果敢なプレスバックでキム・ボギョンからのボール奪取を試みた喜田だが、ファウルの判定が下された。写真:徳原隆元

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[J1リーグ26節]横浜1-1柏/9月16日(土)/日産スタジアム
 
 その表情は、いつもよりどこか強張っていた。
 
 勝敗に関係なく、試合後の喜田拓也はいつも同じテンションで取材に応じる。必要以上に浮かれず、落ち込まず、冷静に試合を振り返り、言葉を紡ぐ。
 
 しかし、この日は少々違った。怒り、困惑、後悔、懺悔……。どちらかと言えば負の感情が色濃く読み取れたが、少なくとも“勝点2”を取り逃した責任を誰よりも感じている男の表情だった。
 
 横浜の1点リードで迎えた87分。ハモン・ロペスのシュートは山中亮輔が身体を投げ出してブロック。そのこぼれ球を拾ったキム・ボギョンがシュート態勢に入った瞬間、喜田が猛烈なプレスバックでボール奪取を試みる。
 
 喜田のこのディフェンスにキム・ボギョンが倒されると、審判はファウルのジャッジを下し、これで得た直接FKをクリスティアーノが沈める。スコアは1-1となり、そのままドロー決着となった。
 
 記者席からは、喜田が後ろからのタックルでキム・ボギョンを倒したように見えた。ファウルの判定は致し方ないと思った。ただ、実情はどうやら異なるようだ。
 
 喜田の説明によれば、相手の前にしっかり身体を入れて、先にボールにチャレンジできる状況だったという。危ない場面だからといって、ファウル覚悟で背後から相手を倒したわけではないのは、改めてリプレーを見返しても確認できる。
 
「僕のプレースタイル的にも、どんどん当たっていく」というアグレッシブさが喜田の魅力だ。だからこそ「当たり方はもちろん考えている」。ボランチとして、自陣ペナルティエリア付近での不用意なファウルがどれだけ危険かも十分理解しているはず。そんな喜田が、相手に易々と至近距離からのFKを与えるような失態をさらすとは考えにくい。
 
 それでも、判定は覆らない。喜田本人も審判の判定を受け入れて、失点につながってしまった自らのプレーを猛省する。
 
「ファンやサポーターの方々、ベンチも含めて必死に戦ったチームメイト、メンバー外だった仲間たち、スタッフ、一緒に勝利を目指したすべての人に申し訳ない想いです」

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 勝利を掴めなかった要因が、自分のワンプレーにあることを喜田は潔く認める。もっとも、件のシーンでのディフェンスには自信を持っている。
 
「自分としては良いプレスバックだったと思う」
 
 この柏戦で喜田はベンチスタートだった。82分にCFの富樫敬真と代わって途中出場し、確実に試合を終わらせる仕事を完遂しようとした一方、限られたプレータイムでもスタメン奪還のためにアピールが必要だった。
 
 結果的に、このふたつのミッションを果たせたとは言えず、喜田は肩を落とした。明らかなファウルだったなら、まだ諦めがついたかもしれない。しかし、自分は間違ったプレーはしていないという確信がある。
 
 試合後、喜田は「自分のファウルに関して、分からない部分があった」から、審判団に直接、説明を求めたが、これが異議と見なされて警告処分を受けている。「いらないイエローだった」のは承知しているが、納得ができなかったのだろう。
 
 煮えたぎる感情を押し殺すようにして、喜田は言う。
 
「僕らも人生を懸けてやっているんで」
 
 この悔しさを発奮材料にして、さらなる成長を遂げると信じている。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)