目標とする東京五輪で、あの歓喜をまた味わえるか。(C)Getty Images

写真拡大 (全2枚)

岩政大樹 熊谷選手はヨーロッパのスタンダードや世界で戦うための術を知っていますが、なでしこジャパンの若手は知りません。他の選手にとっては良い”気づき”になるでしょうね。
 
熊谷紗希 1対1の練習をしていても、「ここで足が出てくる感覚はない」とか言われます。それは自分だからできることなので、積極的に自分のプレーを出しています。
 
岩政 ちょうど熊谷選手からも出ましたが、私も今後のキャリアで「自分だからできること」をしたいと思っているんです。熊谷選手は、引退後の自分を考えることはありますか?
 
熊谷 最近、周りの人にめちゃくちゃ聞かれます。それで判然と考えるようになりました。フランスに4年いるし、ドイツにも2年いたので、ある程度は言葉を喋れます。それを活かした資格を取るのもいいかなと。あとはコーチのライセンスも取りたいですね。
 
岩政 ヨーロッパにずっと残りたいですか?
 
熊谷 いや、微妙です。もし、ヨーロッパでやるなら育成ですね。日本人の私が教えたらどうなるのか興味はあります。日本人は本当に巧い。それは育成年代での練習が影響しているんだろうな、とリヨンの育成の練習を見ていて思いました。
 
岩政 ヨーロッパの女子サッカー選手は、引退後はどうしているんですか?
 
熊谷 家庭に入る人が多いかもしれません。最近だと、男子のサッカー選手と結婚して、移籍先についていった人がいました。あとは、育成のスタッフをしたり、レポーターをしたりですね。
 
岩政 リヨンの男子選手と交流はありますか?
 
熊谷 リヨンは男子と女子が一緒の施設を使っています。食堂で会ったりしますけど、挨拶しかしないですね。でも、チームメイトはフランス人同士で仲が良い選手もいますよ。
 
岩政 練習場も同じ場所ですか?
 
熊谷 横で練習してます。それくらい近いですけど、あんまり喋らないかな。
 
岩政 話は変わりますが、2020年の東京オリンピックは、ひとつの集大成になりますね。
 
熊谷 そうですね。リヨンとその年まで契約していますし、東京オリンピックまでは本気でやりたいと思っています。その後は、いろんな国にサッカーで行ってみたいとも思っていますが、2023年のワールドカップの開催国が日本に決まれば、また考えようかと。
 
岩政 ワールドカップですか。23年だと熊谷選手は32歳。まだいける年齢ですね。
 
熊谷 ええ。そうなったら本気で考えます。
 
岩政 その頃には、守備に対する考え方が変わっているかもしれません。
 
熊谷 その年齢までに経験することはたくさんあると思うし、もう少し自分が上手く生きていける形が見つかるかもしれません。本当に何が起こるか分からないので、とりあえずあと3年は本気で走ろうと思っています。
 
―――◆―――◆―――◆―――
 
 私がかじることができたのは、熊谷選手が見てきた景色のほんの一部です。しかし、私にとって非常に有意義なお話が聞けて、十分な充足感がありました。彼女はどれだけのものを得てきたのか、その深さは計り知れない。そんな印象を持ちました。
 
 熊谷選手は常に挑戦できる場所に自ら身を置き、そこで「自分がどのようにしたら生きていけるか」を考え続けてきたと語ってくれました。
 
 私は最近、「考える」にも様々な種類があると感じています。そして、成功してきた選手たちの「考える」は、みんな「自分がどのようにしたら生きていけるか」であるのではないか、とも。つまり、誰か他の人の正解に合わせるのではなく、自分なりの正解を見つける、ということです。