チリ代表といえば…懐かしのFWについても語った宮澤ミシェル氏

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サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第13回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど、日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、W杯最終予選で出場権をかけて戦っている現在の南米王者・チリ代表。欧州のビッグクラブで躍動する一流選手たちについて分析する。

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サッカーW杯最終予選は南米で激戦が続いているが、南米王者のチリは現在6位と予想外の苦戦中。10月5日の試合に注目だ。6月のコンフェデレーションズカップでチリ代表を現地で見たが、南米選手権を2015年、2016年と連覇した理由がよくわかった。

アーセナル所属のFWアレクシス・サンチェスが28歳、バイエルン所属のMFアルトゥーロ・ビダルが30歳、ベジクタシュ所属のDFガリー・メデルが29歳と、主力選手は脂がのっていて今がピークだ。

例えば、コンフェデのオーストラリア戦で見せたサンチェスのパフォーマンスは、肉体が少しでも衰えたら、とてもできはしないだろうと思うほど、その瞬発力は凄まじかった。急激にスピードを上げてスプリントして、急ブレーキで止まる。普通あんなに急発進・急停止をやったらすぐにバテるし、もし1試合体力が持ったとしても、あれを何試合も続けていたら肉体が悲鳴を上げておかしくなってしまうはずだ。

それだけのハードワークができるのは、日頃から鍛えていることがもちろんあるだろうけど、生まれ持った特別な体の強靱さもあるのだろう。

加えて、ひっくり返るのもうまい。身長は168cmほどと大きくはないけれど、タックルして転んだり、DFともつれ合ったりした時に太ももに相手の膝がぶつかっても、平然と起き上がって走り出す。きっと瞬間的に急所からは外しているのだとは思うが、そういうところから「バルセロナでプレーしていただけのことはあるな」と妙に感心してしまった。

ビダルはモヒカンのいかつい見た目の通り、何を考えているのかちょっとわからない選手だ。プレースタイルは、相手がケガをしたり、イエローカードを受けるのではと心配になるほど激しく当たる。それなのに、自分がファウルを受けると審判に激しく抗議して詰め寄る。そうかと思えば、ポジションに戻るとすぐに冷静さを取り戻している。

中盤で相手のボールホルダーを確実につぶし、ピンチの芽は体を張って未然に防いでいく。なおかつ、最前線にまで顔を出して、ゴールチャンスも作る。さすがだと唸ってしまうプレーを随所に見せてくれた。

今のチリ代表を見ていて思い出すのが、“ササ(ZA−SA)コンビ”。1998年のW杯フランス大会で世界を驚かせた178cmのイバン・サモラノと、173cmのマルセロ・サラスのチリ代表のFWふたりだ。

サモラノは躍動感があって抜群に空中戦が強く、サラスはサイドに流れてきてスピードで相手陣を駆け抜ける。ふたりとも体は大きくないけど、態度は2mくらいありそうなほど大きかった(笑)。

1998年のW杯フランス大会でのグループリーグ初戦のイタリア対チリの試合は、TV中継の解説を担当したので今でも強烈に覚えている。イタリア代表がクリスティアン・ヴィエリのゴールで先制。対するチリ代表はササコンビを中心に反撃に出て、サラスの2ゴールで逆転した。後半の時間は刻々と進んでイタリア代表のベンチは浮足立っていた。そこで仕事をしたのがイタリア代表のロベルト・バッジョだった。

ヴィエリの先制点をアシストしたバッジョが、1点を追う後半残り10分くらいの状況でペナルティエリア横からドリブルで切れ込んでいき、DFに囲まれた瞬間に蹴ったボールが相手の手に当たってそのままPK。それを自ら決めて同点に追いついた。

私自身、ペナルティエリア内でファウルを受けたフリをして倒れてPKをもらうことを考えることはあっても、ハンドでのPKを狙うという発想はなかった。だから、バッジョの発想と技術とメンタルは、強烈に記憶に残っている。そのプレーをバッジョはセリエAでもよくやっていたらしいんだけど、1点がどうしても欲しい状況でやれてしまうだけの技術とメンタルの強さがすごいね…。解説しながら鳥肌が立ったのを覚えているよ。

チリ代表のササコンビの話をするつもりが、バッジョのエピソードになってしまったな(笑)。

話をチリに戻すと、1998年W杯フランス大会を“ササコンビ”の活躍で決勝トーナメントまで進んだチリ代表の活躍を見ていた当時8〜10歳くらいのサンチェスやビダルたちが、20年後にチリ代表を南米No.1の座に導くのだと思うと、歴史はそうやって紡いでいかれるのだなと、あらためて思う。

チリ代表の現在の黄金世代が、選手キャリアのピークで迎える来年のW杯ロシア大会に無事出場できるのか、注目したい。また、出場したらどんな成績を残すのか、今から楽しみだ。そして、それを見るチリの子どもたちが世界を席巻する選手として育っていくのだろう。こうして築かれていく伝統を目の当たりにすることもサッカーを観る醍醐味(だいごみ)だ。

(構成/津金壱郎 撮影/山本雷太)

■宮澤ミシェル

1963年 7月14日生まれ 千葉県出身 身長177cm フランス人の父を持つハーフ。86年にフジタ工業サッカー部に加入し、1992年に移籍したジェフ市原で4年間プレー。93年に日本国籍を取得し、翌年には日本代表に選出。現役引退後は、サッカー解説を始め、情報番組やラジオ番組などで幅広く活躍。出演番組はWOWOW『リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』NHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』など。