JR北海道の「わがまちご当地入場券」が売上好調!しかし、実際に足を運んでみると課題が見えてくる。写真は2位が北海道新幹線の終着駅である新函館北斗駅の「わがまちご当地入場券」。

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赤字路線を抱えるJR北海道が企画、101種の発売が決定

大幅な赤字路線を抱え、不振に喘ぐJR北海道が、何とか鉄道利用者を増やし、沿線を盛り上げようと企画し、7月20日に発売を開始した「わがまちご当地入場券」。
 

JR北海道が道内の沿線自治体に企画への参加を募ったところ100の市町村すべての協力を得られることになった。これに、北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅のある青森県今別町を加え、101の市町村が参加し、各自治体にある駅を一つ選んで101種類の入場券を発売することが決まった。もっとも、準備の都合もあり、すべての入場券を一斉に販売することは叶わず、まずは81駅で販売を開始した。

ふたを開けてみると、夏休みで観光客が道内各地に繰り出したこともあり、予想外の売れ行きで、新聞報道によると8月末までに11万枚近くの売り上げがあったという。関係者は、さぞかし喜んでいることであろう。
 

予想外の売れ行きで8月末には11万枚。売上3位は意外な駅


私も、先日、道内を4日ほど鉄道で旅したとき、駅構内に貼られていた「わがまちご当地入場券」発売中のポスターに目が留まり、いくつかの駅で購入してみた。いずれも、表がそれぞれの駅付近を走る列車の写真、裏が駅周辺の観光地や風景、名産品の写真で構成されていて秀逸なデザインのものばかりだった。1枚170円という値段も手ごろなので、訪問記念品として気軽に購入でき、人気なのも頷ける。
 
報道によると、売上の1位は断トツで札幌駅、2位が北海道新幹線の終着駅である新函館北斗駅、3位が何と札沼線の終点となる新十津川だった。
 

新十津川駅は行き止まりの終着駅で、現在、列車は1日に1本しか発着していない。午前9時28分に始発でかつ終列車でもある列車が到着し、9時40分に折り返していくと次の日まで列車の発着はない。しかも無人駅である。近い将来、廃線の可能性が高いことから今のうちに訪問しておきたいという鉄道ファンが殺到したため販売数が伸びたものと思われる。

無人駅では買えない?本末転倒な事態が発生する場合も…

新十津川駅のような無人駅では、当然駅員がいないので、駅周辺のお店や道の駅、公共施設などに販売を委託している。どこで販売しているかは、JR北海道の特設サイトに出ているので、それを参考にすればよいのだが、場所によっては駅から歩いて行ける距離になかったり、販売時間が限られていたりと買いに行くには困難を伴うこともままあるようだ。
 
SNSや個人のブログを検索してみると、ご当地入場券を集めるため、列車ではなくクルマで回っているとの書き込みも少なからずある。これでは、鉄道利用者を増やすという本来の趣旨から外れることになろう。もっとも、クルマ利用でも入場券が売れればJR北海道にとっては増収になるのであろうから、こうした状況には目をつむっているのかもしれない。
 

地域振興のためとはいえ…「柔軟な販売」は必要

また、駅の窓口で売っていても、列車本数の少なさが災いし、気楽に途中下車できない状況の駅もある。地域振興のため、ご当地に行かなければ買えないというルールを設けていて、ネット注文や郵送による申し込みは一切認めていない。それはそれで理にかなったことではあるが、あまりにも不便な駅については、列車内での販売など柔軟に考えてもいいのではないだろうか?
 
今回の旅を通じても、車内や駅での対応を見ていると、JR北海道が、やや硬直化した組織であるとの印象をぬぐえなかった。人手不足など困難な状況には同情すべき点も多々あるが、改善すべき点もあるし、一部の例外的な事例だと思いたいが、危機感が希薄な官僚的な雰囲気を漂わせる社員もいるような気がしてならない。
 

人気上昇に満足せず、泥臭い仕事ぶりが信頼回復につながる


ご当地入場券の人気上昇は結構な話ではあるが、これで満足することなく、さらに貪欲に商売をしてはどうだろう? ワンマン列車の運転士に、これ以上の任務を負わせるのは酷であるとしたら、社長はじめ役員が率先してローカル列車に乗り込んで入場券を販売したり、無人駅のホームに立って入場券を販売したりするくらいの熱意、切羽詰まったなりふり構わぬ姿勢を見せる必要があるのではないだろうか? 
廃線問題に関して、地元との交渉が難航している現状を見るにつけ、幹部が自ら、ローカル線の駅などに足を運び、実態をつぶさに視察するついでに入場券を立ちながら販売するくらいの、ある意味泥臭い仕事ぶりが、ひいては地域の信頼を回復する一歩となるのではと愚考する。
 

ともあれご当地入場券は魅力的。鉄道旅の楽しみのひとつに


売り切れれば増刷するというご当地入場券ともあれ、魅力的なご当地入場券は、発売期限もなく、売り切れれば増刷するとのことなので、次回渡道したおりには別の駅のものを買い求めたいと思う。皆さんも北海道に行く機会があれば、ぜひ最寄りの駅で鉄道と地域の応援がてらカンパのつもりで一枚買ってはどうだろうか。景品や入場券提示による地元特産品の割引などの特典もあるので、それも旅の楽しみとなるであろう。
 
(文:野田 隆)