都内の書店ではケント・ギルバート氏のコーナーが。外国人、特に白人欧米人に物言われると弱い日本人の習性が露わに!?

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 今、書店をのぞけば、「世界情勢」や「東アジア」といったコーナーや、ベストセラーのコーナーを埋め尽くす本がある。異様に長いタイトル、帯文が特徴の「ヘイト本」だ。一時は沈静化したが、再び隆盛の兆しを見せている。

◆異例のヒットを飛ばす嫌韓中本の現状

 書店の棚に異変が起きている。韓国や中国への露骨な嫌悪感をベースとした書籍群が、売れ筋コーナーに大量に並んでいるのだ。

 取材班が都内各地の大型書店で売り場担当者に聞いてみたところ、一番人気はケント・ギルバート氏。今年2月発売の『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)は40万部を突破した模様だ。これに次ぐのが、右派論壇の重鎮・百田尚樹氏の著作群。朝日新聞の全5段広告で土下座を披露して話題になった『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社)は、一部店舗ではケント氏を上回る数字を叩き出す。

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 書店員たちは、「購買層は40代以上の中高年男性。ジャンル全体として売れ行きはいいが、書かれている内容は、どの本もほぼ同じで、反日的な韓国に対するテンプレート化した反論が中心。書店員の良心としては早く出版社に返品したい」と本音を漏らす。

 一方、出版業界内においてもこうした民族差別や排外主義を煽る本を「ヘイト本」と呼び、問題視する声もある。’14年に出版業界による自浄を訴える団体を立ち上げた編集者の岩下結氏は嘆く。

「顕著にヘイト本が書店に並ぶようになったのは’12年。’13年から’14年にかけての時期には、書店の棚がヘイト本で占拠されていました。その後、’15年になるとヘイト行為に世間の風当たりが強まり、’16年6月にはヘイトスピーチ解消法が施行されました。これで一時ヘイト本の出版には様子見の動きが広まりましたが、今年に入ってからまた急に増えています」

 岩下氏が危機感を持って反ヘイト活動に参戦した’13〜’14年を第1次ヘイト本ブームとするならば、現在は第2次ブームと呼ぶことができそうだ。しかも今回のブームではついにヘイトの対象が自国民にまで広がっており、事態は悪化の様相を見せている。

「『沖縄を本当に愛してくれるのなら県民にエサを与えないでください』(ビジネス社)は許せません。同じ日本人である県民に対して『エサをやるな』という言い方は凄まじい。韓国や中国へのヘイト本を作っているうちに、言葉の感覚が麻痺したんでしょう」(岩下氏)

 かくも攻撃的なヘイト言論の根はどこにあるのか。右派論壇誌が新聞広告で使う文言の変遷を研究している能川元一氏に聞いた。

「伝統的に日本の右派は、反共の同盟意識から親韓であり、一方的なヘイトはしませんでした。『諸君!』の’95年5月号の読売新聞広告では、韓国を蔑視する右派文化人への批判記事が強調されています。昨今の広告のように韓国の非ばかりを一方的に意識させる文言ではない点が大きく違います」

 この状況が変わった大きな転換点は、’96年に慰安婦問題が中学校の全教科書に載ると明らかになったことだと能川氏は指摘する。

「危機感を持った右派は’97年に『新しい歴史教科書をつくる会』や日本会議を設立。彼らは『反日包囲網が敷かれている』という被害者意識を募らせていきました。’97年2月の『諸君!』の朝日新聞広告には、米中韓が一体となり日本の戦争犯罪を追及する事態への警鐘を鳴らす記事が見られます」

 慰安婦や南京大虐殺などの歴史認識問題において、日本の右派は「自分たちは犯罪をでっちあげられて責められている」と考える。そうした被害者意識ゆえの攻撃性が、使う言葉に表れるのだろう。

【岩下 結氏】
「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」事務局。書籍『NOヘイト! 出版の製造者責任を考える』の発刊に携わる

【能川元一氏】
研究者。右派論壇誌などを研究対象としている。共著に『海を渡る「慰安婦」問題』(岩波書店)、『憎悪の広告』(合同出版)など

― なぜ[ヘイト本]は売れ続けるのか? ―