数年前、ロジャー・フェデラーに対して、ある記者が「なぜ日本のテニス界には世界で活躍するような選手が出てこないのか」という旨の質問をしました。すると、彼は「何を言っているのだ。日本には国枝慎吾がいるじゃないか」と切り返したそうです。

「車いすダンス」にもその可能性がある。と、魅力を多くの人に届けるべく、奔走する女性がいます。

一度は絶たれた「夢」
車いすダンスに
新たな可能性を見出した。

ダンサー兼振付師として活躍する日系アメリカ人のMarisa Hamamotoさん。幼い頃には、周りの友だちと肌の色や目の形が違うことを理由に、イジメを受けたこともあったそう。それでもダンスを踊っている時だけはネガティブな想いを忘れることができた──。

そんな彼女に悲劇が襲ったのは大学生のとき。レッスン中に突然、首から下に麻痺感覚を覚えたそうです。病院で検査、結果は「脊髄梗塞」という難病。医師からは「再び歩くことは難しいかもしれない」とも告げられました。

大好きなダンスをもう一度踊るためにという一心で、リハビリにも耐えました。その彼女の強い意志が奇跡を呼んだのかもしれません。一度は手足の感覚を失っていたにも関わらず、Marisaさんは2ヵ月後に歩けるまでに回復していたのです。

しかし、いつ再発するか分からないという不安が消えずに、PTSDに苦しむ日々。数年間、スタジオに行くこともできませんでした。

鬱ぎ込む彼女はある日、手を取り合って楽しそうに踊る社交ダンスを目の当たりにしました。それは、Marisaさんの心の奥底に沈んでいた想いに、再び火がつく瞬間だったのでしょう。無我夢中で踊っているうちに、いつしかトラウマは消え去り、2年後には、LAを拠点にするプロダンサーにまで成長していました。

車いすダンスが、
「平等」を教えてくれた。

彼女が「車いすダンス」に出会うのは2014年。知名度があまりないことを知り、その魅力をより多くの人に知ってもらうために、翌年、Infinite Flowを創立。

「健常者と車いすのダンサーがペアで踊るのは非常に強いメッセージが。特に、子どもにとっては障害を持つ人への偏見を無くし、平等を学ぶことができる機会なのです。2本の足だろうと、2つのタイヤであろうと、ダンスは楽しむことができるのです」

周りと違うことを理由にしたイジメ、手足を思うように動かせない病気の両方を経験したMarisaさんだからこそ言えることなのだと、僕は感じずにはいられませんでした。

アメリカから日本へ。そして、
世界でも注目される存在になりたい。

今後の活動について、Marisaさんに質問をしたところ、こう答えてくれました。

「踊りを通して絆を深めるという想いを軸に、社会運動をリードしながらも、Infinite Flowを世界的に有名なダンスカンパニーに育てあげたいですね。日本でも影響力のある存在になれるように」

その先駆けとして彼女が選んだのは日本でした。去る7月13日に慶應義塾大学三田キャンパスで開催されたイベント「#DanceForInclusion」。健常者と障害者の間にある溝をダンスが埋めてくれるようにという願いを込めて。

Licensed material used with permission by Infinite Flow