「帆世雄一」声優インタビュー&ミニグラビア【声優図鑑】

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 編集部が注目する声優に、仕事に向き合う気持ちからプライベートまでをじっくり伺い、撮り下ろしのミニグラビアを交えて紹介する人気企画「声優図鑑」。

第174回となる今回は、「あんさんぶるスターズ!」の守沢千秋役、「A3!」の古市左京役などを演じる帆世雄一さんです。

――帆世さんとは変わったお名前ですね。

帆世:本名は長谷川なんです。同じ事務所の長谷川芳明と入った時期が一か月違いで、年齢も近いので、僕は帆世でいこうと。中1のころからあだ名がホセだったんですよ、顔がハーフみたいな感じだったので。そしたら思いの外、周りの人がピンときちゃったみたいです。

――声優だけでなく顔出しのお仕事も多くされていますが、大きなくくりでエンタメ業界に入ったきっかけは?

帆世:子どもの頃から親父の影響で映画が好きで、ロバート・デ・ニーロが大好きなんですね。で、デ・ニーロと共演したいなと。実家の呉服屋を継ぐつもりでいたんですが、待てよ、デ・ニーロと共演したいというのはマジな夢だなと、思春期のワチャワチャした頭で考えたんですね。彼が通っていたアクターズ・スタジオに入りたいと調べ始めたんですけど、よくよく考えたら英語が全然得意じゃないし、声優としてデ・ニーロの相手役を演じるという方法もあるなと思いまして。そんなバッカみたいな理由なんですけど(笑)。

――声のお芝居でも共演することに違いはなさそうですね(笑)。その後、玉川大学の芸術学部で4年間パフォーマンスを学ばれています。

帆世:声優というよりはエンタメ業界に入りたかったので、大学でずっと舞台をしていました。制作畑でチラシを作ったりして、どうやったら劇団で食っていけるのかと。15時以降はパフォーマンスという科目で芝居を続けられたので、半年で7本くらい、仲間と膝をつきあわせながら何かを作っている環境でしたね。4年間、舞台ばっかりやり続けた結果、一般教養科目を受けないでいたら、半期留年しました(笑)。

――今の事務所(アクロス エンタテインメント)に入られたのは?

帆世:留年しているから中途半端な時期で就職先もないし、制作畑の就職のお話もいただいてたんですけど、何がしかのパフォーマーになりたいと思っていたので、半年間は稲本響さんっていうドイツで修行されていたピアニストの方の助手をやってお金を稼ぎ、いざいいタイミングになったときに、今から養成所に入るのもどうかなと思って、とりあえず事務所に入ろうと。声優アワードの新人発掘オーディションに応募して、今の事務所に所属させていただきました。

――事務所に入ってからは、どんなお仕事を?

帆世:同じ事務所の山寺(宏一)さんがレギュラー出演されていた「ものまねグランプリ」によく出させていただきました。もともと特技はものまねですって言ってたんですけど。オーディションではエヴァンゲリオンとかいろいろやって、最終的に引っかかったのが阿部寛さんのそっくりさん。髭を生やして、トリックとかテルマエロマエとか、いろいろやらせていただきました。

――「ものまねグランプリ、観てたよ!」って言われることもありますか?

帆世:ありましたね! だから、テレビってすごいなって思いました。当時は知名度のある作品が何もなかったんですけど、オンエア時だけブログのアクセスがパンクして。

――もしかしたら、その流れで芸人になっていたかも。

帆世:めちゃイケのオーディションに出たこともありましたからね(笑)。でも、芸人さんには不向きだと思ってます。あれほどのトークはできないし、お笑いのネタがないので。バラエティ番組には興味がありますけど。

――顔出しのお仕事として、「おはスタ」にホセピン役で出られています。

帆世:それこそ山寺さんの絡みですね。ホセピンの前はホッセーっていうADキャラで1年間出させていただきました。おはガールやペナルティのワッキーさんが出ているけん玉コーナーのADという立場で、けん玉の監督をしているワッキーさんがいるときはペコペコしているくせに、いなくなると踏ん反り返るという横暴なキャラクターでした(笑)。

――顔出しのお仕事が続くなかで、徐々に声のお仕事が増えていった?

帆世:徐々にというより、ガツンと!っていう感じなんですけど。会社としては声のお仕事が多いので、何がしか声のお仕事がないと居場所もないなと思って。最初は、映画のCMが本編より好きというくらい大好きなので、ひたすらその練習をして、ナレーターに必要なスキルみたいなのが培われていったんですね、そうこうしていたら、マネージャーや社長から良くなったねって言われて、ナレーションの仕事をどんどん入れていただけるようになって、指名もいただくようになりました。

――映画CMっていうジャンルがあるわけですね。

帆世:ほぼ独占市場ですね。ゴブリンさんと鈴木英一郎さんと山寺さんと、このお三方が多いです。最近になって立木文彦さんとか。

――今はアニメやゲームのお仕事もされています。

帆世:おかげさまで、「あんさんぶるスターズ!」や「A3!」で知っていただいている方が多いです。アニメーションや声優バラエティにちょこちょこ出させていただいているうちに、降って湧いた話として「あんさんぶるスターズ!」が決まって、一気にみなさんに知っていただけたという。ものすごく感謝している作品です。

――守沢千秋役はものすごく暑苦しい男子という説明もありますが、演じてみていかがでしたか?

帆世:もともと舞台で熱血ヒーローみたいな役に馴染みはあったんですけど、守沢ってじつは複雑な人で。表面上は熱血だけど、新しい情報が増えるたびに「そうだったんだな」と思うほど、いまだに謎の多い方です。

――最初からそういう複雑な部分があったんですか?

帆世:最初はなかったですね。ただ、セリフの端々になんか変だなっていうのが出ていたので、きっと字面だけの人間ではないなと。僕はどちらかというと落ち着いている声質だと思うので、守沢は中心人物としての安定感も必要だと思いますけど、それだけではキャスティングされてないと思うんですよ。きっといろいろ考えて選んでいただいたんだなと。ただ、セリフはずっと酸欠になりながら読んでましたね(笑)。

――セリフにはやっぱり熱いものがあふれていて(笑)。

帆世:「声でかい」って書いてあるんですよ(笑)。人との距離感がよくわからない人なんですよね。声でかいし、めっちゃ笑うので、いつも汗だくになって、収録が終わるとヘッドホンがビッチョビチョになるので、次の人に申し訳ないな、壊れないかなと思いながら(笑)。

――「A3!」の古市左京役は、またガラリと印象が違う役ですが、この役についてはどんな解釈でしたか?

帆世:この人はすごくピュアですね。やくざで強面で、声にドスが効いていて。でも、根っこはめちゃくちゃロマンティストのツンデレおじさん。そのギャップが可愛くて仕方ないですね。もともと借金の取り立て屋さんなんですけど、取り立ててる劇場をものすごく愛してるので、なんとかしようという思いが強いんですよ。ただのファンですよね(笑)。

――いろんな面を持つキャラクターですね。どんなところを重視して役にアプローチしたんですか?

帆世:スタッフさんとは「この人、どのくらいまで心を開くのかな」って話をして、探りながら演じたんですけど、最初は甘くなりすぎたんですよね、相手に対して懐を見せすぎだっていう。30歳っていう年齢もあって、それまでに紆余曲折があったからガチャガチャと鎧を着込んでいて、なかなか人と素直に向き合えないだけなんだけど、口を開けば「うるさい!」とケンカ調になるという、そういう矛盾は意識してましたね。

――舞台やナレーションに比べると、声のお芝居はまだ作品数が少ないということですが、声のお芝居の面白さってどんなところだと感じていますか?

帆世:ナレーションって、その場で渡された原稿を瞬発力で読んでいくのがすごく楽しいんです。そんな中で、ワーッと目の前の壁が開ける瞬間があるんですよ、すぐにまた別のでかい壁が出てくるんですけど。一段階上がったなっていう意識があって、自分の中に広がりができると楽しくてしょうがない。

でも、声のお芝居は、その一段階上がるところにいくまでに時間がかかっちゃって。自分の考えるビジョンと、本当にそれで伝わるのかなっていうマッチングができていないときがありますね。左京さんをやらせていただいて、バチッとハマるまでの時間は短くなったなと思うんですけど。キャラクターがいて、声だけで演じるというのは、特殊技能だと思うので、まだまだ勉強しないと。

――声のお仕事といっても、声を収録してから番組なり作品なりが完成するまでには、台本を読む作業もあれば、声を作っていく作業もあって。その中で、いちばん楽しいことは何ですか?

帆世:快感っていう意味では、本番でナレーションをしているときがいちばん楽しいです。ナレーションオタクみたいなところがあって、家でテレビをつけっぱなしにして僕だったらどうするだろうってテロップを読んだり、うわー、この一言、すげーいい!っていうときがあるんですけど、自分だったらこの一言の中に2つくらいしか込められないけど、ベテランの方が10個くらい込めてるじゃん!っていうことがあると、それを紐解いている時間も楽しいし。

直感的なタイプではなく、なるべく多くの材料を持っていかないと構築できない不器用なタイプなので、本番前に考えて考えて、いざ本番でそれを出させていただくという、その瞬間がいちばん楽しいですね。

達成感という意味では、そのパフォーマンスを見ていただいたとき。特に、舞台はお客さんと一緒に作っているものだし、バラエティやMCも、見ている人の反応がいちばん大事なので。どんな反応があるのか、反応がどう変わっていったかを感じることですかね。

――表現するのが本当にお好きなんですね。小さい頃の原体験は、何かありますか?

帆世:ごっこ遊びがめちゃくちゃ好きな子どもでしたね。「仮面ライダー」と「ゲゲゲの鬼太郎」が好きで、家が呉服屋だったので、ゲゲゲのちゃんちゃんこを作ってもらって、下駄履いて、毎日鬼太郎になりきって遊んでました。近所のどぶ川の近くで。いちばん妖怪がいそうなポイントがそこだったんですよ。そこへ行って、オカリナを落として泣きながら帰ってきたりとか。買ってもらったばっかりの七五三用のちょっといい下駄がドブに流されて、すごく怒られたりとか。

影響されやすいと思うんですよね。いまだに映画を見終わっても、2時間くらいはその中の誰かに影響されてるんですよ。たとえば「007」が好きなんですけど、バーへ行ってマティーニが飲みたくなっちゃったりとか、懐から銃みたいな何かを出したくなっちゃったりとか。いまだにそうですね。

――ロバート・デ・ニーロの映画は何が好きなんですか?

帆世:「ミッドナイト・ラン」っていうバウンティハンターの話で、デ・ニーロがライバルと争いながらある一人の詐欺師の男を捕まえに行くんですけど、搬送しているうちに詐欺師との間に友情が芽生えるというヒューマンコメディドラマ。ストーリーがよくできてるし、カメラアングルも素晴らしいんですけど、このデ・ニーロが本当に素晴らしいんですよ。

奥さんから三行半をつきつけられて、人間を信じていないような粗暴な人が、友情を感じているような表情を見せたりするのが素敵で。警察官から警察手帳を盗んで「やったぜー」みたいに手帳を放り投げる背中をカメラが追いかけて、急に振り返ってその手帳を見せる…みたいなクスリと笑わせるシーンもあって、子供のときにすごく真似してました。

――「いちだまんず」についても伺いたいです。アクロス一枚岩魂から生まれたユニットなんですね。

帆世:事務所の後輩の仲村宗悟と一緒にやらせてもらってます。自社番組なので自由度が高いんですよ。

――お2人によるギターの弾き語りで、本当にいいコンビだなと思います。ギターは以前からやっていたんですか?

帆世:それこそ映画の影響で、小5くらいのときに「耳をすませば」を観て、ああいう恋愛がしたいなと。父親がフォーク世代なので、家にあったフォークギターをもらって、「カントリー・ロード」を弾いたのがきっかけです。歌は、大学で声楽をやってましたけど、バスバリトンなので、ポップスを歌う上ではあんまり参考にならないですね(笑)。今は、ライトに軽くポップに、どんどんキーが上がっている時代ですから。バスバリトンのスキルより、ファルセットがどうやったらきれいに出るかなとか、そういうことばっかり考えてます。

――仲村さんとのチームワークの良さというのも感じます。

帆世:普通に出会ってたら、コイツなんだよ!って思ってたと思うんですよ。めんどくせーやつなんで(笑)。理詰めでいく僕と、感覚でいく宗悟と真逆のタイプですけど、エンタメ的に求めるものが合致しているので、そういう意味ではやりやすいですね。

ただ、後輩のことを悪くは言いたくないですが、あいつ、事務処理能力がゼロなのは周知の事実なんですよ(笑)。毎回曲を歌うからそれだけはちゃんとやってもらって、台本とか構成とか業務連絡とかは全部僕(笑)。

――一応フォローしておくと、そんなことがあっても愛されるべきキャラクターだと思いますが(笑)。

帆世:その通りです! 愛されるべきキャラクターという立ち位置に彼はあぐらをかきすぎているんです(笑)。だから、調子に乗るなよって言い続けてます(笑)。

――これからのビジョンについては、どんな風に思っていますか?

帆世:自分のキャリアっていうものを考えたときに、すごく事務所に愛されているし、それを恩義にも感じているんですが、特に山寺さんは、今の若手の中でもお仕事をご一緒させていただくことも多かったので、僕にとっては存在が大きくて。

山寺さんという方が自分の理想なんですよね。あんな才能はないし、雲の上のような人なので、とてもあんな風になりたいとは言えないんですけど。今はヒップホップダンスに挑戦してるらしいんですよ。しかもすごくキレが良くて。あれだけの人がさらに新しいものにチャレンジしている姿にすっごくしびれます。ずっとチャレンジし続けて、なおかつあらゆるジャンルの仕事ができる人間になりたいというのは、事務所に入った時からずっと変わらない思いです。

――ありがとうございました!

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

帆世雄一

・帆世雄一(ほせ ゆういち) アクロス エンタテインメント所属

・ 帆世雄一(ほせ ゆういち)Twitter

◆撮影協力BC WORLD STUDIO

取材・文=吉田有希、撮影=山本哲也、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト」