奈良市の印刷会社「実業印刷」が、奈良市東向北町にアンテナショップ「活版工房 丹」をオープンした。

 活版で印刷されたデザイン性の高いグッズがずらりと並び、地元の人々だけでなく観光客の間でも話題を呼んでいる。

 同社は約60年前に奈良市で創業。さまざまな印刷を請け負ってきたが、「発注されたものを印刷をするだけでなく、自社製品を開発して売ってみよう」と、「伝える」をコンセプトに今年7月に開店した。

 活版印刷は凸版印刷の一種で、活字で版を組んで刷る手法。紙に刷ると文字がへこむため、でこぼことした手触りが特徴だ。近年、その独特の風合いが「味わい深い」などとして、若い世代にも注目され始めている。

 現在、印刷の主流は平らな板を用いて転写する「オフセット印刷」。短時間での大量印刷が可能で、国内業界では約40年前に移行の波が訪れた。今では多くの商業印刷物や美術印刷に、この方式が用いられている。

 「実業印刷」も時代の流れに乗り、オフセット印刷を導入。一方、活版印刷機もあえて残し、両方の手法で事業を継続してきた。同社代表取締役の沢井啓祐さん(70)は「デザインや紙だけでなく、『差別化を図りたい』『他と違ったものを探しに来た』というニーズに応えたかった」と話す。

 店内に入ってまず目に飛び込むのは、かつて活版印刷で使われていた活字を埋め込んだテーブルだ。大小さまざまで字体も異なる無数の活字を、ただじっくりと眺めるだけでも楽しい。商品は、奈良のシカをモチーフにしたポストカードやメモ帳など、活版印刷で作られたさまざまなグッズ。手触りがよく、プレゼントなどでも喜ばれそうだ。

 既製品だけでなく、名刺やショップカード、便箋の名入れなどのオーダーにも対応。名刺は受注から完成まで1週間〜10日ほどを要するというが、沢井さんは「名刺交換をするときに、より印象づけることができるのではないでしょうか」と話した。

 水曜定休。営業時間は午前10時〜午後6時。問い合わせは同店(電)0742・93・7721。