23階建ての高層ビルに生まれ変わった松坂屋上野店の南館跡地。高い建物が少ない上野御徒町にあって独特の存在感を放つ(記者撮影)

上野動物園のジャイアントパンダの赤ちゃん誕生で盛り上がる東京・上野。約250年の歴史を持つ老舗百貨店の松坂屋上野店も、お祝いセールを開催したり、関連商品を販売したりするなど、今夏は祝賀ムードに包まれた。

その松坂屋上野店の南館の跡地が11月、パルコや映画館、オフィスが入る23階建ての高層ビルに生まれ変わる。

「まだ掘り起こせていない市場がある」

「まだ掘り起こせていない潤沢な市場がこの(上野)エリアには存在する」。大丸松坂屋百貨店とパルコを傘下に持つJ.フロント リテイリングの山本良一社長は、9月14日に開かれた記者会見でそう話した。同社は松坂屋上野店南館の跡地を、パルコなどが入居する複合ビル「上野フロンティアタワー」に再開発した。

11月4日にオープンする商業エリアは、1〜6階にパルコ、7〜10階にTOHOシネマズが入居する予定。百貨店の松坂屋が入るのは地下1階のみで、隣接する松坂屋上野店本館とは連絡通路でつながる。J.フロントにとって、2012年に連結子会社化したパルコと百貨店事業の連携は今回が初めてとなる。

12〜22階はオフィスフロアとなり、すでに全フロアでテナントが内定しているという。ビルを保有する大丸松坂屋百貨店は、パルコやTOHOシネマズ、オフィステナントから賃料収入を得る仕組みだ。

松坂屋上野店南館の跡地の再開発は、松坂屋銀座店跡地に開発した「GINZA SIX」(ギンザ シックス)に続き、従来の百貨店モデルからの脱却を進めるJ.フロントの戦略を具現化したもの。大丸松坂屋百貨店や森ビルなど4社が共同出資した会社が運営するギンザ シックスも、入居するテナント店舗からの賃料を収益源とする。

J.フロントの山本社長は「(パルコではなく)百貨店という選択肢も経営的には十分可能性があった。ただ、伝統的な百貨店をやって本当にお客様に喜んでいただけるか。ターゲット層を拡大することのできる商業エリアを開発しようと考えた」と強調した。

パルコで30〜50代を取り込む

松坂屋上野店は東京メトロ銀座線の上野広小路駅に直結し、日比谷線やJR、都営大江戸線の最寄り駅からも徒歩3分圏内と、都内各地からのアクセスは抜群。ただ、土地柄もあって客は60歳以上のシニア世代がメインとなり、ほかの百貨店よりも年齢層が高い。

周辺にはアメ横や大型ディスカウントショップのほか、老舗の小売店や飲食店がひしめく。その一方で、若者が買い物できるような大型商業施設は少ない。J.フロントは、パルコを入れることで幅広い世代を街に呼び込む起爆剤となると判断した。


フロンティアタワー地下1階に設置予定の上野案内所。上野の老舗・名店の品々を販売したり、観光案内を英語で実施したりする(写真:J.フロントリテイリング)

上野に出店するパルコが主なターゲットとするのは30〜50代。20〜30代を主力とする通常のパルコより、年齢層はやや高い。親子で松坂屋とパルコを訪れるケースなども想定する。

化粧品フロアは商品にこだわりを持つ高年齢層の客のニーズにも応えられるよう、ブランドごとに区画を取ったブティック型店舗を増やした。レストランフロアも地元の老舗店を誘致するなどの工夫を凝らす。

「ほかの地域でも、隣に百貨店があるとパルコのショップの効率はたいへん高くなる」(パルコの牧山浩三社長)といい、隣接する松坂屋上野店本館と補完し合うような品ぞろえを目指す方針だ。

高層ビルの少ない御徒町の中心にそびえ立つフロンティアタワーは独特の存在感を示し、多くの通行人が、まだ開業していない建物の中をのぞく姿も見られた。

幼い頃から上野に住んでいるという70代の女性は、「昔はここに映画館があって街もにぎわっていたが、今は高齢の人ばかりになった。映画館が戻り、パルコが入れば、街の雰囲気も変わり、若い人が増えるのでは」と話した。

対面販売の強みを活かせるか


記者会見の様子。左よりパルコの牧山浩三社長、大丸松坂屋百貨店の好本達也社長、J.フロント リテイリングの山本良一社長、上野観光連盟の二木忠男会長(記者撮影)

街全体としても、この先若い世代にどう訴求していくかは大きな課題だ。さらにアマゾンなど、拡大するネット販売への対抗も必要になる。

上野観光連盟の二木忠男会長は「上野エリアは対面販売による小売り商業が多数ある。在宅で注文するシステムが進化している時代に、今後お客様にお店へどう足を運んでいただけるのか不安もある。(フロンティアタワーには)このエリアの核になって、新しい客層を入れていただきたい」と期待を込める。

下町文化を残しながら、上野を幅広い世代が回遊する街に発展させることができるか。新たに生まれるパルコと老舗・松坂屋が相乗効果を発揮し、老若男女が集う街の拠点としての魅力を発信できるかがカギとなる。