「悪党には必ず天罰が下る」ーー山田波子(仲里依紗)が原口元子(武井咲)にそう告げるのは、『黒革の手帖』(テレビ朝日系)最終回となった第8話。「人生は一度きり」、元子はそのモットーを胸に、クラブ「ルダン」という銀座の高みへとのし上がった。

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 愛し合いながらも、立場の違いから共に生きれないことを互いに悟り、元子を援助してきた安島富夫(江口洋介)もまた衆議院議員秘書という立場から政界のトップへ駆けあがろうとしていた。そんな絶頂へと上りきった2人が、一気にどん底へと叩き落されるところで物語は幕を閉じる。劇中では鮮やかに描かれているが故に惑わされそうになるが、元子は横領罪、安島は斡旋収賄罪という立派な悪人。ラストに、2人はそれぞれ不敵な笑みを浮かべる。『黒革の手帖』(テレビ朝日系)では、様々な人物の心に潜む黒い感情が描かれていた。

 元子は、銀座のトップになるために、他人を蹴落とし、恨みを買ってきた。楢林クリニック院長の楢林謙治(奥田瑛二)、大手予備校「上星ゼミナール」の理事長である橋田常雄(高嶋政伸)、東林銀行世田谷北支店の次長の村井亨(滝藤賢一)、同じ銀行の派遣社員として勤務していた波子。元子は、違法な“借名口座”が記載された黒革の手帖と、持ち前の野心を武器に、他人の財産を飲み込み、大きくなっていく。人の恨みは復讐心へと変わる。楢林と共に地獄の底に落とされた中岡市子(高畑淳子)は、元子の隙を見て、黒革の手帖を盗み、警察へと全てを明るみにするのだ。

 元子と安島が最後に浮かべた笑みの意味だが、諦めの笑みにしてはどこかギラギラしたものを感じさせる。安島は、結婚が破綻。地位を失ったものの、これで元子とは一緒になることができる。元子の手帖がなくなったことに気づくシーンが描かれていないことも意味深だ。「尽くしたふりをして手の上で男の人を転がすの」、元子の元に建前の“お礼”を言いにきた中岡が言い放つセリフであるが、元子はまだルダンの権利書を手にしたまま。中岡をわざと泳がせることで、ルダンに加え、愛する安島までもを手に入れた。警察がルダンに押し寄せてきた時、それを確信した時に笑みだとすれば、元子は銀座のトップの“悪女”である。(渡辺彰浩)