「Thinkstock」より

写真拡大

「結婚したいのに相手がいない」

 そんな声を30代以上の男女から聞くことが多くなった。そんなとき私は、「誰と結婚しても、それほど大きく違わないから、とりあえず結婚したほうがいいですよ」と答えるのだが、それにしても未婚率の上昇は止まらない。

 4月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した最新データで目を引くのは、「生涯未婚率」の高さだろう。50歳時に一度も結婚したことがない人は生涯ずっと未婚者であるとの前提が置かれ、男性は23.37%、女性は14.06%となっている。これは5年前と比べて3ポイント以上もの増加であり、今後さらに上昇することが予測されている。

 さて、結婚が持つ意味のひとつとして、「子どもを育てる」ことがある。結婚しない自由、子どもを産まない選択を語る女性も増えているが、「それは自由ですね」とばかりはいえない。

 一人の女性の生涯で考えてみましょう。ある家で生まれた女の子は、その家の「娘」として育まれ成長し、結婚することで「妻」となり、子どもを持つことで「母」となり、孫ができると「祖母」となる。もちろんそれをすべて行わなければならないものではないが、今まで4万件近い家族問題の相談を受けてきた私の立場からは、「できれば一度は結婚しておいたほうがいいですよ」と伝える。

 相談に来られる女性は、夫婦の悩み、子育ての悩み、嫁姑の悩みなどさまざまな問題を抱え、近年目立つのが、50代以上の女性で、「子どもを持たなかった悩み」を抱えており、取り戻すことのできない後悔として深く傷ついている方がいることです。そういった相談をたくさん見てきたため、できれば結婚して出産し、夫との関係や子育ての悩みへ移行してもいいのではないかと感じている。

 結婚しなかった女性のなかには、「絶対に失敗したくないと思って、結婚相手を選んでいるうちに、気づいたら結婚していなかった」と自分自身を振り返って語る人がいる。つまり、結婚する意思はあったのだが、相手を慎重に選び過ぎたというのである。

 真面目に深く考えすぎた挙げ句「なさなかった」後悔を抱えるよりは、「もう少し軽く生きてもいいのではないか」と、私は彼女らに提案するようにしている。

●結婚の3つのステージ

 そして、「結婚って、3回くらいしてもいいんですよ」と伝えると、「そんな、非常識な!」と気色ばむ人が多いため、「結婚には3つのステージがあります」と言い換える。

 ある家で生まれた子どもが、親や周りの人に育てられ、結婚に適う年齢となって新しい家族をつくる。人として役割が増えていくのも、結婚の醍醐味である。

 第1ステージは、いってみれば親のための結婚でもある。自分が生を受けて育ててもらい、一人前になったと確認しての結婚は、親にとって安心できるもの。育ててくれた親に感謝できれば、さらに一人前である。

「親のための結婚なんてしたくない」「自分の成長のために結婚したい」と思う人は、次のように受け止めてください。結婚によって、男性は「夫」、女性は「妻」という新しい役割を得ることができる。人間というのは不思議なもので、新しい役割を得ることによって成長できるので、自分自身の成長を望むあなたにとっても、結婚は素晴らしいものです。

 第2ステージは、子どものための結婚。夫となり妻となった一組の男女が、子どもを持つことで「父」となり「母」となるのだが、この役割は人によって要する時間が異なる。たとえば、子が大学に入学し家を出たことで親としての役割を終えたと感じる人もある。この場合は18年間の親の役割を終えることになる。

 また、就職したことで親の役割を終えたとする場合もあれば、子の結婚で一段落と感じる人もいる。さらに、子どもが50代となっても結婚せず自宅から勤務先への通勤を続けていれば、親の役割を50年以上も続けていることになる。子どもが一人の場合と複数人の場合も、親として果たさなければならない責任やかかる時間も異なります。

●自分自身のための結婚

 第3ステージは、自分自身のための結婚。親に対して子どもとしての責任を果たし、自分の子どもに対して親としての責任を果たしたあとにくるのが、自分自身のための結婚です。

 子育てのなかでさまざまなものを次の世代に送り伝え、親の役割を解除された後に一人の男性として、一人の女性としての結婚があります。

 まだ長く続く結婚生活を第1・第2ステージをともに過ごしてきた相手と行うか、自分自身だけのために生きるか、パートナーチェンジするかを考えるタイミングでもあるため、熟年離婚は多いわけですね。

 結婚とは深いものです。生涯を「息子」「娘」としてだけ生きる人生もありますが、「夫」「妻」となり、「父」「母」といった、あなたが享受し、あなたに期待される役割がたくさんあるのは、魅力的で豊かな生き方といえるのではないでしょうか。
(文=池内ひろ美/家族問題評論家、八洲学園大学教授)