ラガルドIMF専務理事が7月下旬にIMF本部をワシントンから北京に移す可能性に言及、衝撃を与えたが、この発言を基に、濱本良一国際教養大教授が「中国は名目GDPでも2029年に米国を抜き、名実ともに世界一の経済大国になる」との試算を寄稿した。写真は上海。

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国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が7月下旬にIMF本部をワシントンから北京に移す可能性に言及、波紋を投げかけたが、この発言を基に、濱本良一国際教養大教授が「中国は名目GDPでも2029年に米国抜き、名実ともに世界一の経済大国になる」との論考を月刊誌『東亜』9月号(霞山会)に寄稿した。

このIMFトップによる衝撃的な発言は、米ワシントンのシンクタンク「グローバル発展センター」で行われた対談で飛び出したもの。「中国や他の新興国市場の成長が今後も続くのなら、それはIMF加盟各国の議決権にも反映されることになる。われわれが十年後にこうした会話をする際には、ワシントンでなく北京がIMF本部になっているかもしれない。IMFの規則では、本部は経済規模が最大のメンバー国に設置する仕組みになっている」と明言した。

濱本教授は論考の中で「ラガルド専務理事の頭の中には10年後の2027年前後に中国の名目GDP(国内総生産)が、米国を追い抜き、世界1位になっている可能性がある。IMFの最高責任者が迫り来る近未来の変化を明確に語り始めたことを意味しよう」と指摘した。

中国のGDPは2014年に、実態に近い購買力平価(PPP)で米国を追い抜き、世界一位になった。続く15、16年も中国は首位の座を維持している。

12年2月27日、世界銀行(本部=米ワシントン)と中国国家発展改革委員会は共同研究報告書『中国2030―近代的で調和のある生き生きした高所得社会の構築』を発表した。同報告書は、「最も重要な地球的メガトレンドは中国自身の台頭であり、今後の20年間、中国以外の他のいかなる国も世界経済に大きな影響力を与える準備はできていない。中国の経済力は、例えこの報告書が予測したような成長率の低下があったとしても、2030年までに世界最大の経済力を誇る国として米国を追い抜くだろう」と記した。

『中国2030』では、1995年〜2010年の16年間の中国のGDP平均成長率を9.9%、11〜15年の5年間は8.6%と算定。さらに16〜20年を7.0%、21〜25年を5.9%、26〜30年を5.0%になると試算した。

濱本教授は16年の中国の名目GDP総額である11兆2182億ドルをもとにして、17年以降の年間平均成長率が「6.5%」、「6.0%」、「5.5%」、「5.0%」の4つの場合を想定して、2030年前後まで中国の毎年の名目GDPを試算。中国政府の発表で16 年の成長率は6 .7 %であり、将来、徐々に低下して行く傾向を予想した。

一方米国については、16年まで過去10年間のGDP成長率の平均値「1.3%」を基準に試算。「非常に興味深いのは『中国2030』が想定した中国成長率の最も低い場合の年率5.5%としても、2029年に中国の名目GDPが米国のそれを上回る点である。仮に米国が年率2%の成長だったとして、中国が6.5%の成長を維持できれば、29年には米国を追い抜くことになる」とはじいている。

その上で同教授は「実際には為替レートの変動など重要な指標の変化も考慮しなければならないので、あくまでも試算に過ぎない」としながらも、「2030年前後が、歴史的な転換点になる可能性が非常に大きい」と結論付けている。(八牧浩行)