阿武咲がはたき込むと、日馬富士はくるりと一回転

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 ■大相撲秋場所5日目(14日、両国国技館)

 土俵に飛んできた座布団を見て阿武咲(おうのしょう)は「ああ、やったんだ」と思ったという。横綱初挑戦の結びの日馬富士戦でも、21歳の若武者は憶することはなかった。

 左に回り込んでのはたき込みで、横綱を1回転させた。初金星にガッツポーズも見せ、「緊張はなかったし、結びの一番の空気を楽しめた。押し込まれても対応できた」と振り返った。

 荒れ放題の秋場所。琴奨菊、千代大龍ら全勝力士が次々に敗れ、5日目にして、入幕3場所目の若者が単独トップだ。白鵬中心のマンネリ化した優勝争いに、あきがきていたファンも多いだろう。たまにはこんなとんでもない力士が優勝を争うのも一興ではないか。

 相撲王国といわれた青森は中泊町の出身。5歳のときから町の相撲道場で手ほどきをうけ、小6で全国小学生大会で優勝。中学では2、3年時に全国中学選手権で連覇するなど“怪童”として知られた存在だった。

 三本木農高を1年で中退。厳しい稽古で知られる元関脇益荒雄の阿武松親方の部屋に飛び込んだ。「力士でいられるのは長くて20年。その時間を濃いものにしたいので、あえて厳しい部屋を選んだ」と、腹が据わっている。

 元横綱審議委員会委員で脚本家の内館牧子さんは「阿武咲と貴景勝の若武者コンビ、最高ですね」。4月に桜に見とれて転倒し、右足甲の複雑骨折で全治6カ月。ようやく観戦が可能になった。「若手の急激な伸びで面白い。3横綱が休んでけしからん、などとブーブーいう前に、この面白さを見ない手はない」と、阿武咲に拍手喝采だ。

 「重心が低いし、スピードがある。迷うことのない相撲だ。単独トップなどと余計なことを考えず、このままノンプレッシャーでいってほしい」と藤島審判副部長(元大関武双山)。6日目、大関豪栄道を倒せば、ひょっとするとひょっとするかもしれない。