今季移籍した山形で主将を務める本田。この日も球際への強さが際立ち無失点に抑えたものの、判定が曖昧なため、思い切ったボール奪取を自重する場面も。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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[J2 33節] 町田 0-0 山形/9月16日/町田市立陸上競技場  

 ラフプレーで4枚、遅延行為で1枚、さらにベンチからの判定への抗議で1枚、両チームに計6枚のイエローカードが出された。累積警告により、次節はFC町田ゼルビアの井上裕大、モンテディオ山形の菅沼駿哉が出場停止になる。
 
 ただ、町田の相馬直樹監督も大声を出して主審に説明を求めるなど、判定基準が曖昧だった点は否めない。選手たちからもストレスの溜まる試合だったという声が多く聞かれた。
 
 山形の主将・本田拓也は、次のように指摘した。
 
「目の前で、明らかに怪我をさせるようなプレーもあった。もちろん、サッカーに激しさは大切。ただ、一瞬の感情的な熱さが、重大な大怪我になり得る。そのあたりをコントロールしてほしかったです」
 
 判定への不満というよりも、人生をその1プレーに懸けているという覚悟を審判にはより理解してほしいという願いが感じられた。一瞬の感情の昂りがサッカー人生に影響を及ぼす怪我になりかねない──。

 数多くの司令塔やエースと真っ向勝負を挑んできた本田だ。清水時代の右膝じん帯の損傷以外にも、公に発表はされていないが、いくつもの深い傷を負ってきた。「今はもう大丈夫ですが、特に足首のケアには時間をかけて気を付けるようにしています」と、古傷の影響は今も残る。プロ10年目を迎えたファイターの言葉だけに、重みがあると言える。
 
 ボール支配率では山形が町田を上回ったものの、チャンスは限られた。一方、町田も試合終盤にセットプレーから幾度となく決定機を何度か作ったが、ゴールを奪い切ることはできなかった。両チームにとって痛恨のスコアレスドローに終わった。
 
 本田が何よりも悔やんだのが、勝利をサポーターに贈れなかったことだった。
 
「ウチのサポーターのほうがゴール裏を埋めてくれていましたからね。しかし5試合勝ちなしになってしまい……申し訳ないです」
 
 あと一枚、まさに紙一重……歯車が噛み合えば、山形が上昇への速度を上げられそうな雰囲気は漂っていた。プレーオフ圏6位とは勝点7差。あと残すは9試合だ。

 最近は5試合連続ドローと停滞するものの、この町田戦で7戦ぶりに無失点に抑えたことをポジティブに捉えたい。そして本田は熱く黙々と、まず眼前の球際で勝つことのために全身全霊を傾けて身体を張る。山形に勝点3をもたらすために。
 
取材・文:塚越 始