【ワシントン=黒瀬悦成】北朝鮮が15日、国連安全保障理事会による北朝鮮追加制裁決議に対抗する形で弾道ミサイルを発射したことで、トランプ米政権は核・弾道ミサイル開発を放棄する意思が全くない北朝鮮に対する国際社会の「平和的圧力」戦略の限界を改めて思い知らされた。

 北朝鮮がいよいよ核戦力体制を確立させようとする中、米朝は一触即発の衝突の危機をはらんだ「冷戦」の時代に突入した。

 米戦略軍のハイテン司令官は14日、中西部ネブラスカ州の戦略軍司令部で記者団に対し、北朝鮮による今月3日の核実験について「水爆とみられる」との分析を明らかにした上で、北朝鮮は遅かれ早かれ大陸間弾道ミサイル(ICBM)に核弾頭を搭載して戦力化できると指摘した。

 「北朝鮮核武装」というもはや避けられない現実に対し、トランプ政権は「北朝鮮を核保有国として認めない」(ソーントン国務次官補代行)との立場を簡単に崩すことはない。

 しかし、経済制裁による国際包囲を軸とする現在の「平和的圧力」で北朝鮮を核放棄に向けた対話の席に着かせることが極めて困難であることが明白となってきたのを受け、米政権は「次の手」に静かに軸足を移しつつある。

 米政権が進める「次なる戦略」とは何か。それは、かつてソ連を崩壊に追い込んだ東西冷戦を彷彿とさせる、北朝鮮に対する「抑止・圧力・封じ込め」だ。

 「第2次朝鮮戦争」につながるような先制軍事攻撃を除き、あらゆる軍事・外交・経済的手段で北朝鮮を締め上げ、金正恩体制に核放棄を強いる。北朝鮮が核放棄の意向を明確かつ具体的に表明しない限りは、金体制の存続を保証しない。

 国連安保理による対北朝鮮制裁決議や、米国など各国による独自制裁を通じた北朝鮮に対する禁輸や貿易停止措置は、「米朝冷戦」の長期戦略の柱の一つでもある。そのためには北朝鮮への影響力を維持する中国の取り込みが不可欠だ。

 加えて米政権が必須とみなすのが、日米韓による安全保障連携の強化だ。

 トランプ氏は、日韓に対して積極的に高性能兵器を供与することなどを通じて日米、米韓の同盟関係を強化させていくと表明済みだ。同時に、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃能力の無力化に向け、ミサイル防衛体制の確立を急ぐとともに、北朝鮮が米本土や日韓などを攻撃することが確実となった場合、ミサイル基地を攻撃する能力も確保する。

 さらに、非公式の地下放送や、ネットで民心を金体制から離反させるような秘密工作を展開することも想定される。

 一連の「北朝鮮弱体化」戦略は、いずれも現行の政策の延長線上にあるだけに、米政権としても比較的世論の支持を得られやすいとの判断がある半面、北朝鮮が米国や日韓を脅かす事態の長期化を招くのは不可避だ。

 日本としても「長く厳しい戦い」に備える覚悟を迫られることになる。