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もくじ

前編
ー 5つ星のケイマン、数十年後も特別か
ー 欧州を震撼させた日本の雄、NSX
ー マラネロの新世代の開拓者、F355
ー 最新か伝説か 同じ予算で選ぶなら…
ー 進歩する技術と時を超えるオーラ
ー 初期のデジタルと熟成のアナログ
ー 機械の不備を忘れさせる跳ね馬の官能性

後編
ー 高品質でカリスマ性も備えるフラット6
ー 史上屈指のハンドリングマシン、NSX
ー 繊細にしてリラックスした日本製スーパースポーツ
ー 活気はあるが古典的なF355
ー 先例たちとは異なるバランスが印象的なGT4

高品質でカリスマ性も備えるフラット6

ケイマンGT4の水平対向6気筒は、NSXのエンジンのスムースさと使いやすさ、従順さ、F355の素晴らしいカリスマ性に引けをとらない。私にとっては、第一級のエンジンだ。両ライバルからケイマンに乗り換えて走り出せば、ガソリンを燃やす特別なパートナーと一緒にいるかのようだ。

これまでGT4のライバルとなる、現代のターボチャージャー付きの4気筒や6気筒エンジンも試したが、この感覚はなかった。GT4のレスポンスや出力特性、サウンド、パワーの全てが非常に素晴らしい。ギアチェンジやアクセルの感触はNSXほど直接的ではないが、輝かしいクルマであることに変わりはない。品質も非常に良い。

史上屈指のハンドリングマシン、NSX

NSXの素晴らしいハンドリングについては様々なメディアで耳にしてきた。10人中10人が素晴らしく素直で、操作しやすいと評していた。一方で限界領域でのコントロールは難しいという側面もあった。しかし、現在経験できる中でもっとも優れたハンドリングを持つロードカーの一つであると、私は考えている。

クルマの持つダイナミック性能は、簡単には見えてこない。ミッドシップ・スポーツカーのほとんどがそうであるように、NSXのドライバーも初めて運転する数kmの間は、どこか穏やかな印象に、様々な心配や動揺が交錯するだろう。グリップバランスが優れているため、低速域ではフロントタイヤの挙動を確かめるのが難しい。

NSXと距離を重ねてスピードを徐々に上げ、きついコーナーを抜ける度に、美しく向きを変え、正確に、狙ったライン通りに走らせる感覚を掴めるはずだ。驚くほど簡単に高速域でドライブできる手応えは、簡素なリアスポイラーと共に、クルマからのプレゼントだ。

繊細にしてリラックスした日本製スーパースポーツ

NSXより安定した挙動で正確なハンドリングを持ち、コミュニケーション豊かな中型スポーツカーを見たことがない。グリップもさほど強力ではなく、雑に扱えば若干のアンダーステアが生まれる。しかし重要な問題ではない。完璧な操舵感と繊細なフィードバックのおかげで、フロントタイヤの状況を正確に把握でき、早いペースでワインディングを飛ばせる設定となっているからだ。

緊張感もほとんどない。コーナリング中でのライン変更や修正も不要だ。レスポンスの早さやリア周りのコーナリング時のバランスの高さによって、自信を持ってコーナーに飛び込める。乗り心地もしなやかで、繊細なホイールトラベルと漸進的なダンパーコントロールが、路面を確実に捉えていく。運転席からの視界も驚くほど良い。

活気はあるが古典的なF355

F355のような古典的なミッドシップのクルマへ乗り換えると、これだけNSXをべた褒めする理由もわかるはずだ。生き生きとしたキャラクターを持つフェラーリのハンドリングは賞賛に値する。シャーシからの感覚は活気に溢れるが、スピードや路面コンディションが変化する度に、適切なコントロールが求められる。リスペクトするほど懐の深いNSXとは違い、オールドスクールな振る舞いは初心者には手強いものだろう。

F355のパワーステアリングは軽く、NSXのようにギア比が低くクイックだ。しかしNSXと異なり、中速域のコーナーでは外側のタイヤに荷重が移り始めると同時に、スタビリティが弱くなる傾向がある。コーナーを攻めるとロールも大きくなるだけでなく、ステアリングも一層軽くなり、率直にいって想像以上に不安定だ。

スピードを速めると、V8エンジンの重量がリアホイールをゆっくりとアウト側へ引っ張り安定するのだが、オーバーステアも発生させてしまう。挙動は逐一伝わってくるので、F355を限界付近で走らせるのは楽しいことも事実だ。しかし、想像以上に簡単に、憂慮してしまうほど、限界に達してしまう。

先例たちとは異なるバランスが印象的なGT4

GT4はどうか。20インチの鍛造ホイールとミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2により、NSXとF355の良さを合わせたようなグリップとレスポンスを持っている。ハンドリングは安定志向ではあるが、素晴らしく落ち着いていて調整しろも大きい。非常に許容範囲が大きく信頼できる挙動だが、フェラーリのような生き生きとした印象もある。軽快に踊るようでもあり、ある意味で穏やかでもある。NSXほど特化した例ではないものの、十分に運転が楽しい。

20年後、仮にケイマンがスポーツカーの殿堂入りを果たすとしたら、精巧で際立った適応力と寛容さの、好ましく感じられるバランスの評価によるものだろう。ケイマン以外にそのような印象のクルマはない。しかし、この3台の中で一番輝いていたわけでも、強烈な印象を残したわけでもなかった。

NSXは、われわれが語り継いできた通りの、他に例のない先見性と仕上がりを持ったクルマだった。欧州のミッドシップ・スポーツとはまったく異なる場所において、独創的に、まったく別の尺度と優先度で設計開発され、現在でも見事な完成度を誇っている。このクルマは私でも所有可能で、クルマの所作一つひとつが素晴らしく、永遠に走るために設計された特別なモデルだ。道標ともいえる。伝説でもある。