リーグ7節目にしてようやく“初日”が出た久保。ここから一気にV字回復を果たしていけるか。(C)Getty Images

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 シーズン開幕からノーゴールの久保裕也が、ベルギー・リーグ7節目にして、やっと長いトンネルを抜け出した。
 
 9月17日のオーステンデ戦は0対0のまま31分を迎えた。最終ラインから前線に送られたロングフィードにCFシラが鋭く反応し、ジャンプしながらダイレクトでシュートを放つ。オーステンデのGKファン・ハメルは前に飛び出しなんとかこれをブロックするも、味方のCBロンバーツと交錯して転倒。こうしてがら空きになったオーステンデのゴールに、久保がこぼれ球を丁寧に右足で蹴り込んだ。
 
 これまで多くの決定機を外し続けてきた久保は「かなり緊張しました。あんな、緊張したシュートはなかなかないです。入ったんで良かったです」と心底ホッとしていた。
 
 プレッシャーを感じていたのは久保だけではない。
 
 今シーズンのヘンクは、ヨーロッパリーグでよもやの予選敗退となり、グループリーグ進出ならず。優勝を狙うベルギー・リーグでは6試合無勝利の15位と大不振に陥っていた。そのため、ベルギー国内では「ハイン・ファン・ハーゼブルック監督更迭論」も巻き起こっていた。
 
 もし、最下位のオーステンデに負けて順位を逆転されるようなことになれば、ますます指揮官の立場は危うくなっていただろう。結局、ヘントは2対0でオーステンデを下し、12位に浮上。つまり久保のゴールは、単なる“ごっつぁんゴール”ではなく、久保本人、チーム、ファン・ハーゼブルック監督を救う価値ある一発となったのだ。
 
 昨シーズン、わずか半シーズンのプレーで久保はゴールを量産し、“スシボンバー”の異名を頂戴した。このゴールをきっかけに、久保にはあの時のフォームを取り戻してほしいもの。本人は「1点入ると、どんどんノッていける気がします」と自信を口にする。
 
 一方で、オーステンデ戦では1点を奪った後、素晴らしいロングパスを見せたかと思えば、イージーなボールロストも目についた。この1試合の中では、パフォーマンスが安定しなかった印象だ。そのことを指摘すると、久保はうなずいた。
 
「まだ、(チームが)完全に良い試合をしているわけではない。個人としてもあんまりベストパフォーマンスではないと思う。でも少しずつ、良くしていくのが今は大事かなと思います」
 
 聞けば、体調を崩していたという。
 
「今日は少し気持ち悪かったです。分かんないです。何かに当たったかもしれないです。まあ、でも大丈夫です。移るかもしれませんよ」
 
 食当たりは空気感染しないのだが……。
 
「そうですか。ああ、良かったです」
 
 スタミナが切れ、84分でベンチに下がった久保。ゴールという特効薬が効いて、体調不良をジョークに変える久保。どちらも、現在の久保裕也の姿である。
 
 今はただ、完全復調と体力回復を祈るばかりだ。
 
取材・文:中田徹