「もう相手はバテていたんで、仕留められたと思いますけどね。僕もチャンスがあったし」

 UEFAヨーロッパリーグ(EL)のグループリーグ第1戦。原口元気が所属するヘルタ・ベルリンは、ホームにアスレチック・ビルバオを迎え、0-0で引き分けた。前半はビルバオが、後半はまったく別の試合になったかのようにヘルタが圧倒的にゲームを支配しながら、お互いにチャンスを活かし切れずスコアレスドローに終わった。


ビルバオ戦で85分から途中出場した原口

 原口が残した冒頭のコメントでも分かるように、試合全体の流れを考えれば「勝てた試合だったのに」との思いがより強かったのはヘルタのほうだろう。原口が続ける。

「前半は相手がうまくやっていたと思うけど、後半は(ビルバオの選手が)やたらバテていたというか、ホントに違うチームのようになったんで、チャンスはたくさんあったんですけどね。流れ的にはそう(後半に勝負を決められた)でしたね、今日の試合は」

 とはいえ、試合中の原口がチームの勝利だけに集中していたとしても、試合が終わった後の、彼のこの試合における最大の関心事は、おそらく結果ではなかったはずだ。

 ドイツ・ブンデスリーガが開幕し、すでに3節が終了したが、原口はそのすべてでベンチスタート。うち2試合に途中出場したにすぎない。

 だからこそ、リーグ戦の合間に行われるELは、出番の少ない背番号24にとって試合出場の絶好機だったのだ。実際、試合前日にはヘルタのパル・ダルダイ監督も、週末のリーグ戦からのメンバー入れ替えを示唆していた。

 やっと自分にも出番がやってくる――。原口は苦笑まじりに「そう思っていましたけどね」と語る。

 ところが、確かに先発メンバーのうち5人が入れ替えられたものの、そのなかに”GENKI HARAGUCHI”の名前はなかった。

「僕が今日与えられたのは5分、10分なんで。そこでやるしかなかったですけどね」

 原口は乾いた笑いを浮かべ、発する言葉も途切れがち。受けたショックが決して小さくはないことを物語っていた。

「今日は相当(自分に出番が巡ってくる)チャンスゲームだった、と。ブンデス(リーグ戦)では、ああいう交代の仕方(先発メンバーを大きく入れ替えること)はしないので。まあでも、(試合は)続くからね」

 原口が力なくつぶやく。

「よく分かんないですね、オレも」

 原口がダルダイ監督から事実上の戦力外と見なされているとの現地報道は、今季開幕前からあった。原口自身、「プレシーズンは全然試合に出させてもらえていなかった」と認める。

 原口が他クラブ(イングランド・プレミアリーグが有力と見られていた)への移籍を希望し、ヘルタとの契約延長がなかなか決まらなかったことがその理由だと言われているが、もちろん、真相は定かではない。

 いずれにしても、原口への”冷遇”がシーズン開幕後も続いていることは、限られた出場機会を見れば明らかだ。この試合でも、原口に出場機会が巡ってきたのは、後半の残り時間もわずかという85分のことである。

 FWサロモン・カルーとの交代で4-2-3-1の1トップに入った原口に与えられた出場時間は、ロスタイムも含めて10分弱。それにもかかわらず、あわや決勝ゴールかというシーンも作っている。

 GKからのロングボールをFWマシュー・レッキーがヘディングで落としたところに走り込み、ボールを拾った原口は果敢にペナルティエリア内へ進入。左足で放ったシュートは、際どくDFにブロックされたが、見せ場は作った。

「レッキーが(ヘディングの競り合いに)勝つと思っていたんで、うまく抜け出せましたけど、決め切れなかったんで、そこが……。1本決め切る力があれば、いろいろ(自分を取り巻く状況が)変わってくるなとは思いますけど。でも、現状1本しかないので……時間が……」

 わずかな出場時間であろうとも、そこで結果を出せないもどかしさと、そもそもわずかな時間しか与えられないもどかしさ。原口は複雑に入り混じる感情に戸惑うように、引きつった笑いを浮かべた。

 それでも原口は「受け入れがたいですけどね、正直。見ていて歯がゆいし、オレならもっと(やれる)って思っているし」と、ひとまず本心を吐露すると、意を決したように語った。

「でも、そういう評価なら変えていくしかないので。中途半端にずっと出ているよりは、(自分の力で監督を見返さなければならない状況に)逆にやりがいを感じている」

 もちろん、自らがアジア最終予選を戦い、出場権を手にしたロシアW杯への想いも、原口の決意を後押ししている。

「これがワールドカップ前じゃなくてよかったなというか。今でよかった。これから十分に取り返す時間はあるので。普通にやれば取り返せると思っているし。まず1試合、スタメンで出たいですね。そこでだいぶ変わるとは思うんで」

 実のところ、先のアジア最終予選(オーストラリア戦、サウジアラビア戦)で日本代表に招集されるにあたっては、プレシーズンも含めて試合出場の機会が少なかったことで、「ちょっと不安はあったんです」と原口。だが、「代表でも動けていたし、代表戦に出られたのはよかった」。

 図らずも代表戦でコンディションのよさを確認し、多少なりとも自信を取り戻した原口は、きっぱりと言い切る。

「今はメンタル的にもフィジカル的にも準備はできていると思うんで、(出場機会が)来ればやれるとは思っています」

 淡々とそう話す言葉の途中、「来れば」のところだけ語気を強めたあたりに、原口の切なる想いがうかがえた。

「遅かれ早かれ、チャンスは来るんで」

 強まる渇望を抑えながら、原口はベルリンで今、雌伏の時を過ごしている。

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