千代大龍(左)を寄り切りで下す日馬富士(カメラ・能登谷 博明)

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◆大相撲秋場所6日目 ○日馬富士(寄り切り)千代大龍●(15日・両国国技館)

 休場危機だった横綱・日馬富士が、西前頭3枚目・千代大龍を寄り切って4日ぶりの白星を挙げた。弟弟子でカド番の照ノ富士は休場を発表し、14場所守った大関から陥落が決定的。1918年夏場所以来99年ぶりに3横綱2大関が場所を休む事態となった。今場所の幕内休場者は8人目で、野球賭博で6人が謹慎した10年名古屋を除けば05年名古屋以来。大関・豪栄道は東前頭3枚目・阿武咲(おうのしょう)を破り、5勝1敗で首位に並んだ。6日目で全勝なしは、昨年の名古屋場所以来。

 がむしゃらに前に出た姿勢に綱の意地が詰まっていた。日馬富士は左張り差しから、もろ差しの体勢になると一気に走った。赤房下で右を小手に振られてもこらえ、自分より53キロも重い190キロの千代大龍を寄り切った。「自分の相撲に集中して。落ち着いていた」。納得の表情で4日ぶりの懸賞を受け取った。

 負ければ86年ぶりに4日連続で金星配給の不名誉な記録になっていた。前日まで緊張感に包まれていた指定席、西支度部屋の一番奥には安ど感が充満。定番となっていたため息はなく「ホッとしたか」との質問に「そうですね」と告白。勝てなかった3日間については、10秒近く間を置き「忍ぶ。忍ぶことだね」と強調した。帰りの通路では「よく眠れているよ。薬を飲んでね」と冗談を交える余裕も取り戻していた。

 序盤5日を終えて黒星先行は、12年秋場所後の横綱昇進後では初。両肘、両足首にサポーターを巻き、皆勤出場が難しい体調と一人横綱の責任との間で葛藤した。それでも、前日夜の師匠・伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)との会話では休場の話題は出なかった。左腕に力が入らない事実を明かした伊勢ケ浜親方は「けがもあるけど、出ると覚悟している以上、やることをやらないといけない」と弟子の覚悟を代弁した。

 ほぼ1世紀ぶりとなる3横綱2大関の休場。期待と責任を背負う立場の横綱に、八角理事長(元横綱・北勝海)も「今場所は辛抱の場所になる。横綱である以上、仕方ないこと。必死に勝つ姿にお客さんも喜ぶ」と先輩横綱としてエールを送った。「初めてだね。(休場者が)こんなに。一番に対する気持ちは変わらない。積み重ねだよ」と日馬富士。この日の土俵入りでは、誰よりも大きな拍手を送られていた。(網野 大一郎)