日馬富士(左)は阿武咲に土俵上で1回転させられた。無残な負け方だった (撮影・菊本和人)

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 大相撲秋場所5日目(14日、両国国技館、観衆=1万816)3横綱の休場で初日から自身初めて一人横綱となった日馬富士(33)は、横綱初挑戦の平幕阿武咲(おうのしょう、21)にはたき込まれて3連敗。平成15年名古屋場所の武蔵丸以来となる3日連続、屈辱の金星配給で2勝3敗となった。折しも、この日は横綱審議委員会の本場所総見。北村正任委員長(76)=毎日新聞社名誉顧問=も観戦したが、非難めいた発言はなく、日馬富士の奮起を促した。

 顔色を失って立ち尽くす。表情がかたまって凍りついた。土俵上に舞う、おびただしい座布団の数が異常な事態を示していた。日馬富士が3日連続で平幕力士に敗れて金星を配給。通算38個目。序盤5日目にして黒星が1つ先行だ。

 「ア〜ア。足がついていかなかった。体は動いているけど、結果につながらなくて。まぁ、勝った方が強いわけだから」

 西の支度部屋。横綱は不機嫌に黙り込むわけでもなく、自嘲気味に口を開いた。1場所15日制が定着した昭和24年以降、3日続けて金星を与えたのは9例目。平成15年名古屋場所での横綱武蔵丸以来、14年ぶりの屈辱となった。

 横綱初挑戦の阿武咲に手玉に取られた。横綱がまわしにこだわらず圧力をかけると、相手はいなしながら左へ回り込む。頭が下がったところを押さえつけられてはたかれると、右手を土俵につきながら前方宙返りのように大きな弧を描いて1回転。背中にべったりついた砂が哀れさを誘った。

 4横綱のうち白鵬、鶴竜、稀勢の里が昭和以降初めて初日から休場。日馬富士にとって、初めて経験する一人横綱の場所となった。常に優勝争いに絡むことは横綱の責務だが、序盤で2勝3敗。通常の場所なら非難の対象とされる数字だろう。折しも、この日は横綱審議委員会(横審)の本場所総見だった。横審・北村正任委員長は横綱の痛々しい3連敗を間近にしながらも「よろしくはないが、けしからんとは思わない。一人横綱じゃなかったら、休みかねないところ。彼は体が痛くても気力で取る相撲。それをふり起こして頑張ってほしい」と擁護した。

 横審は内規(第5条)によって「激励」「注意」「引退勧告」をなす。だが、これらは「処分」として履行されるものだ。内規には該当しない、異例の好意的激励の“発令”にも聞こえた。日馬富士が休場すれば、横綱土俵入りもなくなり、結びの一番から横綱が消える。同委員長がもらした「(横綱が)全部休んだら目も当てられない」とは本音だろう。八角理事長(元横綱北勝海)も「苦しい思いを続けるなかで、一つひとつ勝っていく姿をファンにみせてほしい」と願った。

 4横綱の休場となれば史上初だが、日馬富士は「続けるしかない。まだ10日間もある」と休場を否定する。綱の威厳より、その価値は皆勤へと移る。 (奥村展也)

★日馬富士・6日目の相手は

 西前頭3枚目で4勝1敗と好調の千代大龍。過去の幕内対戦成績は日馬富士の3勝2敗。直近の対戦は平成26年秋場所2日目で、日馬富士が押し出して新小結場所だった千代大龍を下した。

★まだVある!?

 今場所の優勝争いは、予測不能の大混戦となるかもしれない。序盤戦を終えて入幕3場所目の阿武咲が全勝で単独首位に立ち、1敗は大関豪栄道に琴奨菊ら平幕6人の計7人が続く。八角理事長(元横綱北勝海)は日馬富士が3敗目を喫したにもかかわらず「普通なら優勝は難しいが、今場所に限っては分からない。最後まで諦めないことだ」と述べた。