ドイツ・ブンデスリーガで1部に昇格した昨季、いきなり2位に躍進。”良くも悪くも”大きな話題を振りまいたRBライプツィヒが、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)へのデビューを果たした。


先制直後にモナコに同点を許したライプツィヒ

 UEFAヨーロッパリーグやCL予選など、UEFAが主催するヨーロッパの大会に出場した経験がないまま、いきなりCLグループリーグで”ヨーロッパ・デビュー”を飾るクラブは初だというから、ライプツィヒが成し遂げた快挙がいかに大きいかが分かる。

 結果だけではない。ライプツィヒは昨季、世界4大リーグのひとつに数えられるブンデスリーガで、非常にアグレッシブで質の高いサッカーを展開した。

 高い位置からの積極的なプレスでボールを奪うや否や、一気に相手ゴールへ向かっていく速い攻撃を繰り出す。あたかもゴール前に次々と選手がなだれ込んでいくかのようなサッカーは、かなり痛快で魅力的だった。

 近年、ボルシア・ドルトムントやホッフェンハイムなど、攻守の切り替えの速さを武器に、ハイプレスとショートカウンターを繰り返すサッカーを展開するチームが次々に現れてきているが、ライプツィヒの躍進もまた、その潮流に乗ったものだ。

 ただし、ライプツィヒが昨季、ブンデスリーガの大きなトピックとなったことを”良くも悪くも”と表現しなければならないのは、2009年のクラブ誕生からわずか8年という短期間での急成長の裏に、飲料メーカーであるレッドブルの強力な後ろ盾があったからだ。金にモノを言わせた強化に対し、嫌悪どころか、憎悪さえ示す他クラブのサポーターは多い。背景を考えれば、当然起こりうる批判だろう。

 だが、ライプツィヒがスター選手をかき集めた、いわゆる”金満クラブ”と一線を画すことは、ピッチに立つ選手の顔ぶれを見ればすぐに分かる。実績十分のスターはひとりもおらず、将来有望な若い選手を育てて、自らが志向する運動量の多いサッカーを叩き込む。言い換えれば、すでにでき上がった選手を集めても、これほど機動性の高い魅力的なサッカーを実践することは難しいということだ。

 それでも、金にモノを言わせた強化と言えなくはないが、その投資先は人材発掘と育成。理にかなった強化が、短期間での急成長を支えていることは間違いない。

 実際、CLデビュー戦となったASモナコとの試合でも、非常に若いメンバーが顔を揃えた。最年長は28歳のMFシュテファン・イルザンカーで、最年少は18歳のダヨ・ウパメカノ。先発11名のうち9名が25歳以下で、平均年齢でも23歳台の若さである。

 ただし、この試合に関して言えば、若さが裏目に出た。いや、若さというより、それと表裏一体の経験不足が露呈したと言ったほうがいいだろうか。

 この試合の先発メンバーでCL出場経験があるのは、10番を背負うエミル・フォルスベリ(前所属のマルメ時代)だけ。それ以外は全員がCL初出場というメンバー構成だった。

 いつもなら生き生きとピッチを動き回るはずの選手が、どこかフワフワとしていて、地に足がついていない。そんな様子に見えた。「少しナーバスになっているようだった。アタッキングサードに入って積極性に欠けていた」というラルフ・ハーゼンヒュットル監督の弁が、それを裏づける。

 何より、いつになくミスが多かった。縦に速いというより、縦に急がされている。そんな印象の攻撃ばかりが目立った。

 クラブ史上CL初得点となったフォルスベリのゴールにしても、偶発的要素に助けられた部分も大きく、ライプツィヒらしいゴールとは言い難い。

 若くてウブなライプツィヒと比べると、やはり昨季のCLでベスト4まで進んだモナコは老獪(ろうかい)だった。レオナルド・ジャルディム監督は「チームは毎シーズン変わるもの。昨季と比較すべきではない」と語るが、試合運びのうまさはさすがだった。

 アグレッシブなスタイルを標ぼうする相手に対し、低い位置からでもパスをつなぐと見せて、ライプツィヒが前からプレスに出ようとすれば、簡単にロングボールを蹴る。ライプツィヒがプレスを躊躇(ちゅうちょ)すれば、下からつなぐ。

 そして、ライプツィヒの高速カウンターに対しても常に気を配り、無理に攻撃に出ることはなかった。ボールを奪われても危険が少ないサイドを軸に攻撃を組み立て、4バック+2ボランチのうち、少なくとも5人は後方待機でリスク管理に努めた。

 結果、ライプツィヒはボールを奪ったときに速く攻めたいのだが、前線にスペースがないため、縦へのパスコースが見つけられない。どうしても1本目のパスを近い位置に出さざるをえず、そこで攻撃がつまってしまう。高い位置にボールが収まらないため、後ろの選手も出ていけない。ライプツィヒの攻撃は常にノッキングを起こした状態で、持ち味である、次々に選手が攻め上がってくる迫力は失われていた。

 象徴的だったのが、56分のシーンだ。

 右サイドで縦パスを受けたFWティモ・ヴェルナーがボールを落とし、自らは前へ走り出す。本来なら、「さあ、ここから攻撃がスピードアップ!」という場面である。

 ところが、ヴェルナーが落としたボールをFWユセフ・ポウルセンとMFマルセル・サビッツァーが譲り合う形でお見合いしてしまい、敵に易々とボールを拾われてしまう。ここぞとばかりに攻め上がろうとしていた右サイドバックのDFルーカス・クロスターマンも、これには急ブレーキをかけて、すぐさま後退するしかなかった。

 ライプツィヒは交代選手を送るも功を奏さず、ついに最後まで”らしさ”を見せることなく、試合を終えた。

 ライプツィヒはこの試合、リーグ戦で内転筋を痛めたMFナビ・ケイタを欠いたことも痛かった。このギニア代表MFは、来夏にリバプールへ移籍することが決まり、その報道によってチームの周囲は少々騒がしくなっているが、それでもケイタが今季CLで戦う上で不可欠な戦力であることは間違いない。”たられば”を言っても仕方がないが、相手ボールを奪い、奪ったボールを前に運ぶという点において、攻守両面で中心的役割を担う背番号8がピッチにいれば、もっと違う試合が期待できたはずである。

 CLグループリーグ第1戦。ホームのレッドブル・アレーナにモナコを迎えた一戦は、先制したライプツィヒがその直後に同点ゴールを許し、1-1で引き分けた。ハーゼンヒュットル監督が「勝ち点1では満足できない」と語ったように、記念すべきCLデビュー戦はほろ苦い結果となった。

 昨季の勢いそのままに、CLでもいきなり旋風を巻き起こすかに思われたライプツィヒだったが、世界最高レベルの舞台はそれほど甘くはなかったということだろう。

 それでも、4万人のサポーターが埋めたスタンドは温かかった。試合後は、大きな拍手で初めてCLの舞台に立った若い選手たちを称えた。他クラブのサポーターからは圧倒的に嫌われていても、ホームには心強い支えがある。成長途上にあるチームは彼らとともに、CL初出場にして初のグループリーグ突破を目指すことになる。

 勝負はこれから。ライプツィヒは残る5試合で、昨季バイエルン・ミュンヘンとドルトムントの2強の間に割って入った実力を見せてくれるはずである。

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