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もくじ

ー 実力派ホットハッチ、直接対決
ー 公道でもサーキットでも。万能のゴルフR
ー 後輪駆動を思わせるワイルドなフォーカスRS
ー 重視するのはパフォーマンスか、それとも…

実力派ホットハッチ、直接対決

ここ数年、優等生のフォルクスワーゲン・ゴルフRとやんちゃなフォード・フォーカスRSは、このテストのファイナリスト候補にほぼ間違いなく名が挙げられるクルマとみなされてきた。たとえ相手がプレミアム・ブランドでも、1回戦の勝率は5割程度と、対等な戦いを見せている。

なぜか。それはどちらのクルマも、非常に高い名声を保ち続けるだけの素晴らしい仕事ぶりを見せるからだ。フォルクスワーゲンは軽い改良を加え、ついに最高出力が300psを超えた。一方、フォードは社外チューナーとコラボしたマウンチューンのノウハウを活かし、375psのFPM375仕様を設定した。

どちらも£35,000(528万円)以下の4WD車という同じカテゴリーで、この2年ほどの間、しばしば同じタイミングでバリエーションが投入されてきた。しかし、それを大きく変えられないというのが実際のところだが。大きく異なるのは、それぞれの血統だ。ゴルフRは遠慮なく豪華でソフトなタッチに仕上げられているが、そこには多用途性や洗練性を求めるゴルフらしさが根底にあるからだ。対するフォーカスRSは、後輪駆動車のようなドリフトを手軽に楽しめるが、フォードはブルーカラー向けメーカーの筆頭的存在で、愚かなまでにこれ見よがしのドライビングポジションと、ベースモデルのトリムや装備を変えようとしていない。

公道でもサーキットでも。万能のゴルフR

以前、ゴルフRはこの2台の比較テストで勝利を収めているが、その理由は、いうなればより完成度が高いからだった。今回のフォーカスRSは、その時ついていた£899(14万円)のチューニング・パーツ群であるマウンチューン・キットが備わらない点が異なる。

最新のゴルフRは、日々の運転を楽しめるだけでなく、残りの人生を穏やかな満足の中で過ごさせてくれるクルマだと再確認するのに、スランドウ周辺のB級道路で10分と運転する必要はない。オプションだが必須といえるアダプティブ・ダンパーを装着すれば、しなやかな乗り心地やこの上なく素直なパワーデリバリー、トレードマークともいえる精確さで、ほとんどのライバル以上に目を引く存在となる。例外があるとすれば、時としていら立つほどに鋭く粒の粗い運動性と、ご機嫌なサウンドの持ち主であるこのフォードくらいだ。

ウェールズの路上を離れ、ピットレーンに入るとしかし、評価の変わりようはこれまでにないほど衝撃的。疑いの余地なく、ゴルフRの公道寄りのセッティングが、サーキットでのハンドリングを台無しにしていないのは、フォルクスワーゲンの凄いところだ。路面の荒れがないサーキットくらいでしか出番のないレースモードを選んだのと同時に、その能力は万能なまでのメカニカルグリップの限界近くにまで引き出される。公道上ではその片鱗しかうかがえなかった4モーションの際立つニュートラルさが、このスランドウ・サーキットでは即座に前面へと顔を出し、フロント主導のスタビリティ志向でありながら、コーナリング中に走行ラインをスロットルオフで調整する機会をいたずらに阻害するものではない。

7段DCTのDSGギアボックスを採用したおかげで、0-100km/h加速は4.6秒をマーク。それは、Rモデルの妙を感じさせる。

後輪駆動を思わせるワイルドなフォーカスRS

しかしまもなく、フォードがフォーカスRSをチューニングし、練習曲を協奏曲へ昇華させるが如く、本格ホットハッチへ仕立てたことを思い知らされる。ドリフトモードというネーミングには事実と乖離したものを感じるが、それでもこのクルマのリアアクスルは熱狂的なまでに勇ましい。5ドア・ハッチバックでは、後輪駆動でもなければ見られないものだ。

FPM375のパワーが、テールスライドを引き起こすほどアップしたといっては大げさだが、ブローオフバルブの助けもあって2000rpmから使える52.0kg-mものトルクと、たまらないほどに高められた旋回の熟練ぶりがそれに寄与していることは疑う余地がない。

もちろん高められたエンジン出力が、ゴルフよりまるまる1秒早いラップタイムを可能にしたのは事実だが、まさに危険な獣と格闘しているような感覚もそこにはある。それこそ、この2台のサーキットにおける最たる違いだ。

重視するのはパフォーマンスか、それとも…

そして結局われわれは、いつもの議論に行きつく。理想のホットハッチは荒っぽい、テールを振り回せるブルーカラーのカルト的ヒーローか、型通りの速さとうまくまとめられた快適性を備えた万人受けする優等生か。

サーキットを走った限りでは、あるいはこれがラリーコースだったとしても、ゴルフはフォーカスのミラーにやっと映るくらいに引き離される。しかし、もっと現実的なウェールズの公道での走りも踏まえれば、やはりゴルフの優位は動かない。