ブラジル・リオデジャネイロの路上で眠るホームレスの男性(2017年7月21日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

写真拡大

【AFP=時事】人事部門のディレクターとして複数の会社を渡り歩いたビルマール・メンドンサさん(58)は、2015年に職を失い、その後にホームレスとなった。彼は、ブラジル経済危機の犠牲者の一人だ。

 しばらくは貯金で食いつないでいたが、そのうちにサントス・ドゥモン空港(Santos Dumont Airport)の敷地外のベンチで寝泊まりするようになったというメンドンサさん。公衆トイレで身支度を整え、慈善団体の配給食を頼りにしている現状については、「厳しいがこれしかない」と語る。

 人口600万人の大都市リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)には数多くのホームレスがいるが、メンドンサさんもそのうちの一人とはにわかには信じ難い。しゃれた眼鏡にドレスシャツを着て、靴もいいものを履いているからだ。しかし、離婚していて、子どもはいないという彼は、AFPの取材を受けている際中にも、空港のWiFiに接続したモバイルPCで求人情報をチェックしていた。

 リオ市によると、2016年末時点の市内の路上生活者は1万4279人で、これは2013年の3倍だという。

 メンドンサさんは、最大都市サンパウロ(Sao Paulo)で経営管理を学んだ。多数のホームレスと同様、彼は高学歴保持者だ。しかし、そんな彼らの窮状が表しているのは、失業者を1350万人に押し上げ、わずか一年前に夏季五輪を開催したリオ市の名を汚している国内の不況の厳しさだ。

「自分がこんなだと、誰も寄ってこないね」と述べ、同じような境遇の人たちと同様に、彼も自らの不遇について誰にも話していないことを明らかにしたメンドンサさん。これは一時的なものだとまだ希望を持っているのだ。

 日中は、運動をしたり、カフェや書店で読書したりするほか、スーツとネクタイ姿の自分の写真が掲載されたフェイスブック(Facebook)ページの更新などもする。しかし夜になると、軽装に着替え帽子で顔を隠し、空港の外の防犯カメラ近くのベンチに横たわる。これが彼の日常だ。

「フォーカスを切らさないようにするため、今は他人との距離を置くようにしている。他の人と付き合い始めたりすると、アルコールや薬物など、いやなものに関わることがあるから」と話し、また仕事の面接では年下の候補者数百人とポストを競い合う厳しい現実があることも説明した。

■「悲しいし、恥ずかしい…政府のせいで自分は今ここに」

 リオ市内では、特にコパカバーナ(Copacabana)やイパネマ(Ipanema)といった人気の観光地でホームレスの人々を目にすることが多い。

 市内セントロ地区の各通りでは、段ボールや毛布にくるまって睡眠をとるホームレスの姿を毎晩20人ほど確認できる。貧しい環境の出自がほとんどでアフリカ系も目立つ。また薬物依存症を患う人も少なくなく、精神的あるいは家庭関連で何らかの問題があるケースも多い。しかし、元々は路上で飲食物を販売していた露天商や、退職した元公務員など、そのバックグラウンドは様々だ。

 ギウソン・アウベスさん(69)は、X線技師としてリオの市営病院で35年間働いていた。しかし、年金の給付に遅れが生じたことをきっかけに、所持品を売り払うこととなり、借りていた部屋も手放さざるを得なくなった。

 彼がホームレスとなったのは、この取材の2か月前だ。この間に全財産が入っていたバッグを盗まれ、社会福祉課の職員にホームレスの保護施設へと案内された。市には同様のシェルターが64か所あり、合計2200人を収容できる。

 同年代の他の6人と部屋をシェアしているアウベスさんは、「悲しいし、恥ずかしい。長年一生懸命やってきたが、政府のせいで自分は今ここにいる」と現状を嘆いた。

 市の生活保護課で働くテレザ・ベルゲル(Teresa Bergher)さんは、「(リオの)状況は危機的」とAFPに語った。リオデジャネイロには、2014年サッカーW杯(2014 World Cup)と2016年の五輪大会をきっかけに人々が職を求めて押し寄せたのだ。

■経済危機、公共政策の不足

 2007年から2014年の任期中、W杯と五輪準備の双方に携わったセルヒオ・カブラル(Sergio Cabral)元州知事は、数百万ドルを横領した罪で禁錮14年を言い渡された。横領金の一部は回収され、退職公務員15万人の未払い賃金に充てられた。

 それでも、市財政の厳しい状況は好転せず、最も支援を必要としている人への救済は滞ったままとなっている。

 市民オンブズマンの1人は、「リオのホームレスの急増は主に経済危機が原因だが、公共政策の不足も同様に問題」と指摘する。

 このソーシャルサービスの不足分を補っているのが、教会やNGOのボランティアたちだ。彼らは、ホームレスの人たちに朝食を配ったりする通常の活動以外にヨガ教室なども定期的に開催している。
【翻訳編集】AFPBB News