吉岡里帆が語る、『ごめん、愛してる』凜華役への挑戦 「痛みに敏感な役で、自分自身も弱くなった」

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 本日、最終回を迎える日曜劇場『ごめん、愛してる』(TBS系)。同ドラマは、2004年に韓国KBSテレビで放送された人気同名ドラマを基に、舞台を2017年の日本に置き換えてリメイクしたラブストーリー。母に捨てられ、これまで誰にも愛されてこなかった律が、純粋で愛情深い凜華や、母の愛を一身に受け屈託なく生きるアイドルピアニストのサトル、自分が産んだ律がそばにいることに気づかずサトルを溺愛する麗子からなる、ふたつの三角関係に翻弄される模様を描く。

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 リアルサウンド映画部では、ヒロインである凜華役の吉岡里帆にインタビュー。共演者から刺激を受けたことや、王道ヒロインを演じることへの想い、演技のメソッドを習っていたからこその役作りなど、じっくりと語ってもらった。【インタビューの最後には、チェキプレゼント企画あり】

■「お芝居に対しての意識が私の中で明確に変わった出来事」

ーー共演者から刺激を受けることはありますか。

吉岡:大竹(しのぶ)さんからは特に刺激を受けていますね。台本に対してすごく真摯な方なので。大竹さんは、ただ真面目に役と向き合っているというわけではなく、私なんかじゃ到底気づけないような細部にまで目を配られています。深く研究して、調整していくと言いますか。なぜそこでそのようなセリフを言うのか、こんな状態になっているのかなど、視聴者の方が感情移入しやすいように、背景を明確に築いていきます。一つひとつの言動に対して疑問を持って行くという作業です。この現場に入るまで私は、台本に書いてあることをそのまま忠実に再現することしか頭になかったので、大竹さんのお芝居を作り上げて行くスタイルに衝撃を受けました。時に違和感を感じたり、肯定するために否定的な意見が生まれたりすることもあるんだなと。お芝居に対しての意識が私の中で明確に変わった出来事でしたね。

ーー吉岡さんはこれまで『カルテット』や『ゆとりですがなにか』などで、エキセントリックな役が多かった印象です。今回、王道ヒロインを演じてみていかがでしたか?

吉岡:今までは、突拍子もないようなキャラクターが多かったので、もともとある人物像にさらに肉付けしてきました。その作業が大変でしたね。ですが今回は、自分を押し付けるのではなく、委ねるというお芝居を意識しています。これまで行ってきた4ヶ月の撮影を通して、徐々に気づいていったんですよ。明確なキャラクターではなく、周りに翻弄されていくのがヒロインなのかなと。あと、これまでは強い女、傲慢だったり、自我が強かったり、そういう役柄を演じることが多かったので、今回人の痛みに敏感な役を演じさせていただいて、自分自身も弱くなっていくような感覚を初めて覚えました。台本をいただいた当初は、なんでこんなことで泣くんだろう? と不思議だったんですが、凜華として生きる時間を積み重ねていくうちに、そうだよね、傷つくよねと共感できるようになってきたんです。

ーー吉岡さん自身もヒロインに寄っていくと?

吉岡:うーん……、正直、私自身がヒロインになれたのかと問われると自信は持てないんですけど……。でも今までの役とは全く感覚が違っていますね。きっとこれは、ヒロインが抱えるべき痛みなのかなって。

ーー基となった韓国版のドラマから、役作りに生かしていることはありますか?

吉岡:同ドラマへの出演が決まった際に、「韓国版はあまり意識しないでほしい」と言われていたので、一旦頭の中を空っぽにするように努めました。韓国版でヒロインを演じた役者さんはすごく魅力的で、憧れます。でも、そのまま真似ることはできないですし、たとえ完全にコピーできたとしても、二番煎じになってしまうので日本でリメイクする意味がないと思いました。ただ、もちろん基ドラマに対するリスペクトは忘れていません。テーマが因果応報なので、常に何を伝えたいのかを意識して撮影に挑んでいます。

ーー第7話では、律(長瀬智也)ともサトル(坂口健太郎)ともキスシーンがありましたが、二つのキスシーンを演じる上で、気持ちの作り方に違いはありましたか?

吉岡:サトルと凜華のキスシーンは、サトルが初めて自分の気持ちに気づいて、凜華にアプローチする場面でした。でも、凜華はその時にはすでにサトルへの恋愛感情としての愛が全くなかったので、キスされるなんて思ってもいなかった。だからこそ、驚くと同時に虚無感ですよね。一方で、律とのキスシーンは凜華から想いを伝えるために起こしたアクションです。ただ好きだからではなくて、抑えきれないほど込み上げてくる愛おしさと言いますか。守ってあげたい、自分の力で彼を幸せにしたい、包み込んであげたいという母性のような愛情を持って挑みましたね。

ーー吉岡さんは大学1年生の頃からお芝居のメソッドを学んできたんですよね。

吉岡:メソッドなんて、そんな……全然ですよ。学んでないって言うのも教えてくれた方に失礼ですよね(笑)。私が受けたメソッドは、技術ではなくて感情を磨くということでした。あとは人間味が出るように、プラスの面ではなくマイナスの面を追求して役を演じていくということです。私はどんな人と話していても、その人の良いところよりも悪いところに興味を持ちます。たとえば、人見知りする方に対しては、きっと今一人でいたいと思ってるんだろうけど、頑張ってこの場にいるんだろうなとか、意地悪な方に会ったら、繊細だからこそ、自分自身のことを守ってきたんだろうなとか、そういうことを推測するのが好きなんですよね。その方の裏を返していくと言いますか。それは役柄を作り上げていく上でも大切なのかなと思っていて、表面だけを見せるのではなく、そのキャラクターのバックボーンを紐解いていくことを意識していますね。

■「本当の愛を見つけた人にしか言えない台詞」

ーー今回のヒロインの役でも、学んできたメソッドを活かしていますか?

吉岡:はい、そうですね。凜華はどうしてこんなにも一生懸命になれるのかを考えると同時に、サトルのことを24年間想い続けてたからこそ、好意がなくなった今でも感謝の気持ちは持ち続けているんだろうなって。今回は物語に描かれていない部分で、凜華はどんな時間を過ごしてきたんだろうって、常に想像しながらお芝居をしていましたね。

ーーマイナスな部分を意識しているとのことですが、吉岡さんが思う凜華のマイナスな面とプラスな面を教えてください。

吉岡:マイナスな部分は、奥底に抱えている本当の言葉を伝えられないことと、ちょっと優柔不断なところですかね。9話、10話でまた変わってきてはいるんですが、私は言わないという選択もまた一つの罪だと思うんですよ。どんなに怖くても、相手に対して誠意を持って真実を伝えるというのが、本当の愛情なのかなと。凜華はそこが欠けているんですね。臆病者で素直になりきれない。でも、そんな凜華が律と出会って、溢れる感情をぶつけるようになってきました。プラスな面は、とにかくいい子なんですよね。すごくピュアで、一生懸命。凜華は自分の好きを押し付けるのではなく、彼の余命が近いことを知った上で、ものすごく愛情を持った接し方をしています。律にとって最もベストな在り方、言葉のかけ方をしていて、素晴らしいなと尊敬しますね。私だったらここまで大人にはなれないなと。

ーーでは、なぜ凜華がそこまで愛情深い子に育ったと思いますか?

吉岡:わー、難しい……。凜華の生い立ちってあまり劇中では描かれていないんですよね。だから、想像するしかなくて。凜華は父子家庭で、その分、父親からたっぷり愛情をもらって育ったんですよね。でも、どこか上手くやれなくて、孤独だったと言いますか。母親がいないからこそ、寂しかったり遠慮がちだったりしていたんだと思います。そういう子供時代を過ごしているのかなと。あとはやはり目の前で、父親が麗子さんに対して尽くしている姿を幼少の頃からずっと見てきていることもキーポイントなのかなって思います。サトルへの想いは父を見て影響されてる部分が大きいんじゃないかなと。血は争えないと言いますか。幼少期の日向家との時間が、今の凜華を作っているんですよね。あとは、変に擦れずに真っ直ぐ育ったからなんだと思います。

ーー吉岡さんは、『ごめん、愛してる』のタイトルをとても気に入ってるとのことですが、このタイトルの意味はどう考えていますか?

吉岡:“ごめん”を付けたことで、“愛してる”という言葉がより奥深いものになるというか、底知れない愛のあるものに変わるなという印象を受けました。ラストシーンで、タイトルと同じ「ごめん、愛してる」というセリフが出てくるんですが、1話から10話まで積み重ねてきたからこそ、この言葉はものすごく刺さるんです。だから、本当の愛を見つけた人にしか言えない台詞、言葉なのかなと思っています。

ーーラストシーンで「ごめん、愛してる」というセリフが出てくるということですが、最終回は韓国版のものとは異なる展開に?

吉岡:はい。

ーーそんな最終回の見どころを教えてください。

吉岡:律は、愛されて幸せになれるはずの子どもだったという真相が明かされているんですが、私はそれがすごく切なくて……。でも一方で、律のこれまでの生き様が肯定されています。一見不幸せに見えた律の人生が、実はものすごく幸せだったということが描かれているんですよ。それは、律の温かさや愛の深さといった人間性の素晴らしさが作り上げてきた、麗子(大竹しのぶ)さん、凜華、サトルをはじめ、携わってきた人全員との関係から滲み出ています。そこが見どころですね。

ーーなるほど。では、凜華の見どころは?

吉岡:第1話の冒頭で、凜華が韓国にて、律に想いを馳せるシーンがあったんですが、そこに到達するまでの過程ですかね。1話の時よりも10話での凜華は、遥かに成長しています。そのため、物事に対する見方も変わっているんじゃないかなと。これまで物語を積み上げてきたからこそ、見せられる愛の形があると思うので、そこにも注目していただきたいですね。

(取材・文=戸塚安友奈、写真=宮川翔)