マンション購入の際、とくに重視するのが部屋間取り。「3LDK以上」「子どもの部屋は確保できる?」といった視点で選ぶ人は多いのではないでしょうか。「でもなかには、浴室とトイレ以外にはほとんど仕切りがない、という住まいで生活をしている人がいます」と話すのは、リノベーション雑誌『リライフプラス』の編集に携わる君島喜美子さん。

君島さんが最近出合ったのが、そんなユニークな間取りに住む兵庫県の井上さん。中古で購入したマンションをリノベーションをして暮らしています。「家族が3、4人の場合、マンションの床面積は最低でも70〜80平米くらいは必要と言われています。でも、間仕切り壁を取り払い、間取りを固定しない井上さんのお宅のようなプランなら、60平米前後でもひろびろと快適に暮らすことができます」(君島さん)。間取りを固定しないことで62平米を常に最大限に生かす

「自分たちのライフスタイルや価値観に合った家をつくりたい」と、中古マンション購入+リノベーションを決めた井上さん夫妻。依頼した建築家から提案されたのは、大胆にリビングを広くしたプランでした。
「とてもいい感じでした。デザインだけでなく、無垢材の床など素材を大事に考えてくれるところもよかった」と井上さんは言います。


リノベーション前の室内。以前は細かく仕切られた3DKで、光も分断されていました。●広さよりも駅近の立地と価格を優先


選んだ物件は、眺望が開けた南向き。62平米の3DKと、親子3人の暮らしには微妙なサイズでしたが、決断の理由を奥様はこう語ります。「もうひとり子どもが欲しいということもあり、当初は70平米以上がいいなと考えていました。でも、広さよりも駅近の立地と価格を優先。以前も同じような3DKで暮らしていたので、工夫しだいでなんとかなるかなと思いました。広すぎると管理や掃除が大変ですし、子どもが巣立ったあとは夫婦ふたりで住むことを考えると、むしろちょうどいい広さかなって」。


キッチンの収納はオープンに!「見せる収納」がなんともおしゃれ。●引き戸をつけたりはずしたりすることでフレキシブルに間取を変更


・左/今は妻と子どもが使う置き畳の寝室。長辺約1.9mの特注畳は1枚単位で移動して使うこともできます。
・右/リビングはDKや寝室と一体感のある大空間に。ゆったりと使うためソファは置きません。建具をつければ客間にも変身!


・左/下駄箱は棚板のみでオープンに。
・右/玄関横のフリースペース。「外遊びの道具や雨具、冬はコート掛けなどを置く場所として重宝しています」(妻)。

変化に対応できるようにしたいという夫妻の願いに対する答えが、この「固定しない間取り」でした。続き間の座敷をふすまで仕切る日本伝統の様式に、着想を得たそう。引き戸をつけはずしで、大きなワンルームにしたり、必要な個室を設けたりと、フレキシブルにアレンジできるように柱と鴨居を巡らせました。

家族は長い時間をLDKで過ごすため、子ども部屋を想定した2つのスペースは2畳ずつに抑え、現在妻と子どもが寝室として使っている畳スペースは、多目的に使えるよう置き畳を採用しています。「間取りが自由に変えられるのは、住んでいて楽しいですね」と井上さん夫妻。つくりつけの収納兼デスクも可変性に優れ、「必要なものだけに囲まれて暮らしたい」という妻のポリシーと相まって、62平米のスペースが常に隅々までムダなく生かされています。


写真はご主人のベッドスペースです。ちょっとした隠れ家のような雰囲気。

いかがでしたか? 今回紹介したお宅は『リライフプラスvol.26』にも掲載されています。詳しく知りたい人は、こちらもチェックを

●教えてくれた人
【君島喜美子さん】
リノベーション専門誌『リライフプラス』(扶桑社)の編集デスク。リノベーションにまつわる講演なども行う。携わった『リライフプラスvol.26』(扶桑社)が発売中

<リノベーション/すまい研究室一級建築士事務所 撮影/山田耕司 取材・文/ESSE編集部>