名古屋味噌で5時間以上煮込んだ「どて煮」の香りが、往来の来店を誘う=東京都杉並区「名古屋味噌 どて子」西荻窪店

写真拡大 (全3枚)

 日本で一番魅力のない都市−。

 昨年、名古屋市が実施した全国8都市「ブランド・イメージ調査」の結果に衝撃を受けたご当地だが、食べ物だけは違います。手羽先、ひつまぶし、あんかけスパなど「名古屋めし」の東京進出が目覚ましい。なかでも最近目立つのが、地元愛知県産の豆味噌(みそ)を使った料理だ。体にも良い発酵食品。赤黒い褐色の濃い味わいに東京人も、やみつきだがや〜!?(重松明子、写真も)

 ニラと唐辛子にまみれたひき肉に、八丁味噌がからんだ麺をズズッー。味噌のまろやかさがうまみを引き出し、深いコクと辛さが染み渡る。

 名古屋発祥の台湾ラーメン「郭政良 味仙(みせん)」神田西口店(東京都千代田区)で、新メニューの八丁味噌(850円)を食べた。「秘伝のうま辛台湾ミンチと八丁味噌の相性は抜群。他の台湾ラーメン店にはない味です」と同店。

 台湾ラーメンは戦後来日した郭明優さん(77)が、名古屋市に創業した台湾料理店「味仙」で昭和40年代に考案。郷里の担仔麺(タンツーメン)の激辛アレンジが評判となり、後に弟妹たちものれん分けして市内各地に店舗ができ、「台湾にもない、メード・イン・ナゴヤ」のソウルフードとして定着した。

 郭5人きょうだいの末っ子、政良さん(56)は昨年、兄姉に先駆けて東京に初出店。JR神田駅近くの東京1号店に長蛇の行列ができ、混雑解消のため今年3月、駅西口に2号店を開いた。「東京駅にも近く関東一円から来客がある」。折からの激辛ブームにも乗る台湾ラーメンは、マイルドな味噌の“中和作用”によって、ファンの裾野を広げてゆきそうだ。

 「『名古屋は八丁味噌』といわれるが産地は三河(愛知県岡崎市など)。尾張の名古屋味噌をどて煮(豚腸の味噌煮)を通じて東京に広めたい」と語るのは、東京都杉並区で2軒の「名古屋味噌 どて子」を経営する、名古屋出身の朝里勇人さん(50)だ。

 市内の人気店「のんき屋」でどて煮のノウハウを学び、昨年今年と立て続けに東京に専門店を開いた。愛知県産大豆で醸造、長期熟成した名古屋味噌の風味を生かし、ザラメのみのシンプルな味付け。どて煮の皿盛りが486円。カレーやいなりずしなど、ご飯もののアレンジも多彩だ。

 JR西荻窪駅南口脇にある店を訪ねると、店頭の大鍋から甘い味噌の香り。「ご試食いかがですか?」と朝里さん。「親子連れが『おいしい』と持ち帰りしてくれるのがうれしい。体にも良いものですから」。店内の狭いカウンターは、どて煮を肴にノドを鳴らすサラリーマンや女性グループでいっぱいだ。

 ほれ込んだ名古屋味噌の醸造元「ナカモ」は天保元(1830)年創業の老舗。ロングセラーのチューブ式味噌だれ「つけてみそかけてみそ」(400グラム、356円)が昨年、過去最高の120万本出荷を達成した。名古屋出張土産として、ジワジワと知名度がアップしてきたことが大きい。杉本達哉社長(45)は、「地元の中京圏以外での販売は想定していなかったが、首都圏からの問い合わせをひんぱんに受けるようになり、取り扱い店舗も徐々に増えてきました」。

 東京育ちの筆者も、ルミネ有楽町の「富沢商店」で見つけて購入。トンカツにかければ名古屋風の味噌カツになるのかな? デミグラスソースっぽい甘さとコクが赤ワインにピッタリ。値段の割にリッチな味わいに、見栄っ張りの(スミマセン!)名古屋らしさを感じた。