スーチー氏

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 総人口5200万に対して約130万人、仏教徒がほとんどであるミャンマーにおいてイスラム教徒であるロヒンギャ族はかねてから差別や迫害の対象となってきた。そのロヒンギャ族の武装勢力が8月25日未明、ミャンマー西部のラカイン州で警察施設などを襲撃。それに対する報復のため、同国治安部隊がロヒンギャ族居住区の掃討作戦を展開し、女性や子供も含む多数の死傷者、隣国バングラデシュへ9万人近い難民が発生する大惨事となっている。

 なぜ衝突は起ったのか。

「ロヒンギャは15世紀に遡る長い抑圧の歴史を抱えた民族です。彼らの住む地域を訪れたこともありますが、インフラも整備されておらず、劣悪な環境。国軍による陰湿な嫌がらせを受け続け、不満を募らせてきた。彼らが暴動を起すのは無理からぬことと思えます」

スーチー氏

 そう語るのは現代イスラム研究センターの宮田律氏。

 そんな不幸な民族の悲劇を見るに見かねて、立ち上がった人物が現れた。ローマ法王フランシスコである。11月に法王がミャンマーを訪れることを8月28日、法王庁が発表。常々法王はミャンマーのロヒンギャ迫害に憂慮を示していた。

「法王はパレスチナ問題やシリアの内戦など、平和や民族問題には一家言ある人。何らかの訴えをするつもりなのでしょう」(外信部記者)

 ただ、この法王訪問にミャンマーで一人だけ頭を抱えるのが、実は国家顧問のアウンサンスーチーである。彼女は一貫してロヒンギャ問題に沈黙したままなのだ。

「彼女の目は欧米にばかり向いていると現地ではいわれています。国内のロヒンギャには、あえて口を閉ざしているのでしょう。一方で法王はスーチーを民主化を成し遂げた理想の人物と見ていました。でも最近の動静で印象は大きく変わったかもしれませんね」(宮田氏)

 5月に自らバチカンへ赴き、国交樹立を果たしたスーチー、法王訪問を前に打つ手はあるか……。

「週刊新潮」2017年9月14日号 掲載