おカネの相談は、FP(ファイナンシャルプランナー)が解決してくれる。だが、そのFPが熱心に金融商品を勧めてきたら、どうする?(写真:マハロ/PIXTA)

今回は、FP(ファイナンシャルプランナー)のお仕事の内容と「フィデューシャリー・デューティー」についてのお話をしてみたいと思います。

金融商品の販売仲介手数料をとるFPは、信用できるか?


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フィデューシャリー・デューティーとは、顧客本位の業務運営のことを言います。実は、この春、金融庁は「フィデューシャリー・デューティーに関する原則」を公表しました。

これは、同庁が文字どおり顧客の立場に立った業務運営を徹底するよう、金融業界に向け、取り組みを促したものです。

具体的にいうと、商品の購入をする際の手数料や費用に関するわかりやすい情報提供や、顧客の最善の利益追求をするための従業員の正しい行動、それに対応するような業績評価や研修体制の構築など「7つの原則」を定めました。そして、強制ではないものの、それぞれの企業に、「7つの原則」に沿った取り組みを策定することを求めるというものです。すでに大半の金融機関が顧客本位の業務運営に徹するように、「フィデューシャリー・デューティー宣言」を採択、自社の取り組みを示しています。

私は、個人へのおカネまわりの相談業務に携わる私たちのようなファイナンシャルプランナー(以下「FP」)も、金融サービスを業として提供する者として、「フィデューシャリー・デューティー宣言」を行い、「お客様のために」自らの業務を遂行することを公約する必要があると感じています。

というのも、現実として大変残念ではありますが、FPの中には顧客に対し、不適切な金融商品などを直接販売したり、仲介をしたりして、金融機関などからそのコミッション(手数料)をもらい、収入の柱にしている人がいます。たとえば、不要な保険、販売を禁止されている海外の生命保険、私募の海外ファンド、あるいは、海外不動産や未開の土地などです。

また、適法であって、顧客が求めている生命保険や投資信託、あるいは不動産などを扱う場合でも、その販売にかかわって手数料収入を得るようになると、FPは「より大きな手数料収入が得られるように、顧客を勧誘したい」という誘惑にさらされることになります。当然、顧客へのアドバイスの内容にも、金融商品などの選択にも影響を及ぼす可能性があります。

金融商品の販売にかかわって収入を得ることで、FPはこうした可能性があることを率直に認めるべきでしょうし、金融商品の販売にかかわっているのなら、少なくとも、顧客に事前に明らかにすべき事実でしょう。

金融商品等の販売にかかわるFPの言い分のひとつに、情報提供やライフプラン設計など、FP本来の仕事である個別相談ビジネスだけでは食べていけないので、金融商品を売ってコミッションを得ることは「仕方がない」というものがあります。

私もFPになってから、何度もこのようなビジネスの誘いを受けました。誘う人一人ひとりに悪意は感じませんでしたが、彼らは、同様のビジネスにかかわるFP同士で連帯を深めて「結束」し、その「後ろめたさ」を払拭しようとしているかのように見えました。

「無料金融セミナー」の「落とし穴」

確かに、「FPでは食えない」ということは、業界でもよく言われています。その原因のひとつに、金融を中心とする個人相談が、日本ではまだ十分に浸透していないということがあるのでしょう。

加えて、多くの金融機関では「無料のセミナーやその後の個別相談」が行われていることもあり、おカネに関する相談に料金を支払うという発想を持たない人が多いという現実もあります。しかしながら、こうしたセミナーや相談の後には、主催者が売りたい商品があるのが常であり、これらのイベントは顧客本位のサービスというよりも、金融機関の形を変えたセールス行為と呼ぶべきものです。

しかし、最近では、そのからくりに気がつき、金融機関の「ひも付き」ではない中立的なFPにおカネを支払って相談する人が、少しずつ増えています。また、FPの中にも少数派ですが、金融商品などを紹介したり販売に何らかの関係をしてもコミッションをいっさい受け取らず、お客様の最善の利益のために、適切な相談業務(コンサルティング)を続けようとしている人がいます。

こうした誠実なFPがもっと増えるとよいのですが、そのためには、FP自身が正しい金融・投資などの教育を受け、実務を習い、訓練する場所が必要だと思いますし、その仕組みを整えるべきしょう。

英国では、政府主導で中立的なFPを養成しようとする試みがあり、公的サイトでのシミュレーションによる回答と実際の面談と合わせると、トータルでは2000万回もの相談が行われたという調査もあります。

日本でも、「自分年金」を作る受け皿である確定拠出年金制度が整いました。また、NISA(少額投資非課税制度)という有利なおカネの置き場所もできました。これらの制度を十分に活用し、おカネを適切に増やしていくためのアドバイスを受けたいという需要は、今後ますます増えていくでしょう。そのニーズに応える使命が、私たちFPにはあると思います。こうした機会を生かして多くのFPが活躍し、合理的な報酬を受けられるようにしたいものです。

少し前のことになりますが、金融庁の総務企画局政策課総合政策室の金融税制調整官である今井利友さんとFP業務のあり方について、さまざまな議論をさせていただきました。FPの経済状況について憂慮を持っておられると同時に、心あるFPの活躍に期待しておられ、心強く感じました。こうした金融庁の消費者本位の姿勢にお応えするためにも、私たちFPは、自らの業務運営が、真に「顧客本位」なものになっているのかを真摯に見直すべきでしょう。

その「実践の第一歩」として、私は、これまでどおり、事業継続に必要な合理的報酬の下で、お客様に対して一切の利益相反行為を行わないことを改めて確約し、明文化して、自分が経営するオフィス・ベネフィットのホームページで公表しました。「FPとしてのフィデューシャリー・デューティー宣言」としてPDFファイルでも掲載しておりますので、特にFPの皆様に読んでいただき、忌憚のないご意見を頂戴したいと思っています。

本当に顧客本位で働いてくれるFPと付き合おう

自分自身で宣言を書いてみて、FPがフィデューシャリー・デューティーについて考える際に、いくつかポイントになる箇所があると感じました。

フィデューシャリー・デューティー宣言は、前出のように7つの原則からなっており、それぞれの原則に従うか、あるいは、従わない場合はその旨と理由を説明するようになっています。

宣言の策定・公表に関する「原則1」はまさに原則をうたったものなのでいいとして、残りの6つについてはもっと深掘りしないといけません。まず、顧客の最善の利益の追求について述べる「原則2」では、相談業務にあって顧客の利益を尊重することのほかに、相談以外のセミナー、記事や書籍の執筆等の情報発信についても、良質で、特定の金融商品等の販売につながることのない独立性を確保することを述べるべきだと思います。

ただし、この項目は、セミナー講師や執筆など、FPにとっては重要な収入源と直結する問題でもあります。ですから、どの程度踏み込むべきかについては、私の場合も熟慮したつもりです(結局、「販売協力」を目的とした情報発信はいっさいしないと「吹っ切る」ことにしました)。

「利益相反の管理(原則3)」では、金融商品などの販売の加担につながる取引は現在いっさいしないと宣言するのはもちろん、これを「将来にわたっても行わない」と宣言しないと、不十分だと思いました。

「手数料の明確化(原則4)」、「重要な情報のわかりやすい提供(原則5)」については、特にお客様が負担するかもしれないコストとリスクについて、「事前に」かつ「わかりやすく」提供することを述べることが大事でしょう。

また、原則6の「顧客にふさわしいサービスの提供」は、いさかか微妙な問題をはらむ項目です。実際には、たとえば、金融資産の運用であれば、ほとんどすべてのお客様にとって「最も効率のいい運用を、適切なリスク量で」行うことが正解になります。

しかし、現実の金融ビジネスでは、「顧客のニーズ」を都合よく曲解して(たとえば、年金生活者だから毎月の分配金にニーズがあるといった、不適切な設定を行い)、顧客にとって最善ではない運用商品の選択やセールスがなされているのが現状です。せっかくフィデューシャリー・デューティー宣言をするFPとしては、こうした「業界に都合のいい金融ビジネス」とは一線を画したいと思います。私は、(顧客の損得にとって)正しい結論は曲げないけれども、顧客の状況に応じて情報を提供する努力をするという建て付けで、この原則に応えることにしました。

最後の原則7である「遵守体制」は、1人ないし、少人数でビジネスに臨むことが多いFPには、効果的な体制を提示することが難しい項目です。私の場合は、自己評価と課題を率直にホームページ等で定期的に公表することをもって、自己や第三者のチェックを行うと宣言することにしました。

私の拙い試みが、FPの皆さんのご参考に少しでもなると幸いです。また、同じ志を持つFPが増えることを心から願っています。