マティス国防長官はトランプ大統領の火消し役なのか(写真:Jonathan Earnst/ロイター)

8月に北朝鮮が2週間ほどミサイル発射・核実験を行わなかった時期がある。これを受けてレックス・ティラーソン米国務長官は、北朝鮮が「自制」を示していると語った。同国に対話の用意があるとの見立てだったのかもしれない。

しかし、北朝鮮はその後、日本の北部上空を通過する形で弾道ミサイルを発射。自制を示していると語るには、確かに早すぎた。

対話と制裁というアプローチは正しい

だが、北朝鮮には米国と対話する用意があるとのティラーソン氏の見方は正しい。ただし核保有国の北朝鮮としてである。北朝鮮の核放棄は6カ国協議の枠組みにおける2005年の共同声明に明記されたが、今、こうした条件に応じる考えがないのは明らかだ。

共同声明では、北朝鮮が核兵器および核開発を放棄する代わりに、残り5カ国(中国、日本、ロシア、韓国、米国)は経済・エネルギー支援を行い、北朝鮮の主権を尊重し、外交正常化を模索するとされた。5カ国は約束を守ったが、北朝鮮は自らの義務を否定し、2009年に6カ国協議から離脱した。

その後、金正恩政権は朝鮮半島の非核化を目的とする6カ国協議の再開に何ら関心を示していない。2012年の改正憲法で、北朝鮮は自国が核保有国だともうたった。

ティラーソン氏が、対話と各種制裁を通じた圧力を指す「二重のアプローチ」に言及したのは正しい。7月の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けて、ティラーソン氏とニッキー・ヘイリー米国連大使は制裁を重視。国連安全保障理事会は北朝鮮に対し過去最大の制裁を決議した。これにより北朝鮮は、経済的生命線となっている中国との貿易の多くを失う可能性がある。

だが、北朝鮮を締め上げるのに、米国は他国に頼ってばかりもいられない。ICBM発射実験が示すように、北朝鮮の米国に対するあからさまな威嚇は、北東アジアにおける米国の軍事プレゼンス縮小を迫るものだ。日韓との同盟関係を見直さざるをえない状況に追い込もうとしている可能性もある。

このような野心的目標は、ロシアや中国の潜在的支援なくしてはありえない。ロシアと中国は、北朝鮮が核開発を凍結する代わりに、米韓合同軍事演習を取りやめるよう提案した。建前上は公平を装いながら、実際には北朝鮮の核開発を阻止する以上に米韓関係を弱体化させる提案だった。北朝鮮問題に国際的な対応を行うことがいかに難しいかを示している。

難局に立たされている同盟国

一方で、同地域における米国の同盟国は難局に立たされている。韓国の新政権は、北朝鮮と対話の道を開きたいと考えているが、こうした融和路線と米韓関係とのバランスをどう取るかでジレンマに陥っている。そして日本は、先日のミサイル発射実験が示すように、米軍基地を抱えていることから危機の最前線となっている。

事態は複雑であり、慎重かつ精緻な外交が求められる。だが、トランプ大統領は気まぐれに場当たり的な声明を繰り返している。ゴルフ場という不適当な場所から思いつきで発せられたのが、例の「炎と怒り」だ。こうした好戦的な雄たけびのインパクトを中和するために、ティラーソン国務長官、ジェームス・マティス国防長官などが火消しに回らなければならなくなっている。

トランプ政権は、北朝鮮問題に対して有効な手段を手にしている。中国との協力、制裁・孤立化を通じた圧力、最先端迎撃ミサイルの供給を含む同盟関係の再確認、そして対話だ。これらの手段に効果を持たせるには、言葉と行動が精緻にかみ合っていなければならない。まさにトランプ政権に欠けている国家運営のスキルだ。

その意味で、北朝鮮問題は核の危機にとどまらない。それはホワイトハウス劣化の危機でもある。