デジタル時代のIT投資効果をどう見極めるか

写真拡大

本連載第69回『経営者は「攻めのIT投資」をどう捻出し、評価していくか』では、IT投資管理のあり方に見直しが迫られていると述べた。今回は、IT投資の効果の捉え方と具体的な目標設定の考え方について論じる。

IT投資の主戦場が変わる

 デジタライゼーションの潮流によるIT投資の目的や創出効果という質的な変化に加えて、投資対象となる領域ごとの投資額のシフトといった量的な面での変化も起こっている。従来の一般的な企業IT(エンタープライズIT)の領域に属する社内システム向けのITインフラ、情報共有システムなどの全社共通系およびコーポレート系のシステムは、製品のコモディティ化とクラウド・シフトが著しい領域となっており、投資額という点では減少傾向にある(図1)。

 一方、各業種の本業である業種特化系・事業系を含むビジネスITや、新規事業や新業態を創出するデジタルビジネスはまさにビジネスに直結する領域であり、AIやIoTの台頭とも相まって今後IT投資が拡大すると予想される。この領域に対するIT投資は、まさに攻めのIT投資といえる。

 このような分野のITについては、これまでIT部門が関与せず事業部門が独自に投資判断を行ってきたものが多く含まれる。また、予算や投資についても、IT部門が管理するIT予算やIT投資とは別に、各事業部門の事業予算や事業投資の一部、あるいは研究開発投資として扱われる傾向が強かった。こうした分野では、ビジネスとITは不可分であり、それを考慮した投資判断が必要となる。

十分とはいえない真の攻めのIT投資

 ここでITRが毎年実施しているIT投資動向調査の結果から、攻めのIT投資に対する企業の姿勢を確認しておこう。同調査では、まずIT支出を定常費用(既存システムの維持運用および小規模な改善)と新規投資(新規システム構築および大規模なリプレース)に分けてその配分を問うているが、新規投資の割合は31%にとどまっている。さらに新規投資の内訳を「ビジネス成長」「業務効率化」「業務継続」の3つに分類しているが、まさに攻めのIT投資といえる「ビジネス成長」の割合は32%にとどまり、全体のIT支出に占める比率は1割に満たない(図2)。

 もちろん定常費用の中にも、攻めのIT投資に該当する戦略的なシステムの維持運営にかかる費用も含まれているだろうし、業務効率化や業務継続が重要な競争力の源泉といえる投資領域も存在するだろう。

 しかし、ビジネス環境が大きく変化し、デジタル技術の台頭も著しい現在において、ビジネス成長に資する新規のIT投資がIT支出全体の1割に満たないという実態は、将来を見据えた国際競争力という点からも憂慮すべきことといえるのではないだろうか。

続きはこちら(ダイヤモンド・オンラインへの会員登録が必要な場合があります)