種を絶やさないように、ツシマヤマネコの健康を注意深くチェックする

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 《ツシマヤマネコの保護に向けた啓発活動も、動物園の役割だ》

 ツシマヤマネコは、長崎・対馬で「とらやま」とも呼ばれます。

 10月8日を語呂合わせで「ツシマヤマネコの日」とし、飼育する各園が、イベントを開いています。

 福岡市動物園では、対馬市役所と連携して「ヤマネコ祭」を開いています。昨年はネコの着ぐるみを登場させ、保護や繁殖事業の取り組みに関するパネルを展示しました。

 動物園の売店では、袋にヤマネコをデザインした「ヤマネコラーメン」や、ネコの写真を載せたクリアファイルを置いています。市の動物園が繁殖に取り組むには、地域住民の理解が不可欠です。エサやりのときに、ネコの紹介をしたりして、ファンを増やすように努めています。

 《日本の動物園では、動物の生態を見せる工夫が進む》

 転機になったのは、北海道の旭山動物園が始めた行動展示でしょう。

 福岡市動物園でも、リニューアルを進めています。ペンギンが泳ぐ様子を水槽の下から見るなど、動物のダイナミックな動きを観察できるようになります。

 海外の動物園は広い。動物が生息する空間そのものを動物園にして、野生に近い環境で観察できる場所もある。

 それに対して日本の動物園は狭い。来園者から、自然に返す方が良いと言われることもあります。その気持ちも分かります。間近で動物を見ていて、動物たちはここにいて幸せなのかと、悩むこともあります。

 ですが、動物園に来て、実際の動物のにおいや動きを感じて、「地球には人間だけが生きているわけじゃない」ということを実感できます。人間だけが偉いわけじゃない。動物と人間の共存が動物園の大きなテーマです。

 だからこそ、動物が生き生きと動ける展示を、模索しています。

 ツシマヤマネコ舎には、キャットタワーを設けました。ヤマネコも高いところが好きなんです。1匹しか展示しておらず、もっと見せてほしいと言われますが、動物が受けるストレスを考え、あえて見せないことも理解してほしい。

 動物の輸入に関する条件は、厳しくなっています。今後、国内で見ることができる動物は、少なくなるでしょう。福岡市動物園もかつては、図鑑に載っている多くの動物を見ることができましたが、シロサイや、ホッキョクグマ、ゴリラがいなくなりました。

 今、地球では驚異的なスピードで、多くの生物が絶滅していると言われています。

 絶滅したニホンオオカミなど、一度種が失われてしまうと、もう取り戻せません。ツシマヤマネコも、「こんなネコが以前いたんだよ」と言われるのは悲しい。動物と人間の共存には大きな課題も存在しますが、種を絶やさないために、人が手伝えることもある。

 《民間企業との連携や住民の支援も、大きな力になる》

 よりよい動物園にしようと、民間の力やアイデアもお借りしています。

 今夏、「夜の動物園」では、福岡市内にあるソニーストアからカメラを借り、動物の映像を流しました。顔のアップや動物の色鮮やかさなど、飼育員だからこそ撮影できる動物の様子を、最新の映像技術を活用して伝えました。

 ゾウの「はな子」の飼育は三好不動産(福岡市)が支援してくれます。キリンは、飲料メーカーのキリンビバレッジがイベントに協賛してくれています。動物園運営の予算は限られていますから、地域で動物を支えていく仕組みが必要だと思います。身近な場所に動物園を残すため、地域と一緒に考えていきたい。

 ツシマヤマネコをはじめ、それぞれの動物にはファンがいます。動きや鳴き声、におい。動物園には、本やテレビでは分からないよさがある。

 ツシマヤマネコは、この動物園の看板でもあります。「かわいい」だけではなく、ネコが生きる環境や課題も知ってもらえる。そんな動物園を目指したい。

 (聞き手 九州総局高瀬真由子)