九月場所で十両に上がった大成道(写真:共同通信社)

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 相撲ブームが沸騰している。「謎のスー女」こと相撲女子の尾崎しのぶ氏が、現在相撲コラムを週刊ポストで執筆中。今回は九月場所で十両に上がった大成道と兄の笹山兄弟について尾崎氏が綴る。

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 新十両データで「好きな女性のタイプ」の覧を読んで、シブ好みだなと思った。三十代半ばの私にとって、彼女は『はぐれ刑事純情派』でのイメージ、頼りがいがありつつオチャメな中年女性を演じる女優であった。

 あごのキュンとしたとてもきれいな人なのではあるが、二十四歳の青年があこがれるには熟女すぎないか、と首をかしげてしまう。しかしオカモトレイ違いだった。御年六十六歳の岡本麗ではなく、二十六歳のタレント岡本玲。かわいらしい岡本玲がこれからテレビに登場するたびに「将来はお相撲さんと結婚する玲ちゃん」と見るだろう。

 そんなまぎらわしい勘違いで岡本玲を認識させてくれたのは大成道。二〇一一年五月場所が初土俵。八百長騒動の直後、無料公開の技量審査場所だったというネガティブな印象のあるその場所だが、照ノ富士や常幸龍、千代大龍と実のある力士が何人もデビューしている。

 笹ノ山と名乗っていた彼(ちなみに新弟子時のアンケートでは好きな有名人は南沢奈央と答えている。南沢奈央から岡本玲へ転向した経緯を知りたいものだ)を気にし始めたのは七勝、六勝、六勝と大きく勝ち越しを続けていて番付の上がり方に目を見張ったからだった。

 相撲ぶりがデカければ、顔付きもまた大物の雰囲気。もしもよく似た姉か妹がいるならばミスユニバースなど世界的な美女コンテストに出場したり、石油王と結婚しそうだと想像させた。肉感的なのだがそれは力士っぽい肉なのではなくグラマラスな、良い意味で大味な顔だと思った(奥目の具合がトランプ大統領夫人、メラニアさんに似ている)。

 それから名鑑を見て、本名の笹山を名乗れない理由があることを知った。笹山という力士がすでにいる。三歳上の兄、笹山数馬。入門から一年足らずで、弟は兄を追い抜いて幕下に昇進していった。その後、大成道は幕下上位に定着し奮闘、笹山は幕下と三段目を往復していた。

 大成道のモンスターっぽさ(四股名を変える際、手足の大きさが恐竜のようであるから「大成双」と書いてダイナソーと読ませる案もあったらしい)をおもしろがったことをきっかけに笹山の存在も知ったのだが、私は兄の方を応援する気持ちを強く持っていた。よくあるケースだ、とも思った。

 若乃花と貴乃花、安壮富士と安美錦もそうであったように、弟が兄より大柄で、昇進が早い(貴公俊と貴源治もそうだが、弟といっても双子なので該当するか考えどころ)。若乃花の十両昇進は貴乃花の二場所後だが、安壮富士のそれは弟の安美錦に遅れること三年半後だ。大成道はこの九月場所十両に上がった。私は、笹山もいずれは関取になると信じている。

 なぜなら、笹山は大成道の付け人を務めることになったからだ。奮起させたいとの木瀬親方の愛情なのだろうか。笹山自身がすすんで志願したのかもしれないが……。それをつらく悲しいことととらえるのは、私の心が弱いせいだ。残酷な現実を血に変え、笹山は前進する。三年後、兄弟関取として活躍している彼らの姿が楽しみでならない。

※週刊ポスト2017年9月29日号