「エアトリップ」のエボラブルアジアは莫大な費用をかけて、オリエンタルラジオを使った広告宣伝を展開する(記者撮影)

オンライン旅行会社のテレビCM投入合戦が相次いでいる。

国内航空券予約サイトやアプリ「Aitrip」(エアトリップ)を展開するエボラブルアジアは、イメージキャラクターにお笑い芸人のオリエンタルラジオを登用。8月28日から福岡など一部地域でテレビCMを開始した。

9月11日に都内で開いた会見で、同社の吉村英毅社長は「今は誰も知らないが、国内線といえばエアトリップと言われるような存在になりたい」と意気込みを語った。

広告に30億〜50億円を想定

エアトリップは往復で別々の航空会社を選べたり、マイレージに加えて、最大で7%というポイント還元率を武器にしている。今後はWebやテレビCMといった広告を大量に投下し、知名度向上へ攻勢をかける。その金額は「来2018年9月期に30億〜50億円を想定している」(同)。

エボラブルアジアは2007年創業、2015年に株式公開したベンチャー企業だ。国内航空券の予約に強みを持ち、自社サイトでの販売や、他社サイトへのシステム供給、そしてベトナムでITのオフショア開発を手がけている。

最近は提携や投資事業も活発化させており、ホテル予約の分野では民泊最大手のAirbnbと提携したほか、メルマガのまぐまぐやキャンピングカー予約のエルモンテRVジャパンを買収するなどさまざまな手を打つ。


アドベンチャーはモデルの玉城ティナさんをイメージキャラクターに登用してる(アドベンチャーのHPから引用)

エボラブルアジアは今回、自社の航空券予約サイト「エアトリップ」を大々的にアピールする。これまで「空旅.com」などさまざまなサイトを展開してきたが、今回を機にエアトリップに統合。オリエンタルラジオを使ったテレビCMやWeb広告を大量に投下し、知名度向上を狙う。

一方、同じく国内航空券予約に強みを持ち、2014年に株式公開したアドベンチャーは8月1日からモデル、タレントの玉城ティナさんをイメージキャラクターに登用。主力サイト「スカイチケット」の知名度向上に向け、テレビCMやネット広告を投入している。

売上高の過半を広告費に投じる理由

この2社が特徴的なのは売上高に対する広告費の比率が高いこと。エボラブルアジアの今2017年9月期の売上高は61億円の見通し。来2018年9月期について会社側は見通しを開示していないが、『会社四季報』2017年秋号では80億円と予想している。

吉村社長の言葉のとおり、30億〜50億円を投入するとすれば、ほぼ売上高の半分近い水準を広告費に突っ込む計算になる。そのためエボラブルアジアはこの7月、クレディ・スイス証券を引受先に新株予約権を発行。向こう3年で最大100億円を調達し、そのうち80億円をM&Aに、20億円を広告費に充当する計画を立てる。

一方のアドベンチャーは前2017年6月期は売上高52億円に対し、36億円を広告費に投入。今後2年間で広告費に100億円を充当する計画だ。

この2社が売上高の半分近い水準を広告費に投じているのには理由がある。従来のジェイティービーやエイチ・アイ・エスといった伝統的な旅行会社が、パックツアーの売り上げを自社の売上高として計上していたのに対して、この2社は航空券手配の手数料のみを売上高に計上しているからだ。

「わかりやすくいえば、伝統的な旅行会社の粗利が、オンライン旅行会社の売上高にあたる」(日系オンライン旅行会社の財務担当役員)。

取扱高でみればエボラブルアジアは2017年9月期に約350億円の計画を立てるのに対し、広告費は20億円強を見込む。アドベンチャーは2017年6月期の実績が取扱高375億円に対し、広告費が36億円とほぼ10%の水準だ。

とはいえ、両社が規模に対して、巨額の広告費を投入するのは、得意とする国内航空券予約でシェアを確保するためだ。


各社が旅行関連のアプリを相次いで投入しており、特徴を打ち出すのは容易ではない(記者撮影)

現在、旅行業界ではネット専業で、航空券やホテルなど単品を販売するオンライン旅行会社(Online Travel Agency、OTA)が急激に成長を遂げている。

OTAでは、世界のホテル予約は米エクスペディアと米ブッキングドットコムが、それぞれ取扱高で約8兆円前後に成長。国内では楽天トラベルとリクルートライフスタイルが運営する「じゃらんnet」の2社が高いシェアを誇る。

激戦だが空白地帯がある

一方で、エボラブルアジアの分析によれば、「空白地帯となっているのが、国内の航空券予約市場だ」(吉村社長)。

2012年にピーチ・アビェーションやジェット・スターといったLCC(低価格航空会社)が日本でも事業を開始。当初は運行が遅延したり、取りやめになるケースも相次いだが、ここ数年で大手並みの水準になった。「出張や旅行に行くのに、LCCでもいいと考える人が増えた」(吉村社長)。

同社によれば、国内航空券予約の市場規模は1.5兆円で、そのうち9割を日本航空と全日空が占める。残り1割の市場をめぐって、エボラブルアジアとアドベンチャーが熾烈なシェア争いを繰り広げている構図だ。

両社は2020年度までに、取扱高1000億円という目標を掲げて、事業の拡大を急いでいる。「今は巨額の広告費を使っているが、リピーターが増えれば、獲得コストは下がってくる」(エボラブルアジアの柴田祐亮CFO)。

ただ、国内航空券のシェアを押さえても、その先には海外OTAとの熾烈な競争も待っている。果たして、遅れて産声をあげた日系OTA2社は生き残ることができるのか。