創造力に欠ける現在のドルトムントにおいて、香川は変化やアクセントを与えられる存在だと言えよう。右はダフード。 (C) Getty Images

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 ブンデスリーガ第3節のフライブルク戦、ドルトムントはスコアレスドローに終わった。前半途中に退場者を出した相手に対し、1時間以上も数的有利な状況で攻め続けながら、最後まで相手の守備を崩すことができなかった。

 この日、出場のなかった香川真司は、次のように分析している。
 
「チームとして、攻撃のかたちを作るのがなかなかうまくいっていないのかな、と。この1試合に限らず、3試合を見ても、もっとアイデアを増やし、攻撃の質を高めていかないと。攻撃のバリエーションがなかったのかなと思います」
 
 香川の言葉通り、フライブルクの全選手が自陣深くに戻って築いた壁の前で、ドルトムントはただボールを回すばかりだった。
 
 クリスティアン・プリシッチの突破力、ピエール=エメリク・オーバメヤンの得点力、そして新加入アンドリー・ヤルモレンコの破壊力と、前線に武器は揃っている。では、その武器をどのように活かすのか。
 
 気になるのは、ボールを自陣からどのように運ぶのか、というのがあまり整理されていない点だ。ここまでCBでプレーするソクラティス・パパスタソプーロスも、マルク・バルトラも、エメル・トプラクも、ボールを持ったまま出しどころを探しては結局、横パスかバックパスという場面が散見される。
 
 ビルドアップからボールを前線に運ぶのは、攻撃の大事な第一歩。そのためには、相手にボールを持たされるのではなく、自分たちから意図的に持てる状況を作ることが理想だ。
 
 つまり、彼らDFがボールを持った時に前の選手が呼応して動き出し、狙い通りにボールを呼び込み、そこから一気にチャンスを作り出せるようなイメージの共有ができていることが望ましい。
 
 チャンピオンズ・リーグのトッテナム戦の前半では、比較的うまくボールを運べたように見えた。これはこの日、中盤でスタメン起用された香川やマフムード・ダフートが中盤の深い位置まで下がって、そこから運び出していたおかげでもある。
 
 ただ、これだとボールを前線に運べても、本来、前線に顔を出すべき2人がいないわけだから、そこから先に持ち込むのが難しくなる。この辺りは、今後への課題として取り組まれていくことだろう。
 
 トッテナム戦でも、後ろからうまくボールを運べている時間帯では、相手守備間のスペースでボールを受けた香川からのパスで、何度か好チャンスを作り出せていた。DF陣だけでボールをそこまで運ぶ頻度が増えてくれば、おのずと攻撃の歯車はよりスムーズに回るはずだ。
 守備でも、改善が求められる。ペテル・ボシュ監督が志向するハイプレス・ハイスピードのコンセプトについて、選手は頭では分かっていても、まだ自分たちのものにはしていない。人数をかけてボールを奪いに行きながら、あっさりといなされてそのまま相手にカウンターを許す場面が多い。
 
 この点に関して、トッテナム戦でテレビ解説していた元ドイツ代表GKのオリバー・カーンが「1試合でファウルがわずかに6!? このレベルで戦うには、競り合いにおける激しさが足らない」とピシャリ……。
 
 もちろん、新しい戦い方がすぐに浸透することはなく、まだ時間が必要なのは言うまでもない。それでも「奪い切る」ための決断に迷いが生じたり、決断したはずが、思い切りが足らずに中途半端なプレスになったりという点は、早めに改善されなければならない。
 
 チームの安定感は、香川のパフォーマンスにも大きな影響を与える。狙いを持ってボールを回し、それぞれがチームのなかでやるべき役割を把握している時にこそ、攻撃バリエーションにアクセントを加え、プレーリズムに変化をもたらす香川の持ち味が、最大限に発揮されるからだ。
 
 とはいえ、まだまだ基盤作りの段階。ここから細部を修正しながら、チームのあり方が築き上げられていくことだろう。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。