9月15日、民進党に離党届を提出し囲み取材に応じる笠浩史衆院議員(右)と後藤祐一衆院議員(写真:日刊現代/アフロ)

国会議員の相次ぐ離党により、ますます力を失いつつある民進党。あまりにも弱い野党第一党の状況を受け、加計学園問題などにより一時は支持率を落としていた安倍政権は急激に勢いを取り戻している。「臨時国会冒頭解散」によって足元を固めようとの説も飛び出すほどだ。

今、民進党では「瓦解」としか表現のしようがない事態が進んでいる。笠浩史衆議院議員と後藤祐一衆議院議員が9月15日、民進党本部に離党届を出した。自らの不倫疑惑で党を離れた山尾志桜里衆議院議員を除けば、13日に離党届を出した鈴木義弘衆議院議員とともに、3人が離党することになる。いずれも8月に離党した細野豪志元環境相が率いた派閥「自誓会」のメンバーだ。

笠氏にしても後藤氏にしても、細野氏が離党した8月の時点で行動を共にするとみられていた面々。今回の離党劇は意外ではない。笠氏は9月1日に行われた代表選を前にして「代表選の前に離党する」と宣言して憚らなかった。

「国民の信頼を取り戻すことは不可能」

15日午後に会見したのは後藤氏だった。

「2006年の補選では、本当にお世話になった」。11年間在籍した民進党(民主党)に感謝を述べつつも、後藤氏は離党の理由が「国民の信頼を取り戻すことは不可能で、民進党では政権の受け皿にならない」ことを明らかにした。9月10日に民進党神奈川県連会長を辞任したのも、「離党のためにけじめを付けた」と述べている。

背景には遠くない将来に行われるであろう衆議院選挙の事情が見えてくる。

後藤氏の地元である神奈川16区は、厚木市や伊勢原市などを含む神奈川県の北西部に位置する。もともと保守色が濃く、自民党が強い地盤だ。

民主党(当時)が大勝した2009年の衆院選を除くと、後藤氏は2012年の衆院選で参議院から鞍替えした義家弘介前文科副大臣に8077票及ばずに落選・比例復活。2014年の衆院選では1489票差で辛勝。過去2度の選挙では優劣はつけがたいが、支持率がじり貧の民進党では次期衆院選はかなり厳しくなる。

神奈川9区も民進党公認で勝つのは厳しい

笠氏も事情は同じ。2003年の衆院選で初当選したが、選挙区の神奈川9区はもともと松沢成文参議院議員の地元。松沢氏が神奈川県知事選に転出したことにより、笠氏が民主党(当時)の公認候補として神奈川9区から出馬したという経緯がある。

笠氏は2005年の郵政民営化選挙では小選挙区で落選・比例復活したものの、2009年、2012年、2014年の衆院選では連続して当選を果たしている。しかしながら笠氏の得票数は、12万7219票、6万7448票、6万4534票と減少しており、2014年の衆議院選では自民党の中山展宏衆議院議員に4543票差まで迫られた。

さらに追い打ちは、松沢氏に衆議院復帰の意向があるとみられること。松沢氏は“小池新党”への参加を模索しており、8月25日には小池百合子東京都知事に近い若狭勝衆議院議員と接触している。もし松沢氏が“小池新党”に参加して次期衆議院選に出馬すれば、笠氏にはかなり不利になる。小池知事と連携する細野氏と合流することは、それを阻止する意味もあるのだろう。

カギを握るのは、“小池新党”である。いったいどうなるのか。

「国政は若狭に任せている」。若狭氏が“日本ファーストの会”を発足させた時、小池知事はそう述べた。言葉通りに受け取るなら、「私は国政には口を出さない」と読みとれる。

しかし実際は、小池知事が顔を出さざるをえないようだ。その一例が9月11日の小池知事、細野氏、若狭氏の3者会談だ。報道では「若狭氏が呼びかけて実現した」とされるが、こんな話も聞こえてくる。「実際には小池知事と細野氏が2者会談するはずだった。それに若狭氏が後で加わった」。

いったいどちらが正しいのか。小池氏の動向に詳しい都政担当記者に尋ねてみたところ、「どちらも同じ。結局は細野氏と若狭氏だけではダメで、小池知事が出てこないと始まらないということだ」とのことだった。

細野氏は、自分が中心となるべく“新党”の気勢を上げようと必死だ。

12日午後には民進党の大島敦幹事長に慰留された鈴木氏の事務所を訪れている。この時の様子をテレビカメラに撮影させているのは、大島氏に離党を通告できなかった鈴木氏を後押しするとともに、新党の動きへのアピールをするためだと思われる。

さらに13日に行われた鈴木氏の離党会見では、終わる頃を見計らったように、細野氏が現れた。そして鈴木氏とがっちり握手して、カメラに収まっている。

笠氏、後藤氏に鈴木氏が加わると、すでに連携を確認している細野氏と若狭氏とともに現職国会議員は5人になる。「5人集まれば立ちあげる」との若狭氏の言葉通りなら、すぐさま結党する方向だ。

「臨時国会冒頭解散説」

そんな折、13日にいきなり永田町に「臨時国会冒頭解散説」が走った。自民党が行った世論調査によれば、いま衆院選を行えば自民党は3分の2を維持できるというのだ。それに合わせてなのか、政府与党は15日に「28日召集」を決定して野党に打診した。間もなく始まる臨時国会はおそらく、次期衆院選を前にした政局の最大の山場となるだろう。

民進党は3人の離党の他、幹事長に抜擢されそこなった山尾志桜里衆議院議員の離党など、まさに泣きっ面に蜂の状態である。ただし、離党ドミノの候補者だった岸本周平衆議院議員と福島伸享衆議院議員については、当面は離党することはないようだ。その理由は彼らが主張しているのが「解党」だから。自分たちが離党してしまえば、解党は実現しない。

民進党に残った人たちも、その多くは「これで収まった」とは思っていない。複数の議員が「そのうちに党を出る。ただタイミングを見ているだけ」と異口同音に打ち明ける。ある議員は「『民進党』ではダメ。最低限でも名前を変えなくては」と言う。

表面的にはドミノ離党騒動は収まったかのように見えるものの、獅子身中の虫が死んでいるわけではいないのだ。間近に迫ってきた選挙を見据え、民進党の瓦解は止めようがないといえるだろう。