子供にとって、練習後の会話で大切なこととは【写真:Getty Images】

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【連載コラム】ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」――大切にすべきは子供が練習で得た感動と喜び

 夏休みもそろそろ終わりを迎える8月末、僕は長男が参加したSCフライブルクユースアカデミー主催のサッカーキャンプを見学しに、フライブルク市の郊外に位置するSVオプフィンゲンというクラブを訪れた。グラウンド脇にはきれいに改装されたカフェレストランが併設され、美味しいミルクコーヒーを堪能しながら、子供たちが笑顔でボールを蹴っている様子を楽しんだ。

 年齢ごとに12人1組の5グループに分かれ、それぞれにコーチが一人ずつつく。見学した日はコーディネーションや判断力が要求されるトレーニングを、パスやシュート練習と組み合わされたものが多かった。ただ練習をするだけではなく、練習時のグループとは別に「バイエルン」「ドルトムント」「バルセロナ」「マンチェスター・ユナイテッド」などのチーム名を冠したグループ分けをしてチャンピオンズリーグを行ったり、テラスに座ってサッカークイズをしたり、ドリブルやシュートといったテクニックを競い合うサッカーテクニックのテストと、盛りだくさんの内容だった模様だ。

 その日の帰り道、「どうだった?」と聞いてみた。

「最高だったよ。あ、あのね、最後にミニゲームやったんだけど、僕1人で5点も取ったんだ。そんなに取ったことなかったのに!」と大喜びの長男。自分ができなかったプレーを口にしたりはしない。

 はたから長男のプレーを見ていて「あ、ミスパスしたな」とか、「ああ、そこで止まっちゃダメだよ」というシーンがなかったわけではない。

点と点だけを見ていては分からないもの

 でも、それでいいのだと思う。別に隠しているわけでも、反省してないわけでもない。でも、それ以上に上手くできたことの感動と喜びの方が大きいのだ。子供が自分の一つのプレーに会心の感触を抱いて練習から帰ってくる。それは、素晴らしいことだと思う。

 帰りのバスで家に向かっている時に、急にトイレに行きたくなり、慌ててバスを降りて近くのお店に飛び込み、次のバスまで30分待つ。何もないバス停で待ってもあれなのでと、お店がありそうな地域まで歩いてみることにした。

「あれ、ここ見覚えがあるね」

 長男がつぶやく。そうだった。ここは1年前、別のイベントで訪れた町。本格的なカートの体験できるコースに参加した後、当時僕の下で研修を受けていた日本人の学生と一緒に、帰りのバスを3人で20分待ったのだ。

「暑い日だったね。また会えたらいいな」

 そんなことを二人で話しながら、とぼとぼと歩く。点と点だけを見ているだけでは分からない景色――。そんな時間を子供と共有できることはとても素敵で、成長を見守る親としては嬉しい瞬間だ。