ゴルフのキャディーバッグやウエアのデザインは、世代に応じて工夫する余地がありそうだ(写真:photo_oles / PIXTA)

「MUSA美×PUMA GOLF」というキャディーバッグのデザインのコンペティションが行われた。9月上旬の表彰式をのぞいてみた。美術系大学ではトップクラスの武蔵野美術大の学生が、ゴルフ用のキャディーバッグをデザインしたらどんなものができるか。ゴルフ用品界でトップクラスのPUMA(プーマジャパン)の後援で実現したコンペだという。

武蔵野美大では、以前紹介したように(「ゴルフの凋落を食い止めるカギは教育にあり」)大学での体育授業にゴルフを積極的に取り入れている。また、北徹朗・武蔵野美大身体運動文化准教授が中心とした大学ゴルフ授業研究会では、日本プロゴルフ協会などの団体も含めてゴルフ業界に体育授業の重要さを訴えるとともに、授業に使用する用具の貧弱さ、危険さを訴えてきた。今ではゴルフ用品業界もサポートを行うようになってきている。

美大生がキャディーバッグのデザインを発想

その先駆者的な存在の武蔵野美大で体育のゴルフ授業を受けた学生を対象に、キャディーバッグのデザインを募集した。テーマは「私が使ってみたいキャディーバッグ」で自由な発想によるデザインを募集。120人の体育授業履修者のうち、48人が応募したという。

当初はグランプリ賞に5万円相当のPUMAのゴルフ商品が贈られるなど順位をつける予定だったが、長澤忠徳・同大学長を特別顧問とする審査委員会は「優劣がつけがたい」として、5作品同列の優秀賞の形になり、それぞれに1万5000円分相当となった。

受賞者の専攻もさまざまで、視覚伝達デザイン学科、油絵学科油絵専攻、建築学科、彫刻学科と幅広い。5人全員が大学の授業でゴルフを始めた学生だという。それぞれの専攻の特性を生かした作品に、こちらも「目からうろこ」だった。

モチーフを「若鮎、和菓子」とした皮製のバッグ、PUMAを意識してピューマが大地を走るイメージを青、緑、黄色で表したバッグ、ホログラム素材を用いて太陽の下で光を放つバッグ、懐かしいブロック崩しかインベーダーゲームをモチーフにしたようなドットをイメージしたデザインのバッグと次々にスクリーンに映し出され、学生が説明をするたびにうなってしまった。


武蔵野美大・建築学科1年の学生がデザインしたキャディーバッグは、ゲームの「ドット絵」をイメージしたようなデザインが特徴(筆者撮影)

一番、びっくりしたのが「巻物式キャディーバッグ」。建築学科の学生の作品で「最初に思ったのはバッグの内部の手入れはどうするのだろうということ」で、クラブ1本1本を入れる袋を着脱可能なファスナーでつないで、持ち運ぶときはくるくると丸める。

よく、工事関係者がドライバーやペンチなど工具を1本1本差し込める袋に入れて丸めて持っている、あんな感じだ。実際の使い勝手を考えても、ゴルフ場に行くときは14本、練習場に行くときは6本とか、これは便利そうだ。

ゴルフに使うには、ボールなどクラブ以外にも使うものがあるのでその収納も必要になってくるが、自由な発想、若い発想、しかもデザインなどを専門に勉強している上での発想にかかると、ゴルフのキャディーバッグでもいろいろできそうだ。

もっとデザインで冒険しても良いのでは?

そういえば、ゴルフのキャディーバッグのデザインは、筆者がゴルフを始めた30年ほど前に比べて、色づかいや素材は変わってきている。だが、全体的なデザインや形はほとんど変わっていない。たぶん、もっと前から変わっていないままだろう。

学生のデザインしたキャディーバッグを実際に製品化するとなると、価格などの問題も出てくるが、それでも「自分が持つなら、もっとおしゃれなキャディーバッグを使いたい」という若者たちの声が聞こえてきそうだ。

コンペを講演したプーマジャパンの土田祐三ゴルフ事業部長は「体育からゴルフに入ってくる学生に対して、プーマができることはないかということでコンペを実施した。どういうものを使いたいか、ゴルフ受講生ならではの発想を期待した」と説明。「ゴルフには車が必要だということや、あるいはウエアのデザインなどに対して、若い人がハードルを感じることがある。ゴルフ人口が減っていく中で、社会文化的に取り組んでいかないと、若い世代の参入につながらない」とも話した。

ちなみに、作品の著作権は学生にあるが、主催者の利用は許諾するとしている。製品化を目的にしたコンペではないが「今すぐ製品化したい」(土田氏)という作品もあるという。

日本生産性本部が発表した2017年の「レジャー白書」で、2016年のゴルフ人口は前年から210万人減の550万人になったというゴルフ界にとっては衝撃的な数字が公表されたばかり。ゴルフ人口減少に歯止めをかけるために、「若い世代」にゴルフを始めてもらう工夫をしていかなければならない。そんなゴルフ界にとっては、選択とはいえ大学の体育授業でゴルフを始めてもらうのはありがたいことだ。そして、続けてもらうことも大事になる。

受賞した学生たちは、実際にゴルフ授業を受けた感想として「ゴルフは楽しい」「続けていきたい」と話していた。

20代、30代がゴルフをしない理由として「ウエアがダサい」「おじさんのスポーツ」など、見た目のイメージもよく挙げられる。

バッグ以外でも、デザインを工夫する余地は大きい

女性のウエアなどは従来のゴルフ用品メーカー以外にもブランドがでてきて、少し前よりはずっと華やかになってはいる。だが、キャディーバッグや帽子、グローブ、シューズなどはまだまだ「伝統的な」デザインのままだと感じられるだろう。

表彰式に出席した長澤忠徳学長は「これまでの産学協力によるこうしたコンペは、たいていは特定の学部、学科(からの参加)になってしまうが、今回は体育授業の履修者が受けたのでいろいろな学部、学科の学生が参加し、新しい切り口になった。アイデア、オリジナリティーといった美大生の頭の中を見てくれるコンペだったと思う。これが産学(連携)の在り方。これでゴルフが好きになるかもしれない」と話していた。

武蔵野美大では2013〜15年で41の産官学のプロジェクトを実施してきたが、ゴルフに特化した企画は今回が初めてだった。

これまで、ゴルフでの大学との共同研究と言えば、スイングの解析とか、クラブの解析といったものは聞いたことがあった。クラブの形はなかなか変えられないだろうが、そのほかのゴルフ用品なら、デザインという領域で大学だけではなく専門学校なども含めて「若い人の発想力」を発揮してもらえる可能性がある。

「見た目の格好良さ」もゴルフを始める上で、大事な要素になるだろう。