Apple Watch Series 3は、スマートフォンが創り出してきたわれわれの日常や習慣を、大きく変化させる可能性がある(筆者撮影)

アップルは、米国時間9月12日のイベントで、次の10年を創り出すiPhoneとして「iPhone X」を披露した。プロセッサーやカメラ、ワイヤレス充電など、多くの部分を共有するiPhone 8、iPhone 8 Plusは9月22日に発売されるが、iPhone Xは11月3日と、まだ先。発売当初は品薄も予想される。

iPhoneの10周年の年に、iPhone Xという記念すべきコンセプトモデルを「Apple Park」という新しい場所で発表会を行う、非常に象徴的な出来事が続いた発表会だったが(関連記事)、個人的に最も注目している製品は、単独でのセルラー通信に対応する「Apple Watch Series 3」(4万5800円〜)だ。予約開始は9月15日から、発売は9月22日である。

オプションサービスは月額350〜500円


今回新たに登場したバンド、スポーツループは、柔らかで軽い素材を、 マジックテープで固定する、フレキシブルなバンドだ(筆者撮影)

iPhoneユーザーはこれまでどおりApple WatchとiPhoneをペアリングすると、画面の中で、使っている携帯電話キャリアの追加サービスを申し込むことができる。

すると、iPhoneと同じ電話番号が割り当てられ、Apple Watchだけを身につけているときでも、iPhoneにかかってきた電話を受けたり、自分の電話番号で電話をかけたりすることができるようになる。

日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が、9月22日の発売時からオプションサービスを利用できる。米国では月額10ドルのプランが用意されるが、日本では350円から500円と、半額以下でセルラー版Apple Watchを利用できるようになる。

筆者がApple Watch Series 3がセルラー対応したことに注目した理由は、スマートフォンが創り出してきたわれわれの日常や習慣を、大きく変化させる可能性があるからだ。

Apple Watchは2014年にiPhone 6とともに発表された、iPhoneと組み合わせて利用できるスマートウォッチだ。つねに手首に着けていることから、日常やスポーツの際の距離や心拍数を計測でき、健康を意識できるテクノロジーとしての側面が強い。

2016年にはApple Watch Series 2が登場し、GPSを内蔵してジョギングやウォーキングなどの日々の運動の計測をより快適に行えるよう進化した。しかしそれでも、iPhoneのアクセサリとしての側面が強く、外出先ではiPhoneがなければ、ネットに頼るアプリや、Siriの利用はできなかった。

今回発表されたApple Watch Series 3は、「iPhoneのお供」というキャラクターに変化の兆しを与える、非常に重要な新製品となる。その理由は、iPhoneに頼らなくても、セルラー通信、つまりLTEでインターネットに接続することができるようになった点だ。

第3世代で大きな進化を遂げる


イベントでは、湖の上でパドルボートを漕いでいる人と 手首を近づけなくてもクリアに音声通話できる様子が披露された(筆者撮影)

Apple Watchはこれまで、iPhoneとBluetoothで接続するか、既知のWi-Fiに接続することで、通信手段を得ていた。もちろんワークアウトなどのアプリはよいが、現在スマートフォンで利用する多くのアプリや音声認識は、iPhoneを経由するネット接続がなければ利用できなかった。

それでも、Apple Payに対応していたため、通話やメッセージを諦めれば、Apple Watchだけで外出し、ジョギングを計測し、水を買って帰ってくる、あるいは帰りは電車やタクシーを利用する、といった体験を創り出すことができた。

ジョギングをする人ならわかると思うが、iPhoneをポケットに入れるか入れないかで、運動する際の快適さがまったく違う。iPhoneを持たなくても、アプリの機能が利用できる時間は、Apple Watchが創り出した特別な時間だったのだ。

Apple Watch Series 3に登場したセルラー版は、Apple Watchが創り出した「スマホを持たない特別な時間」をより押し広げ、生活の中でスマホを意識しない瞬間をより多く創り出してくれることになる。

たとえば前述のようなジョギングの場合、週末に1時間じっくりと走りたいと思ったら、これまでは邪魔でもiPhoneをポケットに入れていた。しかしLTEに対応するApple Watch Series 3のセルラー版なら、通話やメッセージを単独で受信することができるため、長いワークアウト時にiPhoneを家に置いておくことができるようになる。

子育て中の親にとっても、セルラー版のApple Watch Series 3は強い味方になる。子どもと近くの公園で遊びながら、待ち合わせをしている友人からの連絡を待たなければならないとき、スマートフォンを片手では、遊具のサポートに集中できず、危険なことがあるかもしれない。

Apple Watchだけで通話やメッセージが受けられれば、家にスマートフォンを置いて出かけ、子どもとの遊びに集中していても、通話もメッセージも単独で受けることができる。

もちろんアップルが説明しているように、Apple Watchだけで外出しても、Apple Musicの膨大な曲数の音楽を自由に楽しむことができるし、スマホを濡らす心配をせずビーチで遊ぶこともできる。

デジタルクラウンが赤ければセルラー版


Apple Watch Series 3のセルラー版は、デジタルクラウンが赤く塗られる。Editionのホワイトセラミックでは、まるで日本の国旗のような雰囲気となる(筆者撮影)

個人的には、そうしたできることが増えること以上に、スマホ中心の習慣に変化を与える可能性が重要だと考えている。

Apple Watch Series 3は、セルラー対応を果たした初めての製品だ。

GPSを内蔵するApple Watch Series 2と同じサイズの中に、eSIMと呼ばれる書き換え可能なSIM、アップルがデザインしたワイヤレス通信の高速化と省電力性を司るW2チップ、画面部分を活用するアンテナ、高度計測に対応する気圧計を内蔵した。

Apple Watch Series 3にはセルラー版に加えてセルラーが内蔵されない製品も用意されるが、見分け方はデジタルクラウンと呼ばれるリューズ部分が赤く塗られているかどうかだ。

Apple Watch Series 3は、スマートフォンを持たず、これまでの携帯電話通信で楽しんできた多くのことを手首だけで実現し、スマホなしの時間という現在のライフスタイルに逆行するような瞬間を演出してくれる。

スマホを持たず、スマートウォッチだけで生活する未来も、かなり現実的な予想になってきた。ただし、現段階では、やはりiPhoneを持たないライフスタイルは成立しないだろう。バッテリーの問題だ。

連続通話時間は、たった1時間・・・

Apple Watch Series 3は、iPhoneとのペアリングを前提として、18時間の持続時間を実現している。しかし、セルラー通信での連続通話時間となると、1時間とぐっと短くなる。また屋外でGPSを利用しながら通信をする場合、持続時間は4時間になる。

つまり、スマートフォンのように、アプリ利用と通信をしながら1日バッテリーを持たせることは、現段階では不可能だ。

ただし、これはもはや、バッテリーの性能向上や、プロセッサーやモデムの省電力性の向上など、将来の技術的な進歩で解決できる問題だ。

Apple Watchは音声アシスタントSiriや、アプリでの機械学習モデルの実行など、人工知能を生かしたアプリやサービスの最も身近な拠点になっていく。スマホを持たない未来に何が起きるか、Apple Watch Series 3のセルラー版で体験しておかない手はないだろう。