リーガエスパニョーラ第4節、ヘタフェの本拠地コリセウム・アルフォンソ・ペレスで行なわれたヘタフェ対バルセロナの一戦は、柴崎岳にとって光と影に包まれたような試合となった。

 光はもちろん、39分に見せたプリメーラ(1部)での初得点。しかも3試合無失点で首位に立つバルセロナから先制点を奪うファインゴールだ。


バルセロナ戦で先制ゴールを決め、喜びの表情を見せる柴崎岳

 ヘタフェのセットプレーはいったんバルセロナのDFに跳ね返されたが、セカンドボールを拾い攻撃を再構築。ダミアン・スアレスがクロスを入れ、マルケル・ベルガラが頭で落とす。ボールの先にいた柴崎がダイレクトで左足を振り抜くと、まるでレーザービームのようなスピードと正確性でゴールネットを揺らした。

 テネリフェでプレーしていた昨シーズン、地元記者に「ガクはゴールを決めても全く喜んだパフォーマンスを見せることはないが、それは日本にいたときからか?」と聞かれたことがあったが、柴崎にとってもバルセロナから決めたプリメーラ初ゴールは格別だったのだろう。飛行機の翼のように両手を広げると、祝福に来るチームメートをかわしてベンチへ向かった。そこには柴崎を中心とした喜びが満ち溢れ、ネットが揺れた瞬間から満員のスタンドは怒号に近い歓喜の雄叫びをあげていた。

 しかも前半の試合内容は、格下のはずのヘタフェが強者であるバルセロナを相手に主導権を握る展開だった。2011〜12シーズン以来、6年ぶりのバルセロナ戦勝利へと、大きく期待がふくらんだ。

 だが、後半になると柴崎もヘタフェも影に包まれてしまう。5分、なにもないところで柴崎はピッチに倒れ込んだ。倒れたシーンでは接触プレーはなかった。そして3分後に日本人はピッチを後にすることになる。スタンドからは背番号10番の交代を惜しむように、大きな拍手と”ガクコール”が送られた。

 左足の甲の部分を気にするしぐさをみせていた柴崎の負傷について、ホセ・ボルダラス監督も、どのレベルのケガなのかを把握することはできずにおり、試合後、「ひとりで突然座り込んだので心配している。大きな違和感を感じているとのことだが、明日の精密検査の結果が出るまでは、ただの驚きで終わるものなのか、自分達が思っている以上に深刻なものなのかはわからない」と、説明するのにとどまった。

 そして試合も、柴崎がピッチを去った後はバルセロナに主導権を握られてしまう。

 17分、アンドレス・イニエスタに代わって後半から出場していたデニス・スアレスに同点弾を決められる。そしてヘタフェが何とか持ちこたえようとしていた39分、リオネル・メッシのパスを受けたパウリーニョにゴールを許してしまい、1対2と逆転負けを喫した。ヘタフェは金星どころか勝ち点を獲得することすらできなかった。

 昨年のクラブW杯決勝レアル・マドリード戦に続くバルセロナからのゴールは、大きなインパクトを与えるものであり、柴崎という選手のビッグゲームでの強さとそのタレント性を、あらためてスペインだけでなく世界に知らしめるものとなった。ゴールを決められたGKテア・シュテーゲンが「ガクを祝福しないとね。すごいゴールを叩き込んだのだから」と賞賛の声を上げるほど、すばらしいものだった。

 柴崎は今季ここまで、ボルダラス監督の信頼を勝ち取って試合出場を重ねたうえ、世界のトップクラスを走り続けるバルセロナから記録に残る結果も残すなど、プリメーラという舞台で好調なスタートを切っていた。

 それだけに突然のアクシデントは、本人はもちろん、多くのサッカーファンにとっても悔やんでも悔みきれないものだろう。今はただ、左足のケガが軽傷であることを祈るしかない。

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