口元をおさえる女児

写真拡大

急な腹痛、下痢、そして嘔吐…。「胃腸の風邪」とも呼ばれる胃腸炎(感染性胃腸炎)は、どの季節でもかかる可能性があるメジャーな病気だ。とくに夏場と冬場の2大ピークの時期は、多くの乳幼児が感染しやすいことで知られている。

胃腸炎のおもな症状は? 発症したとき、私たちの体内ではどんなことが起きているのだろう? 亀戸内科クリニック院長の荒木正先生に、胃腸炎にまつわる知っておくべき基礎知識について話を聞いた。

●幼児の感染時は嘔吐の症状が多い

「胃腸炎のおもな症状は嘔気、嘔吐および下痢です。発熱はないわけではありませんが、その頻度は低く、あまり高熱にはならないことが一般的です。小児では嘔吐が多いのに対して、大人は下痢の症状が多いことも特徴のひとつです」(荒木先生 以下同)

ところで、そもそも胃腸炎はどんなルートで感染することが多いのだろう?

「感染性胃腸炎の原因にはさまざまなものがありますが、病原体がついた手で口に触れることで感染する“経口感染”がほとんど。次に多いのが、飛沫感染や空気感染。発症している患者の吐物や下痢便が床やトイレ内に飛び散り、その飛沫を吸い込むことによって感染することがあります」

つまり原因は、体に害を与えるウイルスや細菌が体内に入り込んでしまうこと。だが原因物質が口のなかに入ったからといって、すぐさま嘔吐してしまうわけではない。発症までに潜伏期間と呼ばれるタイムラグが生じるのはなぜだろう?

「ウイルスや細菌の多くは、小腸の粘膜に感染して増殖します。体内に侵入したウイルスの数が100個以下でも12〜72時間の潜伏期間を経れば、1000〜1万個まで増殖するのです。これにより、初めて嘔吐や下痢、発熱などの症状が現れるのです」

●胃腸炎に効く予防薬・特効薬は?

毎年のように流行を繰り返している病気であるならば、そろそろ胃腸炎の予防薬や特効薬が完成しているのでは? そう期待したいところだが…。

「乳児にはロタウイルスの経口ワクチンが任意でありますが、ほかに胃腸炎の予防注射や特効薬のようなものは、まだ存在していません。抗生物質は一部の細菌性食中毒以外は無効です。制吐剤(嘔吐の回数を減らす薬)や整腸剤の投与など、対症療法が一般的な治療法です」

重要なポイントはたったひとつ、嘔吐や下痢によって失われた体内の水分を補う“水分補給”だ。

「症状が持続する期間は平均1〜2日と比較的、短期です。ですから、おもな治療ポイントは水分補給。特に小さなお子さんの場合は、脱水は大敵。症状が出ている1〜2日間はしっかり水分を摂らせ、脱水症状を引き起こさないよう注意してあげてください」

ただし、症状がひどい場合は、水を飲むだけですべて吐いてしまうこともある。そんなときはどうすればいいだろう?

「水よりも、経口補水液による水分補給が理想的です。それでも嘔吐してしまう場合は、ゼリータイプのもので水分を補ってください。ゼリータイプでも飲めないほど衰弱してしまった場合は、点滴が必要となります。その場合はすぐに医療機関を受診してください」

特効薬がないからといって焦る必要はない。胃腸炎はしっかり水分をとって安静にしていれば、数日で回復する病気。そのあたりの前提を頭の中に入れておけば、看病する側の心にも余裕ができるはず。いざというときのために覚えておこう。

(取材・文:阿部花恵 編集:ノオト)

関連書籍のご紹介