「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『望郷』『あさがくるまえに』

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。

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■『望郷』

 海なし県で生まれ育ちました。ゆえに、海への憧れは強いです。そんなリアルサウンド映画部のゆとり女子・戸塚がオススメする作品は、『望郷』。

 本作は、作家・湊かなえによる同名小説を、『ハローグッバイ』の菊地健雄監督が実写化したヒューマンミステリー。ある島を舞台に、古いしきたりを重んじる家庭に育ち、故郷に縛られた生活を送る夢都子(貫地谷しほり)と、本土から転任のため9年ぶりに故郷に戻った航(大東駿介)、ふたつの親子の過去と未来をつなぐ模様を描く。

 ため息の出るような映像の美しさ。海の青さと、緑の豊かさ、そして少し寂れた街並みが見事にマッチしていて、視覚情報だけでも“懐かしさ”が胸いっぱいにこみ上げてきます。この作品は誰の心にもきっと響くはずです。誰にでも“故郷”があるのだから。そして、登場人物の誰かに対して“あ、私だ……。”ときっと共感することでしょう。そんな、誰しもが体験したことのあるような、日常が切り取られている作品です。また、登場人物たちの心の機微がこれでもかと丁寧に描写されています。

 夢のような柔らかい映像と、フィクションとは思えないほどのリアルな物語。そのギャップが、より作品の世界観を際立たせます。原作者である湊さんが自身の故郷である因島をモデルにして手がけた作品。メガホンを取った菊地監督はじめ、本作のスタッフ方は実際に因島を中心としたしまなみ海道に足を運び、住んでいる方々にお話しを聞いたそうです。だからこそ、この作品からは愛情と優しさが感じられます。

 これまでも、湊さんの小説は黒沢清さんはじめ錚々たる監督方が実写化してきました。ですが、本作『望郷』はこれまでの作品とは、少々テイストが変わっています。いわゆる“イヤミス”を得意としてきた湊さんですが、本作においては最後に“光(希望)”がさすのです。もちろん、残酷な現実や、どうしようもない事柄もたくさん出てきます。目を背けたくなるような辛く、悲しい描写もあります。ですが、観終わった後にどこかスッと心が晴れ渡り、故郷に帰りたくなる、そんな温かさが詰まっているのです。

 あなたも週末映画館で、“故郷”を懐かしんで、想いを馳せてみてはいかがでしょうか?

 なお、リアルサウンド映画部では、原作者の湊かなえさんとメガホンを取った菊地健雄監督のインタビューを近日掲載予定です。原作との違いや、どんな想いを込めて製作したのかなど、興味深いお話を聞くことができたので、そちらもぜひ楽しみにしていてください。

■『あさがくるまえに』

 2017年劇場鑑賞本数424本(2017年9月15日現在)、週末は基本的に映画館で暮らしている、リアルサウンド映画部のロン毛担当・宮川がオススメするのは、『あさがくるまえに』。

 2014年のフランス映画祭で観た『スザンヌ』の衝撃は未だに忘れられない。『身をかわして』のサラ・フォレスティエ、『タンゴ・リブレ 君を想う』のフランソワ・ダミアン、『メゾン ある娼館の記憶』のアデル・エネルといったフランス映画界の実力派俳優・女優たちが共演したこの作品は、フォレスティエ演じる主人公スザンヌの波乱に満ちた人生を描きながらも、重要な出来事を大胆に省略しながら物語を紡いでいくその演出にただただ驚かされた。

 そこで名前を知ったフランスの女性監督、カテル・キレヴェレの長編3作目となるのが本作『あさがくるまえに』だ。これまで日本では映画祭などの限定的な上映のみだったキレヴェレ監督にとって、満を辞しての日本デビュー作となる本作で描かれるのは、“臓器移植”という重いテーマだ。しかし、『スザンヌ』で我々観客を驚かせたキレヴェレ監督だけあって、ただ“重い”というだけでは終わらない。心臓という臓器を中心に、その臓器に関係する人々たちの日常や心情が、時にミュージックビデオのような軽やかな映像美で、時にずっしりとした重厚で緊張感のある映像で描かれていく。

 黒沢清監督がフランスで撮った『ダゲレオタイプの女』の名演も記憶に新しいタハール・ラヒム、ロマン・ポランスキーやフランソワ・オゾン、イエジー・スコリモフスキなど名だたる監督たちの作品に出演してきた実力派女優エマニュエル・セニエ、『マイ・マザー』『胸騒ぎの恋人』『Mommy/マミー』などグザヴィエ・ドラン監督作品で知られるアンヌ・ドルヴァルら豪華キャストの共演はもちろん、監督自身も重要な要素だと語る音楽と映像が生み出すマジックも圧巻だと言える。

 『スザンヌ』もそうだったが、今回の『あさがくるまえに』も一見ありきたりなテーマとストーリーかと思いきや、映画を観終わった頃にはこれまで味わったことのないような感覚にさせてくれる作品だ。(リアルサウンド編集部)