慶応大学の神保謙准教授

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 北朝鮮は核兵器の能力強化で対米抑止力を確保するという目標に邁進している。

 最近の弾道ミサイル・核実験で、北朝鮮は韓国や在日米軍向けの通常兵器主軸の戦力に加え、米領グアムやハワイを中心とする米国の戦略拠点や米本土を射程に収める弾道ミサイルや、巨大な破壊力を持つ水爆を抑止力の要と位置付けるようになった。

?13日までスイスで開催されていた民間機関主催の国際会議では、北朝鮮代表団も参加し非公式の議論が行われた。だが、北朝鮮の対米抑止力に対する自信が深まるにつれ、北朝鮮が対話を通じて安全を確保する意欲は確実に低下している。北朝鮮は米国の敵視政策を問題視し、米韓合同軍事演習の中止や経済制裁の解除を、事態打開の前提として譲らない。現時点では真剣に対話を模索している状況ではない。

 11日に採択された国連安全保障理事会決議は、北朝鮮が水爆実験や日本上空を通過する弾道ミサイル実験を行っても、限定的な代償しか与えられないという意味で、経済制裁の限界を表している。一方で、北朝鮮の核・ミサイル開発の進展が米国の軍事介入を誘発するリスクもある。米朝双方が相手の意図やレッドラインを誤算する事態は極めて深刻だ。

 米国は同盟国である日本、韓国とともに、北朝鮮がいかなる挑発をしても拡大抑止が揺らがない態勢を維持することが重要だ。米国の前方展開戦力の強化、ミサイル防衛の追加配備、北東アジアの戦略環境に適合した核態勢見直し、それぞれが拡大抑止の要となる。

 韓国では、米国の戦術核兵器の再配備がにわかに議論に上っている。米韓の抑止力を可視化し、米国と同盟国の安全保障のデカップリング(切り離し)を避け、朝鮮半島の均衡を作る上で重要な視点だ。日本でも韓国への戦術核再配備を前向きに議論することが必要ではないか。(聞き手 田中靖人)