点はひとつだけ。指揮官は「正直なところもう少し点を取って勝っていきたい」とさらなる攻撃面の向上を目指しているが、攻撃面は一朝一夕で進むことはないだろう。ただ、今節にフェリペ・シウバとパトリックの二人が見事なカウンターを完結させて決勝点を叩き込んでくれたように、ブラジル人アタッカーたちはスペースがあれば力を存分に発揮できる能力を有している。
 
 守備の統率を崩さずスペースが生まれる時間が来るまで我慢強く戦えば、これからの試合も必ず勝機はやってくるだろうし、勝点を積み上げていく戦いができるはずだ。
 
 4節を終えてから降格圏にランクしてきた広島は、実に23試合ぶりに残留圏に浮上した。もちろんまだなにも成し遂げたわけではないが、残留争いを勝ち抜く態勢は着実に整ってきている。
 
取材・文:寺田弘幸(フリーライター)